キスの味ってどんな味
「なあなあなあ。俺さ、昨日恋愛小説読んでてさ、で、気になったことがあるんだよね。」
「なになに?」
俺は優斗。恋ない切ない高校生。
同類の幸希と一緒にたわいもない会話をしているだけで全然青春を感じることができているのだ。
「あのさ、恋愛小説ってさ、必ずと言っていいほどキスシーンでてくるじゃん。」
「まあまあまあ。確かにな。」
「でさ、キスシーンでさ必ず描かれる典型的な描写あるじゃん。」
「え…?なになに?」
「いやわかるでしょ。主人公の心情をうまく書こうと思ってる奴が書く、小説書きたての奴が1番真似したがるあれだよ。」
「あはーん。『彼女の唇はほんのり甘かった』ってやつな。でも言い過ぎじゃね?お前も小説書いててさ、そういう表現してない?」
「俺は書きたいからいいんだよ。このシーンを書くことによって擬似体験を行い、恋愛のできない僕の心の傷を癒すことができているのだから。」
「気持ち悪。」
2人で話していると2つ前の席に女子2人が座った。
『あのね、芽依ね、昨日ね、初めて彼氏とキスしたの。』
「え、えっ!えっ!キスだって!何味か聞いてみようよ。」
「おいちょ…優斗まてって。」
俺は興味が湧きまくって2人に話しかけていた。
「芽依さんと果南さんだよね。」
「え…。急にどうしたの?いつも幸希くんとしか喋ってないのに。」
「いや、なんかさ、キスの話してたじゃん。」
「は?だから。」
「そのさ、キスってどんな味するんだろうなぁって思ってさ。」
「きんも。」
「いやいや。ちょっと小説の参考にしたいなあって。」
あぶねえ。最もらしい言い訳できたあ。あぶねえ!
「あーそういうことね。まああんたの小説おもろいし、手助けになるならあれだけど。」
「あざーっす!」
「まあ一言で言うと味はしない。」
「えっ、そうなの?」
その時ずっと、口を閉じていた果南さんが口を開いた。
「味はするよ。あまーい味。どんな果物よりもあまーい味。」
「え…?芽依味しなかったよ。」
「それはね、芽依のことを彼が身体目的としか思ってないのよ。」
「そんなことないもん。芽依のこと好きって言ってくれたもん。」
「芽依。唇は嘘をつかない。」
芽依さんかわいそうだけど、これはいいネタだなあ。
「あっそ。私も好きじゃないし。私も彼のあそこちょっと大きそうだなって思ったからだし。」
「強がんなくてもいいんだよ。」
「もう芽依好きな人出来たから。」
「「「は?」」」
「でも実験したい。果南。『お前のこと嫌い』だとどんな味になるの?」
そんな味あんの?
「それはね、レモンの味がするんだよ。」
「あっそ。」
そういうと芽依の顔が近づいてきて、、、
んんmんっmんっっん!??!!?!?
ききききキスされた?!?!?
唇が離れると今度は幸希の方へ。
てかめっちゃ酸っぱかったな…。
ん…?
1人で考えていると幸希がポツリとつぶやいた。
「甘い…。」
どどどどどどどどういうつもりなんだよ!!
なんだか感情がわけわからなくなって幸希の胸ぐらを掴んでいた。
「お、お前今なんつった?」
「え、甘いって言った。」
「お前抜け駆けは許さないからなぁ。」
俺は泣きながら幸希の頭を平手で叩き続ける。
そんな時芽依が気になる発言をする。
「でも幸希くん甘い味しなかった。唐揚げの味がした。」
「唐揚げ…?」
「唐揚げの味だと、彼女がいるのでごめんなさいってことかな。」
「てんめえ…。」
俺はもう一度幸希の胸ぐらを掴む。
「お前、彼女いるなら言えよ!」
「言ったら怒るかなって…。」
「怒るよ!でもその時ならボコボコにするだけだったけど、今はもう死刑級だっ!」
「でもねまだ味したの。」
まーだ味したのかよ。
「ヨーグルトの味はどんなの。」
「顔がタイプじゃない。」
「きゅうり。」
「性格悪そう。」
「ミニトマト。」
「身体だけ魅力的な人。」
「白髪ネギ。」
「地獄に行きそう。」
「最後…。ロウソク。」
「お前が僕とえっちするだけの関係ならなってあげてもいいんだよ?」
それを聞いた芽依は鬼のような顔になり…。
「てめえぶっ殺す!」
「ちょちょとまって…。」
芽依は教室にあった椅子を持ち上げ、逃げた幸希を追いかけていった。
というかそんなにキスに味あるのかよ。
あとミニトマトはトマトでいいだろうし、白髪ネギとかネギでいいし、ロウソクなんて食ったことねえし。
いろいろぶつぶつ考えていると、果南と目が合った。
果南がこっちに近づいてくる。
そして果南の唇は僕の唇にくっついた。
さっき芽依にされたキスのレモンの後味を消し去るぐらいの甘い味が僕の唇に広がった。