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45話 最終決戦(3)

「オカン!!」


 俺が倒れた後、オカンは倒れた。糸が切れるように地面に落ちるオカンを、オヤジが受け止めた。俺と麗も続いて駆け寄る。


 右手にはどこから現れたのか剣を持っている。赤銅色の柄には、アメシストが光る美しい剣。

 床には青銅色の壊れたブレスレットが、役目を終えたように転がっている。


「雅也さん、燈子さんはどうなったの?」

「分からない。神の気配もないし、魔王の気配もない。どうなっているんだ?燈子さん」


 オヤジは動揺している自分を抑えきれず、オカンをぎゅっと抱きしめている。まるでそれしかできないように。

 俺はオカンの手を取る。脈はある。生きてはいる。でも、どうすれば。


「咲夜くん!回復魔法を燈子さんに。何も無いよりましだってウルティモが!」

 麗が俺の両頬を両手で挟む。

「燈子さんは死んでない。私たちは、今やるべき事をやるのよ!」


 お礼を言い、回復魔法を展開しようとしたその時、オカンの目が見開いた!と同時に、オカンのその目がオヤジを捉えるのを見た。危険を察した俺は、慌てて麗を抱き寄せ、麗の両耳を防ぎ、両親に背を向けた!


「咲夜君!どうしたの⁉︎ 燈子さんの目が開かなかった?ねぇ、咲夜くん。教えて」

 腕の中でかわいく暴れる麗を、宥めながら、背後に感じる気配を遮断する。


 ごめん、麗。ちょっと待ってて。この2人、くっ付くと長いんだよ。日本人なのに、生粋の日本人のはずなのに、なぜか外国人並みに長いんだよ。まだ、麗には見せたくないんだよ!


 不意に肩に手を置かれ、殺気を感じて振り返る。鬼の様な形相をしたオカンが、不気味な笑みを浮かべてる。


「良くも騙してくれたわね。説教程度で済むと思わない事ね。咲夜」

 

 青く染まる俺を無視し、オカンは麗に声をかける。腕の中から、癒しが消える。


「燈子さん‼︎ 良かったです。心配したんです。突然倒れちゃうし、もうダメかと思って、私はどうしたら良いか必死で」

 大泣きする麗の頭を優しく撫でながら、オカンはお礼を言ってる。オヤジが立ち上がり、俺の肩に手を置く。俺はオヤジにハンカチを渡す。

 

(口紅拭って。オヤジ…………)


「良かったです。神様が助けて下さったんですね!ありがとうございます!」

「はぁ?神なんかに助けを求めるわけないじゃない?」

 麗の言葉を受けて、苦虫を噛み潰したように憎々しげにオカンは答えた。


「え?じゃあ、オカンはどうやって蘇ったの?」

 俺の質問にオカンは、振り向き、邪悪な顔で答えた。そして、前をむく。


「来るわよ!」


 オカンのまるで言ってみたかった的な叫びと共に、目の前に亀裂が走る。亀裂からは蠢く触手が伸び、出口を広げようともがく。


 あの形体には覚えがある。あれは、

「魔王か!」

 俺は、ヴィアラッテアを抜き、構える。オヤジも続く。


「び――――――――――む!!」

 響く呑気な声と共に、光線が走り、出口でもがく魔王の触手を焼き付くす。


「ってなに!あれ⁉︎麗!『ビーム』ってなに⁉︎何してんの⁉︎」

「『ビーム』はビーム?咲夜くんは変な事気にするね?それより出てくる前に、やっつけちゃおうよ!」


「ダメよ!麗ちゃん‼︎」

 オカンが叫ぶ!


「そうだよ、麗!根絶させないと!」

 俺も叫ぶ‼︎


「ラスボスよ!焦ったいのは分かるけど、出るまで待ってあげなきゃ、ラスボス感がないじゃない‼︎ここは我慢よ!」

(そう言う問題?)


