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28話 KYヴィアラッテア

「ヤバかった」

 ついつい独りごちる。

[ウルティモのご主人様、元気そうで良かったですね]

 ヴィアラッテアが俺の言葉に対して、呑気に返事をしてくれた。


 大聖堂での騒ぎに憤りを感じた俺は、コスタンツァ嬢を連れ去るように城へ帰ってきた。彼女を勇者として祭り上げる皆が嫌だった。彼女を皆に見せたく無かった!自分だけの彼女でいて欲しかった!


 でもそんな俺の心を知ってか知らぬか、彼女は自室に入る際に、笑顔でお礼を言ってくれた。


(かわいかった)


 オカンが面会謝絶って言うからずっと会わずにいた。だから俺の覚えてる彼女の姿は、年齢より幼く、やつれてボロボロになった姿。


 でも今朝迎えに行った時の彼女は、全然違った。


 サラサラと流れる銀の髪。切り揃えられた前髪の下の、ぱっちりした大きい瞳。美しいエメラルドの様な緑の瞳に、長い髷が影を落とす。高すぎず低すぎない鼻の下には、ピンクのかわいい唇。ふっくらした頬は、柔らかそうだ。

 手足は長く伸び、でも全体的に小さい体に庇護欲が湧く。


 緊張しすぎて、ちゃんと王太子としての仮面を付けれていたか自信がない。

 手へのキスとかヤバかった。自分の手が震えていた。気付かれてないと良いけど。手袋だったのは正装だったから仕方ないと思ったけど、でも本当は素手を触ってみたかったな。


 ドキドキしながらエスコートして、向かい合って座った行きの馬車もヤバかった。いまいち何を話したか覚えてない。なんて情けないんだろう。


 ウルティモとの儀式で剣が抜かれるのは分かってた。だから敢えて奥の院で義式を行った。皆は喜んでたけど俺は今も複雑だ。


 皆はコスタンツァ嬢を勇者として、魔王討伐へ行かせる気だ。俺を後衛として城に残して。王太子だから、替えが効かないから。


 でも俺はその気はない。

 コスタンツァ嬢を後衛として残し、一人で出かけるつもりだ。それこそが王太子としての義務だと思う。


 大切な人達を守るために。




◇◇◇◇◇◇◇◇





「コスタンツァ嬢が私に話しがある・と?」

 城にある演習場で、魔法の鍛錬をしていたらメイド経由で伝言が来た。


[ご主人様!ウルティモのご主人様と私も会いたいです]

 ヴィアラッテアからもおねだりされたら断れない。そもそも断る理由もない。

 だから俺は快諾する。場所は中庭を臨む2階のテラスした。今の季節はチューリップがきれいに咲いているはず。

 麗はチューリップが好きだった。





◇◇◇◇◇◇◇◇



 侍従を引き連れテラスに向かっていると、向かう先から楽しそうな話し声が聞こえる。

 笑える様になったんだと実感し、ほくそ笑む。


 コスタンツァ嬢と俺の関係性はヴィアラッテアとウルティモの主人。この1点だけだ。

 未婚の男女である俺達は、二人で会う事は許されない。故に俺は侍従を2人連れ、コスタンツァ嬢にはメイドを2人配置した。

 

 ちなみに昨日の馬車の中にも、侍従とメイドが1人ずついた。わずらわしいと思うが仕方ない。これがこの世界の常識だ。


「アダルベルト・フォルトゥーナ・ミケーレ王太子だ。昨日はありがとう。ウルティモも一緒か」

 身分が高いほうが話しかけるのが常識。俺から声をかける。カーテシーをしたままのコスタンツァ嬢を見る。子供の頃に習っただけと聞いたが、とても綺麗だ。

 ウルティモは銀のチェーンの先端、胸の少し上にペンダントヘッドとなって光っている。このサイズにもなれるのか。ただ、ちょっとムカつく位置だ。


「コスタンツァ・メルキオルリ伯爵でございます。先日はエスコート頂きありがとうございました」

 彼女は現在、メルキオルリ伯爵家の当主だ。その表現は間違っていない。

「楽に」と伝えると、ゆっくり顔を上げる。やはりかわいい。


 

「ああ、ウルティモから聞いたんですね?」

「はい、知らなかったとは言え、アダルベルト王太子様には色々助けて戴いていたみたいで、それでお礼が言いたくて」

「かまいませんよ。貴女を助けられたのであれば……、逆に助けられなかった方が辛かったでしょうから」

 侍従とメイドがも見守る中、心地よい風が吹くテラスで会話と軽食を楽しむ。中庭から咲き誇るチューリップの良い香りがする。


[私からも改めて礼を言う。ヴィアラッテアの主よ]

 ウルティモからお礼を言われた。男の声だ。なんか嫌だ。


 そしてやっぱり俺は声が聞こえるんだ。周りの人間はウルティモの声が聴こえていない様だ。


「ヴィアラッテアもありがとう」

 コスタンツァ嬢は俺の腰にあるヴィアラッテアに笑いかける。

[ウルティモのご主人様。楽しかったですね。また色々お話ししましょう。遊びに行っても良いですか?]

