1.四剣神ケレス・トリアード
今日はディケニア国が建国された記念日だ。
俺を含めた四人の四剣神はディケニア国の中心にある高いタワーの屋上に立っている。
高さは五百メートルを超えており、ここからは街を一望することができる。
数多くのビルが立ち並び、車が走っているのも見える。
そして、周辺の広場には五万人を超える国民たちが笑顔で俺たちのことを見上げている。
塔の頂上には四剣神が揃っている。
槍を扱うケリュエン。
斧を扱うルージュ。
短剣を扱うデーテ。
そして、長剣を扱う俺、ケレス・トリアード。
四剣神とはこの国の平和を象徴する英雄で、国民たちはみな俺たちの姿を祝福して歓喜の声を上げている。
四剣神は圧倒的な力を持っていて、街の外に住む魔族や他国から国を守る役目がある。
と、いうことになっているが、実は俺にそんな実力はない。
俺は最強の四剣神として国民たちに崇められているが、恐らく剣術を少し習った中学生に完敗するぐらいの弱さだ。
俺以外の四剣神は間違いなく絶対的な力を持っているのだが、俺だけは英雄の力が全く使えない。
だが、父が四剣神だったので俺が引き継いで四剣神となるしかなかった。
タワーの頂上に立つ俺たちは自分たちの武器を互いに合わせる。
そして、国の平和を宣言する。
四剣神が一人ずつ順番にスピーチをしていき俺の番が回ってくる。
俺はマイクを手に取り国民に向かって言う。
「……俺たち四剣神はこの千年以上にも渡って受け継がれてきた剣と血によって、我がディケニアに平和をもたらすことを誓う」
俺は全力でカッコつけて言った。
集まった国民たちは四剣神のスピーチを聞くと一気に湧き上がった。
俺につけられている四剣神のキャラはぶっきらぼうな態度だが、とんでもない実力を秘めたクールな少年というものだ。
しかし、本当の俺はそんなクールな人でもなく実力もない。
それでも、俺が四剣神としての実力がないことは国民に隠されているので、俺は最強の四剣神として国民の前に立たなければならない。
だが、その秘密がバレてしまったら、国民たちを失望させてしまいディケニア国への信頼もなくなってしまう。
それだけでなく四剣神が弱いとなれば魔族と呼ばれるモンスターたちがこの国を攻めてくるかもしれない。
それを防ぐために俺は最強を演じるしかない。
俺たち四剣神は合わせていた剣を離してその場から退場する。
すると、俺たちはお互いに会話を交わすこともなくすぐに解散となった。
国民の前では剣を合わせて平和を守ることを誓ったが、今の四剣神はそう仲良くない。
しかし、それは全て俺のせいだ。
実力がない俺がいることに不満を持っている四剣神がいて空気が悪くなっている。
ともかく、俺は何があっても国民に自分の弱さがバレることなく、四剣神としての役目を果たさなければならない。
俺は黒いローブを深くまで被り、国民に姿を隠しながら家に帰る。