トンネルに降る雨・メトロ
『トンネルに降る雨』
やまない雨はないし
トンネルはいつかは抜ける
小利口な人間が
そんな風に知った口を利く
次に続く言葉はこうだ
だからまあ頑張れ
きっと上手くいくよ
大丈夫!
嗚呼やれやれだ
こんな言葉はもう聞き飽きた
こんな借り物の無責任な言葉で
人の心を動かそうとは
なんという呆れ果てた横着者だろう
本当にやまない雨はないのだろうか?
本当にトンネルはいつかは抜けるのだろうか?
そんなことに思いを馳せることのない
想像力の欠如したものの言葉を
私はけっして信じない
『メトロ』
人生は地下鉄のようなものだ
暗い場所を粛々と進む
そこには個人の意志などない
そこにあるのは誰かの意志だ
私たちではない誰か
巨大で
けれどとても静かな
静謐な意志が
棺にも似た車両を包んでいる
その電車がどこへ向かうのか
誰も知らないが
定期的に立ち止まる場所があり
そこでは
誰かが降り
誰かが乗り込む
まるで何かを補うかのように
闇の中で
魂の交換が行われる
発車のベルが暗い闇の中に響き渡る
私はまだ立ち上がらない
私は終点を見たいと願っている