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12話 YES マム

「そんな話があったんだよ」

 ソファの肘掛けに両腕を重ね、その上に顎を置く。ああ、ラッキーがよくこのポーズを取っていたな。


「ふーん、スイーツ王も、ちゃんと見てるのね。見直した」

 答えるのはオカン。

 今日、オカンことエヴァ嬢は、俺の部屋に遊びに来た。最近は周りが当たり前の様に、二人きりにしてくれる。その意図は、分かってるけど、現実にする気はない!


 今日もオカンは細身の紫のドレスだ。ホルターネックのマーメイドラインのドレスは、背中がぱっくり開いている。ドレスの上に纏う長いケープには、繊細な金の刺繍がされている。

 これでもかと俺の色を入れてくる!


 そして俺は、赤い服に紫のマントだ!つまりオカンの色!

 オカンからの訪問伺いの手紙に、洋服の色指定がされていた。バカップルかよ!と、突っ込みたい所だが、ここは我慢だ。対外的にも仲が良い事を見せつけないといけないから。

 でも、こんな事やってて、婚約破棄とかできるのかなぁ、と不安になる。


「しかし、ツルペタって何者かしら?痕跡残さず消えるって、あり得ないわよ」


 俺はソファでゴロゴロしてて、オカンはカウチで、くだ巻いてる。恋愛要素は0。まぁ、親子なんだから、当然なんだけどね。


「まぁ、いいわ!ポジティブに考えましょう。これで、あんたが死ぬ要素は無くなった、と思いましょう。だから、次行くわよ!」

「つぎ?」

「そう、次!雅也さんを探すわよ!」

「オヤジを?あてはあんの?」

 キッと睨まれた。

(あ、はい。座ります。姿勢を正します。はい!)


「あんたと私って同じ誕生日、ほぼ同軸刻に生まれたでしょ?」

「それはやっぱり、一緒に死んだからかなぁ」

 俺達は交通事故で死んだ。高速道路を走行中、追い越し車線を走っていたトラックが暴走し、横転した。そこまでは覚えている。だからそこで死んだんだろう。運転してたのは母。母の後ろに俺。父は助手席だった。


「そうでしょ、たぶん。だから雅也さんが転生してるとすれば、私達と同じ日、おおよそ同じ時刻に産まれてるはず」

 オカンが空間から紙の束を取り出す。


「そして、これが王都内で私達と同時期に産まれた子供のリストよ!」

 バサッとテーブルの上に広がるリスト。結構いるよ?これ。


「余裕を見て、1時間前から6時間後までリストアップされてるわ」

「オカン、このリストってどうやって手に入れたの?」

 リストに目を通す。産まれた日時、名前、住所、職業、趣味が書かれてる。

 このリスト、怖‼︎


「私の手の者に頼んだのよ?」

「わたしの……てのもの??」

「悪役令嬢には必要でしょ?」


 必要なのかな?そこは同意しかねるけど、突っ込んだら、怒られる気がする。


「それで、この人達をどうするの?」

「もちろん、会いに行くのよ!あんたと私で!」

「え?俺達二人で行くと目立つよ。護衛とかも引き連れて行く事になるし」

 王太子と王太子婚約者が王都に出るとなれば、侍従、メイド、護衛騎士を引き連れての行幸となる。簡単にできる物ではない。


「あんたがいれば護衛なんていらないでしょ。まぁ、でも目立っちゃダメよね。そこは分かってるわ」

 自信満々に語り出したオカン。前世の経験から分かる。これは何かをしでかす時の顔だ。


「変装して町に出かけましょう。二人で!これから毎日、あんたの所に来るからさ。二人で抜け出して、会いに行けば問題ないでしょ」

「はー⁉︎何言ってんの!問題ありありだよ。城内の警備を抜けて、街に行った事が知れたら、警備隊長の死活問題になっちゃうよ!」

「バレなきゃ良いでしょ。ヘタレねぇ。あんたは」


 そう言う問題じゃない!と言って、出来ない理由を並べたいが、そこはオカンも分かっているはずだ!ここは別方向から攻めるべきだと、策を巡らす。


「俺、庶民の服とか持ってないし」

「あるわよ。ほら」

 当たり前の様にずるっと空間から服を出す。この作戦は失敗する予感はしてた。次だな。


「いや、でも誤魔化せるのって1時間くらいでしょ?それで、王都と王城を行き来するの厳しいんじゃ……」

「あんた、転移魔法使えるんでしょ?それでパッと行って、パッと帰って来れば良いじゃない」


「あれは先に転移陣を設置しないとダメなんだよ。今から王都に向かうと設置して蜻蛉返りする事になる」

「今日はそこまでで良いわよ。明日から、探せば良いんじゃない?」


「でも……

「でもでもでもでも、うるっさいわね!あんたを助けるために、私が何年間尽くしたと思ってんの!18年間よ!18年間、雅也さん探し諦めて、あんたの為に頑張ってやったんでしょうが‼︎」

