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33話 襲撃(2)

「お久しぶりですね。エヴァンジェリーナ・サヴィーニ様」

 ドレスを優雅に摘み、私に向かってカーテシーをする女を目の前にして動揺する自分を発見する。


「相変わらず、礼儀を覚えないのね。位が下のものから話しかけてはいけないと何度も注意したはずでしょう?本当に呆れるわね。でもわたくしは心が広いから許して差し上げるわ」


 空間からいつもの扇子を出そうとするが、繋がらない。魔法を封じられている様だ。頭に来る!あの扇子に攻撃魔法を仕込んでいるのに。 


「貴女はなんとお呼びすれば良いのかしら?ラウラ・アイマーロ男爵令嬢ではないのよね?」

 動揺を見せない様に、やや高慢な態度で話しをする。私の後ろには麗がいる。怯んでは、いけない。


 咲夜が外に飛んで出てすぐ、応接間から避難しようとした時に、この女は空間を割くようにして現れた。

 ふわふわしたピンクゴールド色の髪を持つ女は、かって見たことのない表情を顔に浮かべる。かわいいと言われていた大きな黄緑の目に浮かぶのは、無関心で冷ややかな色。


「わたくしの事はラウラとお呼びくださいませ。これから誠心誠意お使えしますわ」

 右手を胸に置き、艶やかに笑って見せながら、深くお辞儀をする。ちゃんとできたのね。今まで散々注意しても、やらなかったくせに!その変わりように感心するわ。


「貴女様をお連れするのに、その小娘は邪魔ですね」

 笑みが一転し冷酷な表情へとかわり、私の背中で震える麗を見る。


 まずい!まだ麗は過去のトラウマを克服していない。

 麗の肩を掴み、更に私の後ろに隠す。私の息子の大事な人だ。誰に代えても守らなきゃいけない。


「連れて行く?どちらへ?わたくしの居場所はこの城。アダルベルト様の隣ですわ」


「あの様な脆弱な男は、エヴァンジェリーナ様に相応しくございません」


「あら?まるで他に良い人がいるかの様な言い方ね。ではなぜ、わたくしは貴女とアダルベルト様を奪い合う必要があったのかしら?」


「さぁ、わたくしは命令に従っただけですから」


「まるで主人がいるかの様の言い方ね。自ら迎えに来れない様な臆病者にわたくしはもったいないわ」


「その程度の誘導で主人の名を出すほど、わたくしは愚かではありませんのよ?エヴァンジェリーナ様」


 自信のある笑みは崩れない。この女がついこの間まで男の一喜一憂に表情を変えて、男共に媚びていたのかと思うと自分の記憶を疑いたくなる。


「時間稼ぎはもうお終いですか?終わりの様でしたら、わたくしとご一緒しましょう」

 更に企みまで曝露される。分かっている上でここに残るとは図々しい。


「扉の前に兵がいたはずだけど、どうしたのかしら?」

「あの程度の羽虫。気になさる事はございませんよ」

 そうか。おかしいと思ったけど、もうやられているのね。


「強者の風情ね。卒業パーティーの後にアダルベルト様に負けた割には」

「あら木端のくせに記憶を取り戻したと言うのですか?思ったよりも根性があると言う事ですね。芋虫くらいには格上げしましょうか」

「その芋虫に負けた女がよく言うわ」

「その女にすら勝てないのが、ここの兵士ですわ。エヴァンジェリーナ様」

 

 彼女の言葉と同時に扉が乱暴な音を立てて開く。

「お父様!!」


「エヴァ!無事か⁉︎」

 父が兵士を引き連れ姿を現した。正面にいるラウラを捉えて真っ先に魔法陣を展開させる。

「貴様、ラウラ・アイマーロ!!」

 父の魔力は王に続いて多い。私は安堵の笑みが浮かぶ。

 だがラウラの笑みは崩れない。待ってあげていたと言わんばかりに目が見開く。狂気の目だ!


「お父様!!」

 声を上げた時には遅かった。ラウラの前方に魔法陣が出現し、そこから無数の氷の刃が放出される。放出された鋭い刃が、幾重にも張られた結界を紙のように切り裂き、父や兵に突き刺さる。お父様の腹の部分に刺さった氷の刃は背中まで達している!


 咄嗟に回復の魔法陣を展開する。だが手を伸ばした先にある魔法陣は起動しなかった。

「手を離せ!ラウラ‼︎」

「我先に助け様とする姿。さすがです。エヴァンジェリーナ様。ですが今は無理です」

 体に何かが乗ったかの様に重くなり、目の前が暗くなる。ダメだ!今、気絶してしまっては誰一人助けれない!助ける事ができない!

 ここが踏ん張りどころだと奥歯を噛み締めるが、全身麻酔のような強制的な眠りに抗うことができない。


 悔しい……。なぜ、この程度の力しかないのか……。


 抗えない眠りの中、最後に聞こえたのは麗ちゃんの声……。

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