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愛 二乗  作者: 花ゆき
高校生編
2/37

愛 二乗=やっぱり愛

 


 私の彼氏は変人だ。

 中学生の時は普通だったのに―。


 ちらりと目をやった先は私の人形をうるうると抱きしめている彼。

 私は何か間違えたのか。


「ああ、俺の丹精込めて作ったKAHOKOが!」

「名前付いてるの?」

「そうさ、僕の愛する果穂子の分身だからね!」

 私がぼこぼこにしたKAHOKOを愛しげに抱きしめる。


 くっ、人形に嫉妬した私は変人!?


「でもやっぱり果穂子がいいな。

 家で使おう」


 嬉しいが素直に喜べない。

 家で何に使うのか。


「や、やだなぁ。

 新婚さんごっこして抱き枕にするだけだよ」


 黙り込む私に説明した。

 その使用法はどうかと思う。


「ふーん。じゃあ私はあんたの人形と運動でもしょうかしら」

「だめー!!そんな破廉恥な事はお母さんが許しません!」


 いや、人形背負ってランニングするだけなんですが。

 ああ、あれで一本背負いとかいいかも。


 私の光悦とした顔に不安を感じたらしい彼。


「酷いよ!俺という人がありながら!!」


 彼の顔は涙と鼻水の協奏曲となっていた。

 可哀想になったので撤回する。


「じゃあ止めるわよ」


 にぱっと笑う彼。

 犬だ、大型犬がここにいる。


「大好きだよ、果穂子」


 そういえば彼は変人になって愛情表現が増えたような…。

 あの頃の彼は動作にいちいち華があって、しかも決まってた。

 好きだと言ってくれるのも、イベントのみ。

 すっごく嬉しくて、さびしかった。

 もっと言って欲しかったな。


「果穂子は俺の事好き?」


 うるっとした瞳に不安の色が見える。

 力を抜いて笑った。


「悔しいけど大好きよ」


 一気に彼の腕の中に引きこまれる。


「大好きなんかじゃ伝え切れない。

 ―愛してる」


 心の奥を捕まれた。

 離せない 瞳。

 交わる 瞳。


 まいっちゃう。私はこの目をされると弱い。

 そんなこと言ったことないけど。


 彼の瞳が消える。

 私の瞳も消えた。

 影が交わる。



 *


「あの人形やっぱり使うわ」


 私の言葉にこの世の終わりのような顔をする彼。

 私はくすっと笑って付け足す。


「抱き枕に使うのよ」

「俺もそうするよ」


 すでに授業は始まり、私達の遅刻がきまった。




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