 立ち上がって叫び出すオカン。

 作戦失敗!しかも火がついた!関係ない所にも飛び火してる‼︎


「あんたのために、寝ずにおっぱいあげてやった恩も忘れて、あげくこの18年間もない事にするってわけ!親不孝にも程があると思わないの⁉︎本当なら、あんた放っておいて、雅也さんを探しても良かったのよ‼︎」


 あ、これ選択肢ないやつだ。前世の記憶で良く分かる。


「あんたの答えはYESしかないの!それ一択なの!グダグダ言ってる暇があったら、さっさと着替えなさい!こっちは一分一秒だって惜しいのよ!」


「あ、うん。分かった」

(ゴメンナサイ。ワガママ言いません。許して下さい)


「わかった~⁉︎それ違うでしょ!」

 鬼の形相で睨まれる。そうだね。子供の頃から、こう言う時の返事は決められてたね。


「YES、マム」

「よろしい」

 満足顔のオカン。

 いつも思うけど、このセリフってなんなの?





◇◇◇◇◇◇◇




 隠蔽魔法を行使ししながら、空を飛ぶ。

 オカンは医療系魔法と生活魔法しか使えないと言うので、俺がお姫様抱っこする。ドキドキするかと思ったけど、全然しなかった。運んでいる間も、子供の頃のことをあーだ、こーだ言われる。

 お陰で俺の精神はズタボロだ。


「とりあえず、大聖堂の近くに陣を張るよ。都市の真ん中だしね」

「こんな目立つ所で大丈夫なの?」

 俺が陣を作ろうとしてるのは、都市の中心部にある大聖堂を取り囲む門の、角。人の行き来があるところだ。


「大丈夫だよ。俺にしか見えないし、俺にしか使えない。しかも、転移する時には認識阻害の魔法を組み込むから、周りには俺達が何をやってるか分からないから」

「へー、伊達に聖魔法士団長なんてやってないのね」

 聖騎士団長も聖魔法士団長も、血統で選ばれるんじゃないですよ。オカン。実力主義なのよ。オカンも大概、俺に興味ないよな。今更だけど。本当にオヤジしか興味ないんだな。


 オヤジはとてものんびりした人だった。オカンがギャーギャー言って怒っている時に、いつもまぁまぁって言いながらニコニコ笑ってた。

 趣味は料理。両親は共働きだったから、料理は家にいる誰かが作る、が我が家のルールだった。でも圧倒的にオヤジが多かった。

 趣味だから良いんだよーって笑ってた。


 ちなみに俺はオヤジに怒られた事がない。そもそも、そんなに怒られる事をした覚えもない。そう言えば、反抗期もなかった。

 逆らっても無駄だと、思っていた。オカンに。


 オカンと呼び始めたのは、小学校高学年の頃。ママと言うのが嫌で、母さんって呼んだら怒られた。じゃあ、お袋って言ったら、更に怒られた。オカンなら良いよ、って言うから、オカンになった。理由は良く分からない。ちなみに、マムでも良いよって言われたけど、それは俺が却下した。

 オヤジは何でも良いよ~って言うから、オヤジ。


 俺達親子は仲が良かった、と思う。家族で年2回は旅行に行った。二人とも休みは不定期だったけど、俺の休みに合わせて休みを取ってくれた。ラッキーが生きてた時は、ラッキーも一緒に車で国内旅行。犬と泊まれる宿は限られるけど、ペットホテルに預ける事なんて出来なかったから、どこまでも一緒に行った。


 オカンは、ラッキーは良い子だからペットホテルでも大丈夫、って言ってたけど、俺が無理だった。でも、俺だけじゃない。オヤジも預けるつもりはなかった。


 ラッキーは老衰で眠る様に亡くなった。

 看取ったのは俺とオヤジ。二人して、涙が枯れるまで泣いた。オヤジは俺を抱きしめてくれたけど、そうしないとオヤジも耐えられなかったんだろう。今なら分かる。


 麗と付き合いたいと相談したのも、オヤジだった。麗の病気の事を誰よりも分かっていたオヤジは、辛い事になるかもよ、っと哀しそうな顔で言った。でも、反対はしなかった。

 一緒にオカンを説得しよう、って言ってくれた。


 オヤジは看護師だった。温厚で、気が回るオヤジは、実は人気だったらしい。

 オヤジに一目惚れしたオカンは、ライバルを跳ね除け、時には蹴落とし彼女の座をゲットしたらしい。そしてオヤジは、入婿になり、三角雅也になった。

 

 実は私も燈子さんに一目惚れだったっんだよ。ってオヤジに聞いた事がある。

恥ずかしいから内緒だって言ってた。

だから、この事はオヤジと俺だけの秘密だ。



「今日はここまでね」

 腕組みし、大聖堂の大時計を見るオカン。  

 実は城に来た時の服装のままだ。現在、俺達2人には認識阻害の魔法をかけている。正直言うと、自身に大量の防御結界を張っているオカンに、魔法をかけ続けるのはメンドイ。だから着替えようと思った。


 オカンがドレスの着替えを手伝えって言うまでは!

 なんでこんなにデリカシーがないんだろう。


 オヤジ、俺にはオカンの良いところを見つけられないよ。一刻も早くオヤジを見つけたい。胃に穴が開いちゃうよ。

毎朝7時に投稿します。

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