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愛 二乗  作者: 花ゆき
中学生編
35/37

愛二乗=愛二乗

 


 授業が終わって、私達は手を取り合ったまま外に駆け出した。

 世界がこんなに色づいて見えるなんて初めてだよ。


 つないだ手に力を入れれば振り返る彼。

 こんな何でもないことが重なって、幸せだなって思う。




 通学路の途中で土手に出た。


 制服が朱に染まる。

 西を見ると、太陽が空を赤に染めていた。

 雲は上側が朱色。真ん中が白色。下が赤紫。

 カラスが気ままに飛んでいる。

 時の流れをゆっくりと感じた。


 私はその景色を目に焼き付ける。

 私達が始まった日の空だから。

 大君くんを見ると、彼もそう思ったのか空をまじまじと見ていた。

 夕焼けに染まる大君くんは何だか別人だ。

 私は吸い込まれそうな気持ちになる。


「綺麗な夕焼けだね」


 そう言って振り返ったから、慌てて顔を前に向けた。


「そうだよね」


 さっきまで、夕焼けじゃなくて大君くんを見ていたので恥ずかしい。

 大君くんは頭をかいた。


「でも、夕焼けに包まれた平田さんも綺麗だよね」


 急に何を言うんだ。この人は。

 けれど私は逆に笑えてきた。

 >

「私も同じこと考えて見てたよ。大君くんをもっと好きになった!」


 大君くんに背を向けて先を行く。

 夕焼けが私の頬の色を隠してくれるだろう。

 が、肩を掴まれ振り向かされる。


「俺も、平田さんを前より好きになった。……好きだ」


 気が付いたら彼の温もりに包まれていた。


「俺の可愛い唯一の人」


 体が沸騰しそうだ。耳まで赤い自信がある。

 彼は私の顔を見て笑った。


「好き」


 私は大君くんの言葉に酔わされて、息を止められそう。

 次第に彼の顔が近づいて、ピントが合わなくなった頃、唇が重なった。


 泣きたくなる。

 幸せすぎるから。


 とうとう泣き出した私の涙を、大君くんが拭う。



「イヤだった?」

「知ってるくせに」


 私の涙の理由、感のいい大君くんなら知ってるはず。



「イヤじゃないよ。大君くんだから」



 大君くんは、立ち止まって顔を覆う。

 隠しきれていない耳は薄ピンク色。

 大君くんは頬を赤くしたまま、手を出す。


「手をつなごう」

「うん」



 この物語は続く。

 あなたと私がいる限り。

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