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愛 二乗  作者: 花ゆき
中学生編
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19/37

愛二乗=傍に

 


 体育祭が終わり、またいつもの生活に戻る。


「先生も人使い荒いよね」

「あはは」


 大君くんと二人で教室に残っている。

 私達のいつもは委員長の仕事で居残りすることだった。

 前とは違って少しでも傍にいられるだけで嬉しい。

 それだけで満足していたのに――。





 ある日一年に呼び出される。


「体育祭だからしょうがないと思って雪哉先輩を貸していたのに。

 どうしてまだ独り占めしてるんですか?

 お願いです、取らないで下さい」


 その娘は体育祭で見た女の子だった。


「そんな、私独り占めなんてしてない」

「じゃあどうして毎日一緒に帰れないんですか?

 少しでも傍にいたいのに!」



 “少しでも傍に”



 それは果穂子が先ほど願ったことだった。

 恋するものなら誰しも思うこと。

 だから果穂子は彼女の気持ちが分かった。


「そうよね。明日から一緒に帰れると思うわ」

「ありがとうございます!」





「大君くん、今日の仕事もう終わったから」

「え?大分あったのに?」

「昨日家でやってきたの」

「じゃあプリント職員室に持って行くよ」

「ううん。一人で出来るから」


 避けるようにして職員室に向かった果穂子を、雪哉は不思議そうに見ていた。





 だんだんと顔色が悪くなっていく果穂子。

 心配した皐月は尋ねた。


「どうしたの?最近変よ」

「何でもないから」

「心配なのよ。果穂子は頑張りすぎちゃうから」


 果穂子はぴくっと反応する。

 目が皐月を見た。

 そして事情を話しだす。



「そんなの、果穂子ばかり苦しいだけじゃない。

 果穂子の幸せはどこにあるの?」


「でも、あの子の“好きだから傍にいたい”って気持ちは分かるから」

「あの子は果穂子じゃないのよ。傍にいたいのは果穂子もでしょ?」


 苦しそうに果穂子は頷く。

 いたわるように皐月は果穂子の肩をたたいた。




 そして大君も果穂子の異変に気付いていた。

 その原因を突き止めれば、これまでの関係が崩れることも。

 大君はそれを覚悟の上で話しだした。


「俺は自分の仕事をやり遂げることに誇りを持ってる。

 でも最近相方が仕事を全部終わらせてしまうんだ。

 本来委員長の仕事は二人分配布されてるんだけど、彼女一人で頑張ってるから顔色も悪くなってきている。

 君は何か言ったのかな?」


 言葉は優しかった。

 けれど突き放す空気が大君を纏(まと)う。

 そしてもう終わりだと感じていた。


 だが、予想外の言葉が聞こえた。


「ごめんなさいっ。もうしないから別れるなんて言わないで!」


 彼女は必死だった。

 自分がしたことを認め、謝るほど必死。

 その反応に大君の怒りが冷めていく。


「あ、うん。分かってくれたならいいんだ」

「よかったぁ」


 ほっとしたように笑う彼女を何故かその時可愛いと思った。





 次の日、大君の彼女は謝りに行った。

 それからいつも通りの生活へと戻る。

 けれど少し違うことがある。


「じゃあまた明日」


 大君と帰らなくなったのだ。

 理由は靴箱で健気に待つ彼女。

 今まで疲れたようにカノジョのもとに向かう大君とは違って、顔が明るい。



 私、最悪だ。



 疲れた大君くんを見て、私は違うって優越感に浸ってたんだ。

 最悪。これから二度と大君くんは私を見ないだろう。


 彼女の元に向かう大君の背をずっと見つめ続ける果穂子。

 妙に泣きたくなった。




『傍にいたいのは果穂子もでしょ?』


 うん、だから苦しいよ。




 家に帰ると長兄が彼女を連れてきていた。


「いいなぁ……」


 そのヒトコトを聞き逃さない長兄。


「はははは!羨ましいだろ。

 でも彼女は俺がアタックして付き合うようになったんだ。


 まず行動してみなきゃな」


 ぽんぽんと撫でられた頭。

 気持ちが軽くなる。


 大君くんには彼女がいるけれど、頑張ってみよう。

 それによって被害が出たとしても、私だって傍にいたい。

 欲しいものがある。


 大君くんの彼女になりたい!





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