愛二乗=正々堂々
少し時は遡る。
果穂子は夏休み、何の予定もなかった。
その上告白も失敗。大嫌いなんて言っちゃった。
だから何する気も起こらない。
家でごろごろしていた。
そんな時、親が部屋に入ってきた。
「学校の子が来てるよ」
「皐月?」
「違うけど、とにかく早く行きなさい」
家の前には大君くんの彼女が立っていた。
何か必死な顔をしている。
「平田先輩は大君先輩のこと好きですか?」
付き合っている彼女に聞かれるなんて複雑だけど、答えは決まっていた。
「うん、好き」
「私も大君先輩が好きです」
そこで彼女は表情を暗くした。
「けれど先輩は私のことを好きじゃありません」
今までの光景を思い出す。
そんなことない、大君くんは彼女を大切にしていた。
「人として好かれてるのは分かるんです。
けれど私が欲しいのはそんなものじゃない、恋してほしいんです」
誰もが大君くんにそれを願ってきた。
叶うことのない願いだった。
なぜなら大君くんは告白された人と付き合うから。
そしてすぐに別れてしまう。
扱いが平等だから。
一番になりたくて告白したのに、みんなと一緒じゃ意味がない。
好きになってもらいたい。
「私は先輩と付き合えて嬉しかった。
嬉しくて、このままでいたい。
そんな居心地のいい場所を自分で消してしまおうと思います。
白紙にした状態で、彼女だから好きになるんじゃなくて、私だから好きになってほしい」
彼女の熱い決意を聞かされる私。
彼女は私に何を求めているのだろう。
「だから正々堂々と勝負しましょう。
期限は無期限。大君先輩が二人のどちらかを選ぶまで。
どちらも選ばないという結末もあると思います。
ですが選ばれなかった方は大君先輩から手を引く。どうですか?」
なんて強い子なんだろう。
大君 雪哉と一番長く付き合っているだけある。
私はこの子をいいライバルだと思った。
勝ちたい。大君くんに好きになってもらいたい。
「ええ、分かったわ」
これは私にとって大きなチャンスだ。
アタックも、告白も全部仕切りなおしする!!




