表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メイドさんのマモノ図鑑  作者: 吉良 鈴
にばんめの大陸

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

102/107

#102 どうする?たぬまり

朝の光が窓辺に差し込む頃、たぬまりはふかふかのベッドの上で目を覚ました。

毛布の柔らかさに包まれたまま、しばらく動けずにいた。

昨日の歓迎は、あまりにも手厚く、あまりにも心地よかった。

お茶、お菓子、ふわふわの毛布、そして無限の撫でられ待ち。

犬族のモルテールは、あまりにも居心地が良すぎる。


「……このままじゃダメ人間になる」


たぬまりは、そう呟いてベッドから起き上がった。

今日はもう出る。絶対に出る。

荷物をまとめ、宿のロビーへ向かう。

だが、そこにはすでに数匹の犬族が待っていた。


「おはようございます、人間さん!」

「今日はあっちの通りも案内しますね!」

「こっちのお店においで!新しいパンが焼けたんです!」

「公園で追いかけっこしましょう!」

「昨日使ってた毛布、もらってもいいですか?」


たぬまりは、笑顔で応じながらも、内心では焦っていた。

このままでは、また一日が終わってしまう。

でも、無視することはできない。

みんなが純粋な目で見つめてくる。

その瞳に「撫でてくれるかな?」と書いてあるような気さえする。


まず最初に声をかけてきたのは、耳の垂れた茶色の犬族の少女だった。

彼女は手に小さな花束を持っていて、たぬまりに差し出した。


「昨日、広場で見かけたんです。人間さん、すごく優しそうだったから……これ、どうぞ!」


たぬまりは花束を受け取り、ありがとうと微笑んだ。

少女は尻尾をぶんぶんと振りながら、嬉しそうに走り去っていった。


次に現れたのは、白い毛並みの青年犬族。

彼はパン屋の前で待っていて、たぬまりを見つけると手招きした。


「人間さん!昨日の話、覚えてますか?今日は特別なパンが焼けたんです。ぜひ食べてみてください!」


店内に入ると、甘い香りが漂っていた。

焼きたてのパンを手渡され、たぬまりは一口かじる。

ふわふわで、ほんのり甘く、口の中に広がる優しい味。


「……美味しい」

「でしょ!人間さんに食べてもらえるなんて、夢みたいです!」


青年は目を輝かせていた。

たぬまりは、パンを食べながら店を後にした。


その後、公園で待っていたのは、耳がぴんと立った元気な犬族の少年。

彼はボールを持っていて、たぬまりに差し出した。


「追いかけっこしよう!人間さん、走るの速い?」

「……まあまあかな」


ボールを投げると、少年は全力で走って取りに行き、戻ってくると満面の笑みを浮かべていた。


「楽しい!人間さん、もっと投げて!」


たぬまりは、何度もボールを投げて遊んだ。

気づけば、周囲には他の犬族の子どもたちも集まっていて、みんなで走り回っていた。


そして、最後に現れたのは、年配の犬族の女性。

彼女は宿の前で待っていて、たぬまりにそっと声をかけた。


「昨日、あなたが使っていた毛布……とても良い香りがしてね。もしよかったら、譲っていただけませんか?」

「洗ってからでいいなら、どうぞ」


女性は深々と頭を下げ、感謝の言葉を繰り返した。


気づけば、太陽は傾き始めていた。

昼過ぎのつもりが、もう夕方。

空はオレンジに染まり、街の灯りがぽつぽつと灯り始めている。


「今日も出られなかった……」


犬族の少年が、たぬまりの袖を引いた。


「宿、昨日と同じ部屋でいい?もう準備してあるよ!」

「……うん、ありがとう」


たぬまりは、再び宿に戻り、同じ部屋の鍵を受け取った。

部屋は昨日と変わらず清潔で、毛布には新しい花の刺繍が加えられていた。


ベッドに腰を下ろし、窓の外を眺める。

広場では、犬族たちが楽しそうに話している。

誰かがたぬまりの名前を呼び、誰かが「明日はどこに行くの?」と尋ねている。


「……明日こそは」


そう呟いて、たぬまりは毛布にくるまった。

わんわんパラダイスは、危険な場所だ……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
理想が詰め込まれた桃源郷 推しが入ったら抜け出せない事間違いなし
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