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メイドさんのマモノ図鑑  作者: 吉良 鈴
にばんめの大陸

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104/107

#104 自認エルフ

夜の空を箒で滑るように進んでいたたぬまりは、遠くに灯りの集まりを見つけた。

最初は小さな光の点だったが、近づくにつれてそれが街の輪郭を形作っていることに気づく。

中央には、空を突くような巨大な木がそびえていた。

幹は太く、枝は広がり、葉は夜風に揺れている。

その木を囲むように、ガラス張りの高層ビルが立ち並び、ネオンが瞬いていた。


街の外周には高い外壁が巡らされていて、門が一箇所だけ開いていた。

たぬまりは箒をしまい、地上に降り立つ。

門の前には人々が行き交っている。

その姿を見て、思わず足を止めた。


ずんぐりむっくりで、たっぷりと髭を蓄えたおじさまたち。

物語に出てくるドワーフそのものの風貌。

そして、熊のような丸い耳に、たぬまりと同じようなふさふさの尻尾を持つ人間たち。

彼らは二足歩行で、服を着て、普通に会話している。


「……たぬき族?」


口に出したつもりはなかったが、近くにいた尻尾のふさふさした人物が振り返った。


「たぬきじゃなくて、我々はエルフなのじゃ」

「えっ……」


反応に困るたぬまり。

どう見てもエルフではない。

耳は丸く、尻尾はふさふさ、体型はまぁ、人間だが。

たぬまりの知っているエルフ像とは、だいぶ違う。


「そなたもエルフじゃろ?その尻尾、見事じゃ」

「いや、これは……」


たぬまりが言いかけると、別の人物が割って入った。


「旅の魔女を連れてきたぞー!」


その声に反応して、周囲がざわついた。

門をくぐった瞬間、たぬまりの視界は一変した。


目の前に広がっていたのは、まるで東京のような近代都市だった。

舗装された広い道路には、電光掲示板が並び、歩道には自動案内のホログラムが浮かんでいる。

ビル群は高く、ガラスと金属の光沢が夜の街を反射していた。

カフェやショップが並ぶ通りには、ドワーフがスマートデバイスを操作しながら歩いている。

空にはドローンのようなものが飛び交い、広告を投影していた。


その中で、街の中心にそびえる巨大な木だけが異質だった。

自然の象徴のように、静かに、堂々と立っている。

根元には広場があり、ベンチや噴水が設置されていて、エルフたちがくつろいでいた。


その瞬間、画面にアナウンスが表示された。


【新エリア《グランフォルテ》到達】

【ドワーフとエルフの共存都市グランフォルテ


「グランフォルテ……」


たぬまりは、街の名を口にしながら、案内されるままに歩き出した。

尻尾を揺らしたたぬき耳の青年が、たぬまりを酒場へと導いていく。

店の扉が開くと、木製のテーブルにジョッキが並び、笑い声が響いている。

ドワーフたちが席を詰め、たぬまりを真ん中に座らせた。


「同族じゃないか!」

「エルフだ!耳が尖ってる?まぁ、個性じゃろ」

「魔女帽子も似合ってるぞ!」


たぬまりは、何がどうしてこうなったのか分からないまま、ジョッキを手渡された。

中身は濃い琥珀色の液体。

香りはほろ苦く、どこかフルーティだが強い。


「乾杯!」


ジョッキがぶつかり合い、酒盛りが始まった。

あ゛~~~。ガツンと喉が焼けそうな味だ。

たぬまりは、次々と注がれる酒に応じながら、ドワーフたちの話を聞いた。

鉱山の話、鍛冶の話、昔の冒険譚。

どれもが豪快で、どこか温かい。


たぬき族(自称エルフ)たちは、たぬまりの尻尾を見ては歓声を上げ、撫でようと手を伸ばしてくる。

たぬまりは、笑いながらそれをかわしつつ、酒を飲み続けた。


気づけば、テーブルの上には空のジョッキが並び、たぬまりはぐったりと椅子にもたれていた。

誰かが「そろそろ宿に」と言い、誰かが「運ぶぞ」と言った。


そのまま、たぬまりはぽーんと宿に放り込まれた。

ふかふかのベッドに沈み、意識が遠のいていく。


朝。

窓から差し込む光で目を覚ましたたぬまりは、見慣れない天井を見上げた。

頭が少し重い。

けれど、どこか満たされた気分だった。


「……なんだったんだ、昨日」


たぬまりは、ベッドから起き上がり、窓の外を眺めた。

巨大な木が、朝の光を浴びて輝いていた。

街はすでに動き始めていて、ドワーフたちが通りを歩き、エルフ(自称)たちが尻尾を揺らしていた。


今日こそは観光できるだろうか。

たぬまりは、魔女帽子をかぶり直した。

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― 新着の感想 ―
人を駄目にする新大陸かな? なんて物を神(運営)は作ってしまったんだろうか…
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