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愛 二乗  作者: 花ゆき
中学生編
21/37

愛二乗=作戦実行!

 


 映画を見に行くことになった。

 なんでも平田さんが見たい映画があるそうだ。

 それがまさか、ボクシングだったなんて……!!



 いや、内容はおもしろかった。

 でもさ、女の子と見に来る内容じゃないよね。

 ラブコメ映画とかあったのに!

 俺、実は見たかったんだけど!!





「果穂子ー、どうしてあの映画選んだの?」


 ファミレスで昼食をとっていると柿本さんが尋ねた。

 同じことを思っていた俺は、箸を止めて平田さんを見た。


「え?あれいいじやん。男と男の友情!拳で語り合う!」

「あー、そう」


 柿本さんは興味をなくしたように食べだす。

 俺もそうした。


 平田さんってあーゆーの好きなんだ。

 俺は姉の影響が強いからか、ドラマでも恋愛モノ好きだしなぁ。




 食べ終わった頃、啓一が「あ!」と大きい声を出した。


「どうしたんだ」


 そう言ってる最中もジーンズのポケットをガサガサと探っている。


「忘れ物した。俺さっきの映画館戻る」

「まったく啓一は。待っててやるから行ってこい」

「いや、先に行ってくれ。後で追いつくから」

「しょうがないわね。私が付いて行ってあげるわよ。ほら、さっさと行くわよ」


 どうやら別れて行動することになったようだ。


 で、啓一。一体何を忘れたんだか。

 財布と携帯持ってたよな?

 わざとらしいぞ。


 だけど柿本さんと二人っきりになるために、別れるのを頼まれていたからな。

 さて、次何処だろ。


 すると彼女は俺を見て行った。



「あの太鼓のゲーム一緒にしょ?」



 斜め前にあるゲームセンターが気になるようだ。

 彼女が言った太鼓のゲームは店の入り口にあった。

 そして並んでいるのは小学生ほどの小さな子ども達。


「俺はいいけど、結構並んでいるみたいだよ」

「いつものことだからOK、OK」


 平田さんは子ども達の後ろに並んだ。

 それがなんだか可笑しくて、笑えた。


 後ろに並んでまで順番をちゃんと守っている所とか、大人しく順番を待っているところとか、小学生と変わらない。


「大君くんも早く早くー!」


 俺を遠くで呼ぶ。




 並ぶと小学生達と平田さんが話していた。


「姉ちゃん久しぶり~!ランクどこまでいった?」

「まだ太鼓駆け出しだよー」

「俺太鼓初級者!!」

「ぇえ!?すっごーい!!」


 きゃっきゃっとはしゃいでいる。

 子ども達とまざっても違和感のない、無邪気な平田さん。


「この兄ちゃん、姉ちゃんの彼氏?」

「ち、違うって!大君くんに失礼でしょ」



 うーん、なんだろ。この微妙な気持ちは。





 ようやく順番が回ってきた。

 えーと、どうやってやるんだっけ?


「兄ちゃん、そこ“カッ”!横叩いて!」

「両方で叩いて!」

「連打連打!!」


 親切にも教えてくれました。


「もう追いつかれてるし!」


 ぎょっとして俺のスコアを見る平田さん。

 いつの間にか追いついてるみたい。


「打倒平田さんかな」


 にゃりと笑う。

 するとムキになるのが平田さんだ。


「負けないんだからね!!」




 そして。


「兄ちゃんかっこいいな!」

「ありがとう」

「なんかコツあるのー?」


 その横でしょぼーんとしている平田さん。

 結果?あははは。分かるでしょ。


「大君くん、次はこれで勝負!」


 指したのは狙撃のゲーム。

 立ち直り早いね。


「いいよ。負けたほうがジュースおごるなんてどう?」

「りんごジュースだからね」

「平田さんが勝てたら、ね」

「絶対勝つ!」




 結果として俺はコーラを飲んだ。

 横で平田さんがブツクサ言いながらりんごジュースを飲んでいる。


「あのトラップは予想外だったわ」

「平田さん見事にひっかかってたね」

「ライフが1減ったし」

「最後までいけなかったし?」


 やばい、平田さんをからかうのたのしいかも。


「その言葉宣戦布告と受け取った!次はあれで勝負!!」

「いいの?俺あれは得意だよ」

「私だって得意なんだから。兄と鍛えたあの技、今こそ見せる時!!」



 そんな感じで一日は過ぎていく。






 夕方、すこしひやりとした空気が気持ちいい。

 ゲーセンで白熱しすぎたためだろう。


「あんなにはしゃいだのひさしぶりかもなー」

「私達まだ中学生だよ?はしゃがなきゃ」

「……そうだね。しっかし今日は俺の全勝だったね」

「次こそはっ、次こそは!」

「勝てるかな?」


 ニャリと笑う俺。

 悔しそうにする平田さん。

 馬鹿みたいなやり取りが楽しかった。





 俺はまだ中学生で、微妙な時期。

 大人ぶりたくて、子どもにもなりきれない。

 それでも君がまだ子どもでいていいと言ってくれた。

 俺はまだ、子どもだ。






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