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鳥籠のなかの世界

 『鳥籠のなかの世界』


 私たちが暮らしているのは

 中空に吊るされた巨大な鳥籠のなかの世界


 私たちが享受する生も

 私たちが謳歌する自由も

 すべてかりそめのものにすぎない


 自らの心に囚われる私たちは

 自らが捕らわれていることを知らず


 何者かの稚気と慈悲により隔絶され

 庇護されていることを知らない――知ろうとしない


 高等動物であるという愚昧な矜持のゆえか

 それとも僅かばかりの脳漿に依存する生物の宿命的悲運のゆえか

 私たちは想像力を檻の外を越えて拡げることができない


 与えられた世界をすべてと信じ

 思い思いの正義と大義を掲げ

 鳥籠のなかの領土を奪い合う哀れな小鳥たち


 世界が盤石だなどと誰が言ったのだろう


 外界の厳しい風に晒されて揺れる鳥籠は

 さながら砂上の楼閣のように脆く危うい


 耳を澄ませば鳥籠の軋む音が聞こえてくる


 ひと風ごとに強度を奪われる頼りない世界のなかで

 私たちはまだ卑近な問題に心囚われている


 いつか鳥籠が壊れる日がやってくる

 絶望的な音を立てて私たちを隔てていた枠組みが瓦解し

 鳥籠は中空へと投げ出される


 世界を構成していたあらゆる要素が意味を喪失し

 無窮の闇へと墜ちていくその刹那

 重力から解放された魂はその心の裡に何を見るのだろう


 世界の広さを知った鳥たちは

 新たな世界の空を飛ぶことができるのだろうか


 その答えはまだ誰も知らない

 誰かが鳥籠を打ち砕く日まで




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