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ソラ・ミーツ・ユイカ

「おはよう結華。この前のTV見たよ。カッコよかったね!」

「あ、マキ。おはよう……。見てくれたんだ。ありがとね」


 さて、碧とそんな約束をして、1晩開けた翌日。結華は大学の講義室で授業の準備をしつつ、同じ学科の友達と談笑している。

 因みにこの友達、先述した「バンド系の音楽サークルの友達」である。彼女から来てくれたのは丁度いい。隙を見てちょっと聞いてみるか。そんな事を彼女は考える。


「うん。ダンスのキレも迫力も、歌の上手さも流石だなって。唯華のグループってみんな身長高いよね。羨ましいよ」

「ま、そうだね。ダンスって背があった方が迫力出るから……そこはこの身長でよかったって思うところかな」

「172あるんだよね結華って。他の人たちも多分同じくらいかな? それだけあると大変なこともあると思うけど、いやーダンスかじってる身としてはそれでもやっぱ……」

「マキも165あるんだからそれなりだと思うけどね。ってかそれよりさ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いい?」


 結華が探している本人が聞いたら発狂しそうな会話が展開される。九井空は自分より身長が高い人間を呪うレベルで身長が低いことを気にしている。

 

 が、そんなのこの2人は知ったこっちゃないのである。

 悲しいことに、だ。

 

 まぁ、結華にとって今日この友人に聞きたいことは別にあるので、一旦この話は脇に置いておいて、話題を切り替える。


「マキってダンス以外にさ、バンド組むために音楽サークル入ってたよね?」

「うん。まーね。下手くそだけどベースやってるよ。それがどうしたの?」

「いや、音楽サークルに入ってる人ってことで探してる人がいてさ。九井 空って人なんだけど……いる?」

「んー……。あ、あぁソラくんか! 1つ年下の可愛いキーボードやってる男子だね。知ってるよ」


 お、これは当たりか。思ったより素早く特定出来て何よりだ。

 もう少し時間がかかると思っていただけに、これは嬉しい誤算だ。結華は一先ず安堵する。


「でも……、ソラくんに結華ちゃんがなんの用なの? 知り合いとか?」

「あ、いや。私じゃなくて知り合いが、ね。大学が一緒って聞いてたみたいでさ。どうも頼み事があるみたいでコンタクトとってくれって言われてんのよ」


 隣に座る友人はふーん、そうなんだ。なんて少し興味ありげに、意外そうに呟く。


「そんなにソラくんって交友関係って広かったんだ。そんな風には全然。いやでも、キーボードもめちゃ上手いしそのツテがあるとも考えられなくは……」

「……どんな奴なの? 今の聞く限りすごい偏屈な奴とか?」


 マキが呟いた台詞に少し興味をくすぐられたのか、少々食い気味に結華は身を乗り出す。

 マキは「いや、そういう訳じゃ」と訂正し、話を続ける。


「可愛らしくて良い子だよ。まぁ結構変わってる所はあると思うけど。それに仲良くしてるバンドメンバーとか、周りが癖が強いからさ。それで――――」

「あぁなるほど、そういう事か。何となくわかったわ」


 なるほど。偏屈、までではないにしても結構な変わり者、と。まぁアオの親戚だし、変な感性を持ってるくらいなら想定内だ。

 そんな事を考えながら結華はまだ会ったことのない九井空について考えを巡らせる。


 そんな中、講義室の後ろのドアが開かれる。

 2年生くらい、だろうか。結華が今受けようとしている授業は元々社会学部の2年次の授業だ(結華は活動の都合上受けたくても受けられなかったので今年受講している)。なので、2年生がこうして教室に入ってくること自体は当たり前ではある。


 1人は身長の高いイケメンだ。色白に青色の瞳。ハーフだろうか。もう1人は……、小さくて可愛い。本当に大学生かと疑いたくなる程だ。結華よりだいぶ小さい。


「いやぁ間に合いましたな。人間必死になれば何とかなるもんで」

「変なところに必死にならないでよ、もう。どんだけ電話したと思ってんのさ。結局家まで迎えに行くことになったし」

「すまねぇ。次から気をつけますわ。起こしてくれてありがとなソラ」

「心配したんだからね。ただの寝坊だったから良かったけどさ」


 ちっちゃい男子の方はジト目でイケメンの方を見やる。

 可愛いな。ちょっと撫でたくなるわ。なんて結華は柄にもないことを考えた……ところで、ふと思い至る。


 ちょっと待て。今聞き間違いじゃなければ、イケメンの方が今ソラって――――。


「あれ……? ソラくんじゃん!?」

「ん……? マキ先輩? どうしてここに?」


 そう思った時、横でマキが声を上げた。

 ソラ本人は腑抜けた顔で首を傾けている、が、そんな事は割とどうでもいい。

 

 なんて、偶然だろうか。

 探し人自らがやってくるなんて。

 

 なるべく表情には出さないように努めた……が、結華は内心、とてもびっくりしていた。

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