29話 悪役令嬢の常識
「あの花火の原因はあんただったのね」
ことの成り行きを説明したら、オカンから冷ややかな目で見られた。
(俺のせい、なのかなぁ……)
俺達は今、王城の…応接間にいる。王城の上空に盛大な花火が上がった後、混乱するコスタンツァ嬢を侍従とメイドに預け、俺は事態の収集にあたった。
その合間を縫ってオカンに連絡をし、オカンを城へ呼び寄せた。
そして今、俺とオカンと麗の3人は応接室へと集合した。前世組の顔合わせだ。
ヴィアラッテアには今晩、説教だ!!
「えっと……エヴァが燈子さんで、アダル様が咲夜君って事だよね?」
麗がおずおずと尋ねてきた。少し鼻にかかった様な、懐かしい喋り方だ。
「そうよ、麗ちゃん!久しぶり~。私達は交通事故だけど、麗ちゃんはどうしたの?病院の見立てでは、まだ大丈夫だったはずよ?」
「ああ、私、その事故のニュース見てそこから記憶がないんです。たぶんそこで死んじゃったと思うんですよ。でも2人に会えたから結果、良かったです!」
ああ、この妙にポジティブな所も麗だな。オカンに影響されていつの間にかこうなってたんだよなぁ。
「ふふふ、そうね。また会えて嬉しいわ!麗ちゃん!しかし、あれね。ヴィアラッテアには感謝ね。早く分かって良かったじゃない。ねぇ、咲夜」
「は?オカン、何、言ってんの!ヴィアラッテアが空気読まないせいで、俺が花火打ち上げちゃったんだよ!後始末が大変だったんだから!」
「は?空気読むってなに?良い?咲夜。世の中の全ての人が空気読んでたら、世界は発展しないのよ。新しい世界を切り開くのは、いつも空気を読めない人なのよ!常識なんて、その他有象無象の戯言よ!」
[さすがサクヤ様のお母様、良い事言います!]
「はぁ!?オカンもヴィアラッテアもなに言ってんの!?」
「ヴィアラッテアは、なに言ってんの?」
「良い事言うって言ってますよ。燈子さん」
「なに言ってるのか分からないって不便ね」
やばい。俺だけでこのメンバーを抑えられる自信がない。今後の先行きに不安を感じる。
[アダル殿、相談がある]
ウルティモが俺に話しかけてきた。って言うか、『殿』って言った?
[アダル殿の魔力をお借りしたい。エヴァ殿にも私達の声が聞こえる様にする。ついでに義体も用意しよう。人は姿が見えないと話しにくいと聞く]
[えー、そんな事できるの⁉︎教えてよ。ウルティモ‼︎]
[逆に何故お前が知らないんだ⁉︎ヴィアラッテア‼︎]
ああ、ウルティモの立ち位置が俺と同じ気がする。味方は多い方が良いな。
俺は承諾する。と同時に魔力がごそっと抜けた感じがした。
え?結構持ってたよね?今??
ウルティモとヴィアラッテアの本体である剣は仄かに光り、その光は集約して銀と金の小鳥になった。
「小鳥……だわ」
「オカン、見えるんだ」
「うん、金の小鳥がヴィアラッテア、銀の小鳥がウルティモかしら?私の事はエヴァって呼んで?よろしくね」
[はい、エヴァ様よろしくお願い致します]
[エヴァ殿。コス様共々よろしくお願い致します。それと少し良いだろうか?]
銀色の小鳥・ウルティモはオカンの肩に止まる。しかし、あれだな。ウルティモとヴィアラッテアの差が色々激しいな。改めて見るとヴィアラッテアは天然で自由すぎる。
[エヴァ殿、この様に多重結界を常に張り続けるのは、大変ではないのか?]
「多重結界?」
「オカンさぁ、常時自分の体に結界張ってるだろう?俺のトリガー式だと不安なのは分かるけど、それって疲れない?俺も昔から気になってたんだよね」
「なんの話?」
キョトンとするオカン。
「え?知らないの?知らないでやってんの?嘘でしょ。オカン」
「全然分かんない。麗ちゃんは分かる?」
すぐ横の麗に話しかけるオカン。本当に気付いてないのか?
「私は魔法すら分かってないから。でも確か、ゲームではエヴァンジェリーナって魔力が高い仕様でしたよね?」
「ああ、確かに強いとは言われたわ。ただ、その割には魔法の施行回数が少ないって言われてるわ」
「だから、その多重結界を張ってるせいで、数打てないって言ってんだよ」
[ふむ、拉致があかないな。エヴァ殿。額を拝借したい]
「え?良いわよ」
小鳥のウルティモはオカンにおでこをつける。ウルティモが心強くて感謝する。
[ふむ、分かった]
ウルティモは、オカンの肩から飛び立ち、麗の肩へ降りた。
「ウルティモ?どうだったの?」
[はい、アス様。分かりました。ですが申し訳ありませんが、初代ご主人様との約束で言えません]
「そうなんだ。ごめんなさい。燈子さん、ウルティモ言えないみたい」
その理屈はオカンには通じない。案の定、猪突猛進、暴走列車に火が付く。
「はぁ⁉︎分かるけど言えないってなんなの⁉︎私を舐めてんの!初代様だか代官さんだか知らないけど、死んだ人に義理立てして、なんになるってわけ!今、生きてる人間こそ大事にしなさいよ‼︎私達は今を生きてんの‼︎」
オカンは立ち上がり麗の肩に止まっている小鳥を掴み持ち上げる。麗は取り返そうと立ち上がるけど、身長差で届かない。
「燈子さん!落ち着いて!!ウルティモを返して~」
麗がウルティモを取り返そうと、ピョンピョン跳ねてる。かわいいなぁ。跳ねれるくらいに元気になったんだ。
「喋んなさいよ!話さないと、焼いて食うわよ‼︎」
オカン、鳥に怒鳴りつけるなよ。相変わらず大人気ないなぁ。
[私の本体は剣だ!食えるわけがないだろう!]
ウルティモ、正論だけどその瞬間湯沸かし器には通じないよ。
「はぁ?じゃあ、炉にくべて溶かしてやるわよ!私の組織には、そう言うのが得意なマッドサイエンティスト集団がいるわ!そこにくれられたくなければ、言いなさい!」
「え?組織持ってるんですか?」
麗?どこに 食いついてんの?気のせいかウルティモもから、悲しい鳴き声が聞こえるよ?
「持ってるわよ。だって転生した悪役令嬢が持つのは常識でしょ?」
(常識なの?)
「ですよね!分かります!必須ですよね!」
(必須なんだ)
盛り上がる2人の隙を付き、逃げ出したウルティモが俺の元へ飛んでくる。
[貴殿の母は恐ろしい!]
「あー。ごめんね?」
女子2人の話は長い。タイミングを見て仕切り直そう。




