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36話 監禁ルート(1)

 目を開けたら、そこは知らない場所だった。知らないベッド、知らない部屋、あげく寝巻きになってるし?

 はいはい、確かに拐われましたよ!そうですね‼︎


 お父様の事は心配だけど、城には優秀な回復術士がいる。大丈夫だと信じよう。ポジティブに考えないと思考が鈍り、行動に移せなくなる。いつだって前向きに進む!それが前世の頃からの私の生き様だ!


 柔らかなベッドから出て、部屋を見る。

 ムカつく、好みの部屋だ。

 全体的に濃いめの青を基調としたカーペットやカーテン。濃い焦茶の木材を使用した家具。青は人を冷静にさせる。木材の家具は、心を落ち着かせる。私が前世から好む物だ。


 だがこの部屋に窓はない。片開き扉が一つあるだけ。つまり逃げ道はそこだけ。念のためにドアノブに手を掛ける。開かない。鍵を外から掛けるタイプか……。

 

 まさかの監禁ルート。私が⁉︎そこはアダルベルト王太子の役目でしょ‼︎と、突っ込んでも、答えてくれる咲夜はいない。

 ため息をつきながらソファに座る。沈み込む様なソファに全身を投げ出し、魔法を展開しようとするができない。

 やっぱりね、と独りごちる。

 腕にはルビーが輝く青銅色のブレスレット。これで魔法は封じられた。このデザインに覚えがある。ゲームでアダルベルト王太子の魔力を封じた物。まさか私が見ることになるとは……。


 扉がノックされたので起き上がる。寝巻きであろうと関係ない。私は堂々としていれば良い!


「おはようございます。エヴァンジェリーナ様」

 入ってきたのはメイド服のラウラ。随分と丁寧なお辞儀をする。


「メイド服が良くお似合いね?でも本当に似合うのは、囚人服ではないかしら?」

「お元気そうで何よりでございます。我が主がお持ちです。お着替えを致しましょう」


「寝起きで頭が重いわ。体も怠い。もう少し寝るわ」

「十分に回復しておられるはずです。我が主の回復魔法は、素晴らしいですから」


 主人とやらに随分陶酔している様だわ。目がイッてる。どうやら選択肢はないらしい。


「さぁ、お着替えを」

 ラウラの言葉に、私はため息で答えた。




 ◇◇◇




 青の様な緑の様な不思議な色のドレスだ。体に張り付く様に作られたドレス。サイズはオーダーメイドで作られた様にちょうど良い。どこで私のサイズを知ったのか……。想像すると気持ち悪くて吐きそうになる。


 胸の部分は大きく開いていて、私の大きな胸を更に強調する。脚にも大胆なスリットが入っていて私の美脚を顕にする。随分と男の視線を集めるドレスだ。つまり色っぽい。色っぽすぎる!


 ムカツくのはこのデザインを、私が嫌いじゃない事だ。今世の私は抜群にスタイルが良い。それは自分で見ても、惚れ惚れするくらいだ。

 だったら見せつけなきゃダメでしょう⁉︎ そう思うからいつも私は大胆なドレスを着ていた。でも流石にここまでのドレスを着ると父が顔を歪める。父の気持ちも分かる。手塩にかけた一人娘が男を誘う様なドレスを着るのだ。それは私が親でも嫌だろうと思うから、わたし的には我慢していた。でも本当はここまで大胆でも良いと思っていた。


 だから鏡に写る自分を見てついついニヤけてしまう。この大胆なドレスを着こなせるとは!異世界転生、悪役令嬢大歓迎だ!私はやはり美しい‼︎


 鏡に写る私の胸元には血の様に赤い、ピジョン・ブラッドのルビー。

 そう言えば、クローゼットの中のドレスは、デザインは違えど、色は全て同じだった。赤と、青銅色。

 

 その理由は、この城の主人に対面した際に分かった。



◇◇◇




 主人に対面しろ、と言うからには、私が出向くのだろうと思っていた。ついでに建物の構造を探ろうと思っていたら、主人の方が私の部屋に来た。どうやらこの部屋から出す気はないらしい。


 主人とやらを観察する。


 私のドレスと同じ髪色。ネックレスと同じ血の様な赤い瞳。息を呑む程に美しい男だ。

 長い髪を横に束ね前に落としている。その衣装は黒い騎士服だ。炎のように赤いマントを翻し、その男は美しく笑う。

 酷薄さを語る赤い瞳。すっと伸びた鼻の下には、薄い柔らかそうな唇。少し濡れた唇に長い指が添えられ、なんとも言えない感覚に囚われる。


「アダルベルト王太子より、僕の顔の方が好みですか?とても凝視されている」

 右手を胸に当て、もう片方の手で私の左頬を触る。

「お求めでしたら、口付けでも、もちろんその先も」

 そう言って笑みを浮かべる男の目は、笑っていない!


