32話 襲撃(1)
外に響く爆発音の場所を検知する。王都上空、南の4区だ。まずいな。王城から一番離れている場所だ。そこに凄まじい魔力を感じる。俺と同じ、もしくは以上か!
「エヴァ嬢!コス嬢を任せる。直ちに避難しろ!城内は王に任せた。私は出る!」
エヴァ嬢が心得たとばかりにコス嬢の手を取る。不安そうな麗の瞳が目に映る。
(大丈夫、今度は戻ってくるから)
[アス様のことは私に任せるが良い。貴殿は貴殿のやるべき事をしろ]
ウルティモの気遣いを受け、腰のヴィアラッテアの存在を確認し、俺は窓から空へ飛ぶ。
俺の名前を呼ぶ、愛しい人の声を聞きながら。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「おや、思ったより早かったね」
南の4区の上空に到着した俺に声をかける男。こいつが爆発音を起こした者の様だ。自分を圧倒する魔力に、身震いがする。
「一応確認しよう。アダルベルト・フォルトゥーナ・ミケーレ王太子で間違いないかな?まぁ、ヴィアラッテアを持っているんだ。間違い様がないけれど・ね」
酷薄な笑みを浮かべる男には余裕がある。嫌な感じだ。
青の様な碧の様な不思議な髪色。血の様に赤い瞳。生まれながらの王者の様な風格に、気圧される自分を感じる。ゾッとする様な美しい顔に残虐な悪魔の微笑み。魅入られたが最後、八つ裂きにされそうだ。
深い闇の様な黒色の衣類を身に纏い、燃え盛るマグマの様に赤いマントを翻す。
腰には自身の髪色と同じ鞘の剣。
「アダルベルト・フォルトゥーナ・ミケーレ王太子だ。貴様が先程の爆発を起こしたと、思って良いか?」
彼の威圧に負けない様に、自身の威圧も強める。ヴィアラッテアはまだ抜かない。
「そうだよ。我ながら絶妙な力加減だと思うよ。ヒトが作った結界は脆弱だ。触れれば壊れてしまう。優しく、優しく壊れない様に攻撃をしてあげたんだよ?僕は優しいからね」
愛おしい物を見る様に王都を観る。だが、その視線には狂気が含まれている。
「敵対行為を隠さず見せると言う事は、貴様は敵だな?名を名乗れ。不敬だぞ?」
ヴィアラッテアを抜く。剣先は男の正面だ。剣を向けられても、男の表情は変わらない。
「そうだね。名乗りを受けて返さないのは失礼だ。では名乗ろう」
笑みを湛えたまま男は剣を抜く。ヴィアラッテアに似た美しい白銀の刃。
「セヴェーロ・ヴェリタ・デルヴェッキオ。君達には魔王と名乗った方が良いのかな?」
やつの名乗りと同時に、空いっぱいに火の玉が現れる。青い空が夕焼けの様に赤く染まる。魔法の展開を感じさせない強力な魔力に、なぜか覚えがある。
(すごい数だ!これだけの量の火の魔法を一人で発動させるとは⁉︎)
「まずは小手調べだよ。失望させないでくれ」
セヴェーロが剣を振り下ろすと同時に、火の玉がミサイルの様に降ってくる。向かう先は、俺ではなく王都⁉︎
咄嗟に王都全体に結界を張る、と同時に魔法陣を起動させる。
「他人を攻撃するとは、度量が知れるな?数に頼るのは器が知れると言うことだ」
言葉と同時にセヴェーロの頭上に落雷を落とす。辺り一体に雷鳴が轟き、閃光が迸る。
攻撃は防護結界に阻まれたようだ。セヴェーロの余裕な笑みは崩れない。
「僕を挑発して自分に攻撃を向けさせる気だね?良い教育を受けた様だ。だが闘いについては、井の中の蛙だね。実に稚拙だ」
セヴェーロの背後に自身より大きい氷柱が現れ、再び空を埋め尽くす。極端に尖ったそれが殺意の高さを物語る。
(なんて魔力だ!)
王都の結界を更に上乗せする。あの攻撃に耐えるために、何重にすれば良いのか。
「無駄が多いね。どうやら君に足りないのは経験値だ」
セヴェーロの合図で氷柱が王都へ迫る。次々に降る氷柱で結界が砕けたガラスの様な音を立てて割れていく。更に追加しようと魔法を起動させた時、頭上に影が降りた。




