愛二乗>恋の種
一年の3学期。保健委員になった。
大君くんは係りの仕事。
だからもう、大君くんと話す機会はない。
みんなの王子様だから。
あんなに話せてたのがおかしいぐらい。
「はぁ……」
「果穂子最近元気なーい」
「そんなことないよ」
「さっきため息ついてた」
友人は誤魔化せないらしい。
「そっか。どうしたんだろうね~。最近元気でなくて」
「まじで!?自覚なし??」
中学になって出来た友達皐月が大げさに驚いている。
「何の自覚よ」
「そりゃあ、こ・いよ」
きょとん、とした果穂子の向かいに座る皐月。
「あんたいつも大君くんのこと見てるでしょ」
「見てない見てない」
「じゃあ一昨日はどうして大君くんが体調悪いの分かったのかな~?」
「ほ、保健委員だから!!」
ずびしっとチョップが入る。
「そんだけ見てるからでしょ!馬鹿ねー」
でも違うんだよ。
最近話してないから寂しいだけ。
好き、とかじゃないから。
考え事をしながら帰る帰り道。
両手にはスーパーの袋。
今日は私が料理当番なのよね。
「あ、平田さんだ」
後ろから大君くんの声がした。
久しぶりの感覚で、嬉しさに振り返ろうとした時
「やだ~、所帯臭い」
そんな声が私を覚ました。
カノジョいたんだ。
そうだよね、大君くんだもん。
かっこよくて、みんなの人気者。
「俺は尊敬するよ。
両親が遅くまで共働きだから手伝ってるんだって」
どうして大君くんはこんなことを言ったのだろう?
彼女が隣にいるのに。
それとも私がそんなに哀れだったのかな。
優しすぎるよ大君くん。
胸がじぃんとするんです。
助けて下さい。