「あ!そうですね!ラスボスの登場シーンって長いですもんね。そっかぁ……じゃあ我慢します」

(納得すんの?)


 オカンと麗は俺達の前に立ち、魔王に向き合う。


「そうだ!燈子さん、私ね、やりたい魔法がいっぱいあるんですけど、なんか色々影響?が出るって言われたんですよ」

 

 少しずつ、だが確実に増える触手が亀裂を広げ、その暗闇の様な身体が徐々に見えて来る。


「あぁ、そっかぁ。この世界は現実だもんね。言われてみれば、この地域に影響出ちゃう魔法ばっかりよね。地震とか起こしたかったんだけど」


 魔王と言う名にふさわしい醜悪な身体は、闇の様に黒く、一切の光を通すことはない。背筋が凍るほどの邪悪な気配を漂わせ、この世界に顕現する様は、世界に絶望の文字を刻む。


「なんかあれですよね?前に見た時にも思ったんですけど、魔王ってあれに似てますよね?色は違うけど」


「それって私が思ってるのと一緒かしら?でも麗ちゃんが年代的に知ってるのかしら?」


「いっせーの!で言いましょうよ!」

「良いわよ」

「いっせーの」

「「ステンレスのたわし」」

 わーいと手を合わせ笑い合う2人。


「良く知ってるわね、麗ちゃん。年代的に知らないと思ってた」

「病院の掃除のおばさんが言ってたんです。やっぱりこれが一番良く汚れが落ちるって」


「そうよ。昔から残ってる物を侮っちゃいけないわ。残り続けると言う事は良いって事だもの」

「語録ですね!」

「そうよ~、燈子語録」

 

 一生懸命、裂けめから這い出そうとしている魔王が気の毒になってくる様な会話に、俺は頭が痛くなる。


「オヤジ……。俺、ついて行けない」

「二人が元気そうでなによりじゃないか」

「そ・だね」

「…………咲夜、考えたら負けだよ」


 遠い目をしたオヤジの顔を見る。何年後かの自分が想像できて、少し笑った。


「さぁて!全部出てきたわね」

 オカンが嬉しそうに笑う。確かにたわし………じゃなく、魔王が出てきた。


 俺とオヤジは二人に並ぶ。


「ヴィアラッテアに見せてもらってたのより、小さい気がするけど、どう思う?麗」

「うーん、確かに二回りくらい小さいかな?」

「魔力を奪ったら、縮んだのよ」

「「「…………………………」」」


 祈るではなく、奪って奇跡を起こす。さすがオカン。


「さて、ではラスボス戦よ!気合い入れてくわ!」

 叫んだオカンの手に、透明な球体が現れる。掲げるオカン。球体は風船の様に膨らみ、部屋全体に広がる。


「はい!転移‼︎」

 オカンの声が響く。

 そして俺達は…………。


「空⁉︎」


 先ほどまで城内にいた俺達と魔王は、雲の下に、球体に包まれ漂っている。水平な地面は透明だ。足下に広がるのは、さっきまで自分達がいたヴェリタ王国。


「は?なにこれ⁉︎どうなってんの?何の魔法⁉︎オカン、何したの!?」


「うるっさいわね、理屈でしか生きれない男は邪魔よ!これでも持ってなさい」

 と言いつつ、水晶玉を渡された。持ったと同時にごそっと魔力の抜ける感じがする。


「オカン!これって」

「この球体を維持してる水晶玉よ。あんたに渡しておくわ。魔力が切れたら、この球体が割れるから頑張って維持してね」


「オカン、理屈が分からない――‼︎」

 動揺する俺を追いて、オカンは麗と一緒に魔王に剣を向ける。


「行くわよ!麗ちゃん!思う存分やりたい放題よ」

「はーい!どっちが強いか競争ですよ」

「良いわね!負けないわよ‼︎」


 意気投合して、剣を片手に颯爽と駆け出す二人。それを呆然と見送る俺の肩を、オヤジが優しく抱いてくれた。

毎朝7時に投稿します。

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