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理由

作者: 浅川 心

心理カウンセラーが書く、心理描写をメインにしたストーリーです。

男の子の心理は、大きくなってもあまり変わらないものなのです。

久我美紀ちゃんはいつもミニスカートだ。そして、パンツをいつも見せてるのに、

男子が来ると”見ないでよっ”と、隠す。

見たくもないし、見てもないのに、何でいつも怒ってるのかわからない。



トシが自転車に変速ギアを付けてもらったというので、今日はセミ公園に自転車で集まることになった。

坂本とヤマと俺とトシの4人で、セミ公園のいぼいぼのコンクリートの山にまたチャレンジするんだと思う。



俺が公園に着いたら、入り口には坂本しかいなかった。そのまま坂本の横を通り抜けて、

いぼいぼの山に自転車を漕いでいったら、うしろから坂本も着いてきた。

二人でしばらく、いぼいぼの山の横に自転車を置いて、棒のぼりをしていたら、

久我美紀ちゃんがひとりで歩いて来た。



坂本が、棒の上の足をかけるところまで行って、久我美紀ちゃんに向かって、何かを投げつけた。

でも久我美紀ちゃんは気づかないで歩いていってしまった。

”それ、なに?”と聞くと、坂本が笑って俺にもそれを投げてきた。

何かの粒みたいのだけど、なんだかわかんなかった。”やめろよ”と、俺は言って、棒を降りた。



降りたところで、トシが来て、すぐにヤマも来た。

4人で自転車に乗り、いぼいぼの山に登り始めたけれど、やっぱり難しい。

俺らは作戦を立てて、4人いっせいのせで、登ることにした。誰かが滑り落ちてきたら、

下のやつが自転車の前輪で支える作戦だ。


俺はトシと二人で組んだけれど、トシは登り始めると、横のヤマの方へよろけて進行方向が変わってしまった。

ヤマは力がないので、身体のでかいトシを支えられず、二人とも絡まるようにして、

いぼいぼの途中で引っかかったりしながら、落ちていった。

俺は、何回目かで3つ目の石のところまで前輪はあがったけれど、5

つつめを超えなければ頂上にはいけないので、やっぱり無理だった。

自転車が滑り落ちたので、最後は飛び降りた。



何回も何回も、ただ登る。よしっとか、すげーとか、いいながら、ひたすら。



いぼいぼの山登りをすると、お母さんには叱られる。

転び方を間違うと自転車が傷だらけになるし、洋服もスライディングしたみたいになるから。

でも、どうしても面白いのでやめられない。特に2週間くらい前に同じ組の村上が

頂上まで登りきったので、クラスの男子の中では今最大ブームなのだ。



何回か、同じ事を繰り返していたら、急にトシが帰ると言い出した。

みんな”え?”って顔をしたけれど、何も言わずに、トシは新しい自転車でダッシュして行ってしまった。

仕方がないので、3人でチャレンジし続けた。



作戦なんかいつの間にかなくなった。そして、数十分かけて、俺が3つ目の石を登りきったら、

どんどんあとの二人もエスカレートしてきた。坂本は俺の自転車に、自分の自転車をぶつけて、

邪魔をしてくるようになった。こいつはそういうところが、汚い。

でも、どうしても今日は4つ目の石まで行きたくて、俺は無視していた。



”ズザッ!ガシャーー!!・・・ドンッ!!!”




すごい音がして、左後ろにいた坂本が倒れた。いつもしないような、すごい変な音がした。

見ると、坂本が自転車の下にいた。そして、動かなかった。

ヤマと俺は目を合わせて、”やばい?”と確認しあった。

”坂本?”・・・・・声を出したのは、ヤマだった。

坂本は返事をしなかった。それから、そのとき自転車と坂本の身体は超合金みたいに、一体化していた。

腕がある位置が、よくわからないけど、変だったのだけ、覚えてる。




”マジ?死んじゃったんじゃん?やべー、どーしよー???”と、ヤマが半泣きになった。

でも、その瞬間、坂本が、”ヒュー…”と変な声を出した。泣いてるみたいな顔になった。

”死んでねーよ、誰か大人呼んでこよーぜっ”興奮して言ったのは、俺だったと思うけれど、

あまりよく覚えてない。



少しすると、大人が何人かやってきて、救急車を呼んだ。お父さんくらいのスーツの大人が、

”どうしたんだ?”と聞いたけど、”わかんない”しかいえなかった。

”お前ら、一緒にいたんだろうが?”と言われたけど、俺にだって転んだことしかわかんない、

説明なんか出来ない。



救急車で坂本が運ばれていって、俺らは自転車で家に帰った。

リビングでは、お母さんが半泣きで超怒ってた。何であのことを、もう知ってるのか、わかんなかった。



”なんで何回言っても、同じことやるのよ?ほらみなさいよ。あんた馬鹿なの?どうして?もう、意味わかんない。なんで何回もやるのか、いいなさいよ。坂本君は、腕と足の骨折だってよ?よかったほうよ。あれがもし打ち所が悪かったら、大変なことになってたのよ?どうするの、あんたそしたら?”


怒られてるのか、説明されてるのか、よくわかんない。それに、そんなに色々言われたって、

なんていっていいかわかんないから、黙ってるしかなかった。



”なんで黙ってるのよ?なにがあったのよ?”



”知らない”



”知らないわけないでしょう?久我美紀ちゃんが、あんたトシ君と遊んでたって言ってたけど、トシ君はいなかったじゃない?どこ行っちゃったの?あの子がなんかやったの?”




・・・・久我美紀ちゃんが何を見てたのか知らないけれど、どうしてそういう話になるのか、

余計わからなくなって、俺は結局”知らない””見てなかった”以外はほとんど言えなかった。




***




何であんな何十年も前の、小学生の時のことを急に夢で見たのかわからない。朝起きて、自分でも驚いた。

坂本はあのあと半年くらい、ギプスをしていた。ヤマとは今でもたまに飲みに行くけれど、

あの話はあまり出てこない。出さないのかも知れない。

トシは中学で転校していった。今はどうしてるのかまったく知らないが、あのころトシの家は

なんだか家庭の事情が複雑で素行も荒れていて、うちの母親はあまりトシと遊ぶのを、好意的に取ってなかった。




朝ごはんのとき、妻が機嫌が悪かった。

怒りながらしゃべる口調が、夢で見たあの日の母とあまりに似ていて、思わず笑ってしまった。

それをみた妻は、俺が小馬鹿にしていると思ったらしい。


”どうしてこんな時に、笑えるのよ?意味わかんない。どうして空気読めないの?馬鹿じゃないの?それって会社でもそうなの?会社で真剣な話してるときに、そうやってへらへらしてたら、大変じゃないの?・・・”




……今日の夢が正夢とまでは行かないけれど、かなりそれに近いのは間違いないようだ。そ

れから、今まであまり考えたことなかったけど、男は、潜在的に自分の母親に似てる人を娶るっていうの、

本当かもしれない。







☆終☆




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