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43話 最終決戦(1)

 台本をもらった俺達は1週間、台詞回しや殺陣の練習をした。


 そして、戦いに戻る。


 氷の魔法を駆使しオヤジではなく――魔王(仮)の放つ氷の魔法を相殺する。

 麗は俺を魔法で補助している設定だ。実際はできないので今、俺の体に付与されている様々な補助魔法は、玉座の間の外にいるオヤジの部下が頑張ってかけている。


 次は剣を何度か打ち合わせながら、地面に炎の柱を建てて魔王(仮)を襲わせる。が、その作戦は失敗して炎の柱を避けた魔王(仮)に左腕を切り落とされる。だったな。これもオカンのため、我慢だ!俺!!


 想像より高い悲鳴が起こって目を見張る。オカンの悲鳴だ。俺の腕はオカンの目の前に落ちた。そこは計算通りだ。オカンは捕縛されたままだ。逃れようと体を必死に捩っている。涙で顔はぼろぼろだ。全ては計算通り……そうなんだけど、この心の痛みは、騙していると言う罪悪感はどこに持って行けば良いのか!


 俺に迫るオヤジを見る。こちらを見る表情はオカンには見えない。だからなのだろう。辛そうな表情だ。勝利の神は冷徹らしい。勝利の為に感情を捨てさせる。


「アダル様!」

 駆け寄ろうとした麗は、オヤジの魔法が床に炸裂し、動けなくなる。麗の表情も真に迫っている。

 そうだよね。俺が切られたのは本当だし、オカンの涙も本当だ。だけど一時の感情に流されてはいけない。だから!


 次は俺の台詞だ!


「手しか切り落とせないのか。思ったより弱いな。魔王」

 そして立ち上がりながら、腕に回復魔法をかける。オヤジの言う通りだ。この世界は素晴らしい。切られた腕も元通りになる。


 次はオヤジの台詞だ。

「順番に切り落として、婚約者の前に並べてあげよう。そうすれば彼女も君に諦めがつくだろう」


「セヴェーロ!言うこと聞くから、私を好きにして良いから、アダル様を!咲夜を助けて!お願いだから‼︎」

 

 ああ、手を切られる事よりも、オカンの言葉が一番胸に刺さり、痛い。


 剣を打ち合わせながらオヤジに呟く。

「オヤジ、俺、これ以上できる自信がない」

「僕もだよ。でも燈子さんが死ぬ方が辛いから、だから一緒に頑張ろう」


 オカンが神に助けを求めるのが早いのか、俺の心が折れるのが早いのか。


 ――勝てる自信がない!


「神様!助けてください!神様‼︎」

 台本外の麗の台詞に、俺とオヤジは剣を打ち合わせながら、お互いに頷き合う。そうか!その手もあったのか!


「神なんて助けてくれる訳ないわ!祈ったって無駄よ!セヴェーロ!私を好きにすれば良いって言ってんでしょ!早く咲夜から離れなさいよ‼︎」

 オカンの怒号が飛ぶ。

 あれ?この時点でまだそれを言うの⁉︎計算外だ‼︎

 

「オヤジ?これダメじゃない?」

 剣を合わせて、お互いに睨み合ったフリをしながら話す。


「この作戦が成功する確率が下がった。思った以上に燈子さんが頑固だ!」

「じゃあ、どうすんの⁉︎俺はもう無駄に体を切られんの嫌だからね‼︎」


「1回……死んだフリする?」

「死んだフリ?オカンは医療系魔法が完璧だろう?バレるぞ⁉︎」


「その辺は僕が魔法で誤魔化してあげるよ。そもそも燈子さんは今、魔法を封印されてるしね」


「分かった。じゃあ、どうする?」

「このまま刺すね!」


 オヤジの呑気な台詞に俺は間抜けな声を上げる。

「へ?」


 返事をする間もなく、俺の胸に深々と剣が刺さった。でも……痛くない。まったく痛くないし外傷もないけど、剣が刺さった所から、血が溢れてく。


 幻影魔法かよ!オヤジ!これができるなら、初めからしてよ。


「抜くから倒れてね」


 口の端を持ち上げて笑うオヤジを見て、やっとオヤジの本当の気持ちが分かった気がした。オヤジは俺に――アダルベルトに嫉妬をしていたんだ!

 エヴァンジェリーナが、オカンが、アダルベルトの婚約者だったから!だから平気で痛めつけられたんだな!


 思ったより嫉妬深い親の一面に気付き、八つ当たりだ‼︎ふざけんな‼︎ とは思いつつ、親孝行な俺は頑張って全身の力を抜いて、受け身を取らない様に倒れた。



◇◇◇◇◇◇◇◇




 咲夜の体に深々と剣が刺さる。場所は体の中心。助かる確率は……。


 剣がゆっくり抜かれる。スローモーションの様に倒れる体。受身すら取ってないじゃない!

 

 力なく床に倒れる。一度床に打ち付けられた体が、少し浮いて、再び床に落ちる。また、失うの?また、私のせいで死んでしまうの?また、私が、殺してしまう。


(それは――――嫌だ‼︎)


 燃えるように熱くなる体に驚く。体の内の奥深くに何かを感じる。これは……剣。私の剣‼︎分かっている様に手を掲げる。手に剣が顕現する。そう、私には力がある‼︎

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