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愛 二乗  作者: 花ゆき
高校生編
7/37

愛二乗=綺麗

 


 中学の同窓会に参加することになった。

 今のこいつを見て泣くやつは何人いるのだろうか。


 私達が入った瞬間、絶叫が聞こえた。

 相変わらずかっこいいからね、こいつは!


 足を踏んづけたくなったが堪える。



「果穂子~!久しぶり!」


 入った瞬間話かけてきたのは、別の高校に行った友人皐月だ。


「久しぶり。しっかし、あいつは今も人気なのねぇ」


 女性陣に囲まれている雪哉を睨みつける。

 果穂子が見ているのに気づき、手を笑顔で振る雪哉。

 果穂子も振り返す。

 ざわっとざわめきが起こる。

 彼の豹変にびっくりしたのだろう。


「果穂子!?大君おおきみくんどうしたの??

 あんなにクールだったのに」


 今度は私が女性陣に囲まれる。


「高校の手芸部に入って変わったのよ…」


 そう答えると口々に話す。


「えぇ~、ショック」

「でもやっぱりかっこいいよね!親しみ易くなったし」


 つまり人気が上がったらしい。

 心配して損した。


「でもいいなぁ~。愛されてるって感じで」

「はは。恥ずかしくていいことなんてないよ」

「ふ~ん」


 女性陣は野生動物の目で果穂子を見据えていた。





 何故、何故私は男に囲まれているんですか。

 教えてください。


 カラオケに行くことになったんだけど、いつの間にかこんなことに。

 雪哉の隣は…、女ばっかりだし!!


「なあなあ、何歌うの?」

「今流行りの歌ってよ」


 ああ、しつこい!


「可愛くなったよね。この後俺と―

「果穂子!!デュエットしよう!!」

「いいけど…」


 雪哉に誘われた。

 何か話してたような気が…。

 まあいっか!


 二人で見事に演歌を歌い終える。


「し、渋い趣味だな」

「えっと、渋くてかっこいいわね!」


 なぜか引かれた。


 ふんっ、どうせ私はいつもカラオケで演歌歌うわよ。

 それよりもあいつが私の十八番を覚えてくれてたのが嬉しい。


 にこっと雪哉に笑いかける果穂子。

 雪哉は驚きのあまり後ろの壁に頭をぶつけてしまった。

 頭を押さえながらも笑い返す雪哉。


 空気が変わる。


「果穂子!」


 友人の皐月が外に出ろとジェスチャーする。

 頷き、外へ。



「果穂子っ、あんたやばいよ。早く帰ったほうがいい!!」


 皐月が必死に言う。


「どうして?」


 頭を叩かれる。


「…この鈍ちんが!!

 あんたの周りの男に狙われてるのよ!」

「大丈夫だよ。二瀬ふたせ兄に護身術教えてもらってるし」


 見当はずれの回答に口を大きく開く皐月。


「こりゃ大君くんが変わっても仕方ないわ。

 可愛くなったのは友達として嬉しいんだけどね~」


 まるで子どもにするように頭を撫でられる。


「ちょっと、何すんのよー」

「いいからいいから。いざと言う時には私に任せなさい」

「?うん」





「なあなあ、メルアド教えてよ」


 無言の否定。

「いいじゃん、少しくらい」


 馴れ馴れしく肩を引き寄せられる。


 果穂子は自分の血管が切れる音を聞いた。

 考えるより先に肩にある手を振り払い、

 こぶしを強く握り締めていたところ、

 ガッシャーーンという音がして、何事かと見る。


「今まで果穂子の良さにも気付かなかったクセに。

 果穂子がおしゃれしただけで寄るんだね。

 見る目がない。

 てゆーか、果穂子は俺のものだ。

 触るな、クズ」


 氷の沢山入ったグラスが転がっていた。

 零れる水と怒り。

 雪哉の目は限りなく冷えていた。





 それからカラオケはお開きに。

 帰る間際に話かけられた。

 立っていたのは元同じクラスの女の子達だった。


「あんたら本当のカップルっぽくなったね」

「そうそう、中学生の時はお互い遠慮してた感じだったのにね」

「お似合いになったんじゃない?」


 頬が思わず緩む。


「あんた綺麗になったよ!」


 女として最高の褒め言葉までもらう。


「へへっ」



 喜んでいると後ろからもたれかかってくる雪哉。


「果穂子がおしゃれしたのって俺の為なんだよね~?」


 雪哉と目がばっちりと会う。


「ど、どうして知ってるのよ!!」

「弟君に聞いたんだ~」


 今とてつもなく弟を東京湾に沈めたい。


「不安だったんだ。果穂子が急に綺麗になっていくから。

 新しい男が出来たんじゃないかって。

 聞きに行ったら笑って否定してくれたよ。


『あの不器用な姉には出来ませんよ。

 髪を切ったのも、染めたのも一人の人の為なのに』


 すっごく嬉しかったんだ。一方通行だと思ってたから。

 全力で愛したいと思った。

 そうしたらかっこつけてるのが馬鹿らしくなった。

 表現したいと思った。

 手芸部に入った。

 敵の駆除もかけて、沢山の好きが言えるようになった。

 こんなに俺を変えたのは君だけだよ」


 敵というのが分からなかったが、心が大きく動いた。

 彼の手をとり、握る。


「こんなに私を変えたのもあんただけよ。

 おそろいね?」




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