愛二乗≠誰にでも?
一年の3学期。係りの仕事になった。
そのせいかな?なんだか平田さんと距離が遠くなった気がする。
それと彼女が出来ました。
「大君くんって優しいよね」
「そうかな?」
「うん、絶対そう!」
クリスマス前、同じクラスの子に告白された。
初めて告白されて嬉しかった俺はOKした。
その彼女と帰り道を歩いていた。
「ほんと、誰にでも優しいよね……」
俺はその時、彼女が暗い顔をしたのに気がつかなかった。
むしろ姉の教育方針に感謝していた。
誰にでも優しい=褒められていると思ったから。
イイ男は優しくあるモノ!!
小さい頃からそう言われてきた。
でもそれは彼女がいる時には適用されないらしい。
高校生になった今ならよく分かる。
好きな人の視線を独り占めにして、
好きな人の優しさは自分だけでいい。
好きな人――果穂子は俺だけ想っていればいいと思う。
好きだからこそ生まれる独占欲が俺には分からなかった。
だって俺は初めて告白されたこと、初めて付き合っていることに浮かれていたから。
つまり、彼女に恋愛感情はなかった。
「あ、平田さんだ」
前方にスーパーの袋を両脇にかかえた平田さんがいた。
小さい背に大きな袋。
彼女がいなかったら持つのを手伝ったのに。
彼女という存在が重く感じた。
そんな時
「やだ~、所帯臭い」
ケラケラと笑う彼女に頭がかっとなった。
「俺は尊敬するよ。
両親が遅くまで共働きだから手伝ってるんだって」
言ってから失敗したと思った。
カノジョがいる場合、そうだよねって同意しなければならなかったのだ。
案の定彼女は気分を害した顔をしていた。
それから帰り道は会話がなく、次の日別れた。




