愛二乗=クリスマスは君と
「メリークリスマス!」
笑顔で私の家の前に立つ彼。
普段だったら嬉しいかもしれない。
でも、いくらなんでもこれはない!!
「今の日時と時間を述べよ」
「12/24 23:06だね!」
こうも無邪気に言われると腹が立つ。
「非常識だとは思わなかったの?」
「クリスマスは二人で迎えたかったんだけど、
やっぱり迷惑だったよね」
犬の耳が垂れる瞬間ってこんな感じだろうか。
「クリスマスにデートするでしょ?」
すでにパジャマの私。夜風がきつい。
「クリスマスに最初に会うのは俺がいーの!」
カウンターを思いっきりくらった。
「ばーか」
彼のほっぺに手を伸ばし、軽くつねる。
彼のほっぺたは冷え切っていた。
彼はきょとんとしたが、笑いかける果穂子を見て
安心したように笑った。
「メリークリスマス」
冷えていた首もとがあったかくなった。
マフラーだ。しかも手編み。
「部活で作ったんだ」
誇らしげに笑う。
「普通女が作るものよね?」
「それって偏見だよ。
誰だって大切な人に送りたい気持ちは一緒だから」
先を歩いていた彼が振り返る。
「今は君があたたかそうにしてくれるのが、 幸せ」
彼は街灯の下で笑っていた。
「もうっ!
馬鹿ばかバカ、ばか!!」
飛びついて怒鳴る。
「あんたっていつもそう!
いいとこどりで、私の心をすぐ捕まえちゃう。
悔しい…」
おろおろしてた彼は私の背に手を回す。
「君を好きになってよかった。
こんなに好きになれるなんて思わなかったから。
君の心が俺にあるなら、俺の心は君が持ってるね」
彼は自分の胸を指した後、私の胸を指した。
体は既に冷え切っていたけれど、
どうしてか寒くなかった。