 ん?ヴィアラッテアってば、何を言ってんの?それって俺の魔力を使うって事だよね?ヴィアラッテア、最近自由すぎない?


「大歓迎だよ。でも、ご主人様はやめて~。ウルティモみたいに名前で呼んで?」

[はい!コス様!]

 えー?どう言う事⁉︎名前呼びしてもらえるの?初めて知ったよ!

 後でヴィアラッテアと話す必要があるな!


[ヴィアラッテアの主人よ。頼みあるのだが……]

「なにかな?」

 俺は動揺等微塵もしていない様に、ゆっくり聞き返す。こう言う時に王太子教育をありがたく思う。



[コス様に魔法の使い方を教えて頂きたい。私が今コス様の魔力回路を修復しているが、やはり使用しないと話にならない様だ]

「ああ、私とコスタンツァ伯爵は、常人とは違うようだからね。問題ないよ。お教えしましょう」

 改めてコスタンツァ嬢に向き合う。大事なのは、負担をかけさせない為に余裕のある笑顔を心がける事。


「コスタンツァ伯爵?今日この後は、ご予定は?」

「私はありませんが、アダルベルト王太子様はお忙しいのでは?」

「大丈夫ですよ。まずは魔力を感じる事から始めましょう。ただし私の魔力は大きいので、他の者に任せましょう」

 

 俺は目線をメイドに送る。メイドが心得た様に近づいてくる。

 良く考えたら彼らにはヴィアラッテアとウルティモの声は聞こえない。だが空気を読んで理解してくれているのだろう。


[ヴィアラッテアの主人よ。私はあなたに頼んでいるのだ]

 ウルティモから声がかかる。

 俺はメイドに軽く説明し、待機を命じた。


「ウルティモ。先ほど言った様に、私は魔力が大きい。コスタンツァ伯爵に被害が及ぶ可能性があるが」

[大きいから頼んでいるのだ。荒れ狂う海に小石を投げ込んでも、海は何も感じない]

 ウルティモはヴィアラッテアより、詩的な物言いをする。理解した俺はメイドをその場に残した。やましい事をしない証人として。


「では、コスタンツァ伯爵。お手を、今から魔力を流します」

 彼女の手を軽く取り、ウルティモに視線を送る。


[問題ない。危険と感じたら私が対応する]

 うん、頼もしいな。

 でも、大丈夫かなぁ。前に軽く聖魔法師団の副団長に魔力流したら、悶絶してたけど……。


「目を瞑って、魔力の流れを感じて下さい」

 俺は細心の注意を払いながら、彼女になるたけ軽く魔力を流す。


「あ、少し温かい物が流れてきてます」

[ヴィアラッテアの主人よ。もう少し多目に頼む]

 無理言いますね、ウルティモさん。俺は微調整が苦手なんだけど!頑張りますけどね!

 

[ご主人様!私、ご主人様の事をアダル様って言いたいです]

 頑張っている中、投下されるヴィアラッテアの爆弾発言!

 空気読んで!ヴィアラッテア!今、俺、頑張ってるよ‼︎


「良いよ、ヴィアラッテアの好きに読んでくれて」

 とりあえず、返事はする。後でヴィアラッテアには説教だな!


[本当ですか?わーい。ありがとうございます。ウルティモもコス様も、アダル様って言ったらどうですか?]

「え?私はダメだよ。不敬になっちゃう」

 目を瞑ったまま、シュンとなるコスタンツァ。すごいな、これだけ魔力を流しても平然としている。


[そんな事ないですよ?ね!アダル様]

(もう本当に空気読んで!ヴィアラッテア!)

[男女間で近親者でもないものが、省略呼びできないのは常識だろう。ヴィアラッテア、お前は常識を学べ!]

 ウルティモがヴィアラッテアを説教してる。

 おかしいな。何回も主人を持ったヴィアラッテアより、ウルティモの方が常識知ってるってどう言う事だ?


[じゃあ、別の呼び方すれば良いんですよ!アダル様は、コス様の事を前世の名前のウララって呼んで、コス様はアダル様を前世の名前のサクヤって呼べば良いんですよ!]

「「・・・は!?」」


 動揺した俺は魔力の調整を見誤り、大きな魔力をコスタンツァ嬢に流した。その魔力を危険と感じたウルティモが空へ逃し、城の上空へ大きな花火を打ち上げた。

毎朝7時に投稿します。

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