「不敬ですわよ?わたくしの身も心もアダルベルト王太子様のもの。彼以外に捧げるつもりはありません」

 睨みつけながら話す。怯えていると思われてはいけない。下がってはいけない。私は負けない!

「しかし、貴方がわたくしをお求めになるのは勝手。そして純潔を守るために自害するのもわたくしの勝手」


「あの様な男に貴女が純潔を捧げる必要はないですよ。僕に負けた軟弱な男です。敗者は勝者に獲物を捧げなければいけない。貴女は差し出された獲物です」


「わたくしを攫って置いて、素晴らしい言い訳をおっしゃるのね?」

「そう……そうまでしても、貴女が欲しかったから」


 私の頬に当てていた男の手が、髪を撫で始めた。手は髪から首に移り、顎へと到着する。


 私は目を逸らさず睨みつける。

 負けるな!私‼︎ ここで目を逸らしたり、反応したら負けだ!男の告げる情報に惑わされるな!咲夜は生きてる!麗も生きてる!と思い込め!ここが勝負所だ‼︎

 

「存外にしぶとい。魔法を封じられていても、魅了の魔法にかからないとは意志がお強い」

 男が微笑みながら、手を離す。

 魅了の魔法⁉︎危ない!通りで変な妄想ばかりすると思った‼︎


「わたくしの心はアダル様の物ですから」

「その惚気は聞きたくないね」

 やっと観念したのか、男は私をソファへと誘った。当たり前の様に横に座る男に苛立つが、そのままに座る事にした。逃げたら負けだ。


 ラウラが紅茶を運んできて、一礼して去る。待って、二人にしないで。残りなさいよ!本当に役に立たない女ね‼︎


「 改めて名乗ろう。セヴェーロ・ヴェリタ・デルヴェッキだ。今は魔王を名乗っている。ヴェリタ王国へようこそ。エヴァンジェリーナ嬢」

 そう言うと私の手にキスをした。魅了の魔法がまだ効いているのかドキッとした。おかしい。前世じゃともかく、今世では何度も受けているのに。


 でも魔法ではないかも、とも思った。何故ならこの男の顔はバッチリ好みだ。妖艶な魅力、酷薄そうな笑み。

 サラサラしたストレートの髪を横に束ねてるのもポイントが高い。長い指も加点対象だ!足も長い。更にプラスだ!細く見える割に意外と筋肉質な、脱ぐとすごいんです系細マッチョだと更に加点!腹筋が割れてると大幅増‼︎

 低く響くエロい声もやばい。なのに一人称は『僕』って!加点が凄すぎて、100点をオーバーしちゃうじゃないか‼︎


「挨拶を受けて頂けないと言う事は、よほど僕の事を嫌いらしい」

 そう言って、私の髪を取り、

「とても寂しいね。貴女は僕の心を乱す」

 その髪に口付けって‼︎


 やめて‼︎ 好みの顔、口調、Sっぽくありながら、私にはMも見せるって‼︎ トキメいちゃうじゃないか‼︎

 落ち着け!私!思い出せ‼︎ 前世50歳!今世18歳!併せて68歳、還暦も過ぎた婆がトキメくな‼︎ 雅也さんの顔を思い出せ!私は雅也さん一筋!雅也さん‼︎


 うん、落ち着いた!たぶん‼︎


「ヴェリタ王国など聞いた事はありません。そう思っていただけです」

 そう言って髪を払う流れで、男の手から髪を奪う。その髪の無くなった手を見る男。ざまぁみろ!そしてその寂しげな表情やめて!私も私だ!トキメクな!還暦過ぎてんだぞ!


「名乗りを受けましたので、改めて返しましょう。エヴァンジェリーナ・サヴィーニでございます。サヴィーニ公爵家の長女で、アダルベルト・フォルトゥーナ・ミケーレ王太子の婚約者でございます」


 立ち上がり、この極端に胸の開いたドレスを抑えるために右手を胸に、左手でドレスの裾を摘もうと思ったけど、大胆なスリットが入ってたので、お辞儀をするだけにした。ヤバい、ヤバい。気をつけないと!

 そして顔をあげ、背筋を伸ばし、座る彼を上からわざと見下げる。


「セヴェーロ・ヴェリタ・デルヴェッキ国王様。お初にお目にかかりますわ。王族の誘拐は高く付きますわよ?」


「君はまだ、王族ではないはずだ」

 まなじりが歪み、不愉快極まりない表情をする。驚いた。こんな顔もするのね。


「そのつもりですわ。わたくしも皆も。わたくしはアダルベルト王太子様の物ですから」

 身も心も、とわざと強調して続ける。


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