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愛 二乗  作者: 花ゆき
中学生編
17/37

愛二乗と男の子

 


 体育祭が一ヶ月後に迫ってきました。

 委員長の大君くんと私はHRでみんなの種目を決めることになりました。


「体育祭の種目の希望を取りたいと思います」


 大君くんが黒板に書き出していく。


 字綺麗だな。

 あ、私障害物競争がいい。なんかおもしろそう。


 それから短距離、長距離の希望者を数えていく。

 短距離が人気だったため、あぶれた人が出てきた。

 次は私の希望する障害物競走!




 ええっ!?障害物競争に女子5人も希望してるよ。女子は2人しか駄目なのに。

 今更私が手を上げることなんて到底出来ない。


 一応委員長だしね。

 仕方なく私は諦めた。

 そして他の種目を決めていく。





 女子の大半は大君に注目していた。

 大君が未だ種目に手を上げていないからだ。

 大君と同じ種目になるために大君の手が上がるのを待つ。


「二人三脚」


 大君も手を上げている。それを見た女子は突然手を上げる。


 1・2・3・4……13!?

 無理だ。枠は4人しかない。


 私はどうする?と大君くんを見た。






「うーん、じゃあ平田さん一緒にやろうか」



 はい??



「平田さんは手上げてないじゃない!」


 不満のある子が口をはさんだ。

 他の女の子もうんうんと力強く頷いている。

 私も変だと思う。


「じゃあ言うけど。

 君は俺がこの種目を選ばなかったとしても、これを選んだ?」


 ぐっと悔しそうに押し黙る。

 それを見て上がっていた手も下がっていく。



 大君くんって厳しいな。





 私が大君くんとのペアは決まっているらしく、残ったメンバーでジャンケンをしていた。

 皐月はというと、第一希望の短距離走で落ちたため男女混合リレーに決まった。


「運動苦手なのにリレーか?」

「うるさい!これなら100Mだから短距離と変わらないの!」


 遠山 啓一くんと皐月が楽しそうに話してる。

 二人とも男女混合リレーのようだ。

 へぇー、仲良かったんだ。





 そして練習……なんだけど上手く出来るはずがないって!!

 そもそも女子全員に睨まれてるから体操服はないし、靴も隠されてるし。


 仕方ないから制服と体育館シューズで練習してたら次の問題にぶち当たる。



「平田さーん、そんなに離れると走れないよ~」


 いや、分かって下さい。

 とっっても恥ずかしいんだって!

 大君くんに密着するんだよ!?


 恥ずかしい恥ずかしい!!

 しかも手がっ!




 腰に回ってるんですけど!?



「ほら平田さんも手置いて」


 私の手を掴んで肩へ。

 身長の違いからか腕がまっすぐ伸びてしまう。


 隣を見ると一年前よりも大きくなった姿がある。

 男の子、なんだよね。

 今更なんだけど。



「じゃあ俺が平田さんの肩に手を置くから、平田さんは俺の腰に手置いて」


 次は私が!?

 セクハラになるんじゃないの?


 戸惑っている間に私の手まで場所を変えてくれている。

 男の子の腰触るなんて恥ずかしいぃぃいいいい!!

 どうして大君くんは平然と出来たのかな!?



 ん?つまり、緊張しない=意識してない=女の子として見られてない!?



 うわ。自分で考えたことだけど、すっごくショック受けた。

 思わず恨めしそうに大君くんを見る。


「ん?じゃあまず一歩進んでみようか」


 爽やかな微笑みで蹴散らされました!

 恨めしいっ。


「まず右からね」


 大君くんの声に合わせて足を出していく。


「右、左、右……」




 あ、あの、ね。


 大君くんの声が頭の上から降ってくるんですよ。

 で、なんだかいつもより声が甘いような気がしたりしなかったり。


 さらに緊張してしまった私はかちこちになり、遅れてしまう。




 それがいけなかった。


 上の空で走っていた私はついに足を絡ませて上体が大きく崩れる。

 バランスを持ち直すなんて無理だ。

 片手は大君くんの肩にあるし、足も大君くんとつないでる。

 顔面からグラウンドへの衝突を覚悟して、ぎゅっと目をつむる。





 しかしいつまでも衝撃はこなかった。


「平田さん?大丈夫?」


 相変わらず頭上からの声。

 けれど違ったのは背中にある温もりとお腹に回された両手。


「だだだ、大丈夫、だけど」


 一気に顔が赤くなる。


「ならよかった。ここまで進めたんだし、今日はこれくらいにしようか」


 スタートラインから30M進んでいた。

 あまり進んでないけど、初日なんだし、しょうがないよね。

 ほとんど私がついていけなかっただけだし。




 私が意識しすぎなんだよね。

 逆に平然と離れる手を見て、がくっとくる。




 ほんと意識されてない。


 まぁ確かに女の子らしくないし。

 色気ないし。

 胸ないし。寸胴だし。


 私はダイエットと牛乳を飲むことを決意した。





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