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あの夏の最後の日。  作者: 伊呂波 うゐ
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■ 六.午前九時四十一分

■ 六.午前九時四十一分


 ある日いきなり俺は知ってるけど知らない場所、にきてしまった。

 知ってるけど知らない辰宮神社。

 見たことのねえ奴ら。

 しかも  


 「・・・お前は一体。どこから来たんか?」

 「・・・どこって・・・」

 平成17年7月15日。俺は辰宮絵馬から預かったレポートを辰宮

神社に持っていって、秘密基地に行ったら、雨が降り出して・・・

 そのままうたたねしてたら気がついたらココにいた。

 知ってるようで知らない辰宮神社。

 知らない人たち。

 「・・・ここは、どこなんですか」

 「どこだと?」

 「俺の知ってる辰宮神社は、もっとこう・・・朱塗りで新しいし、社務所も

あったし、でもここにはそんなもんがない。それに・・・」

 コンビニも、テレビも、車もない。

 ・・・まるで昔みたいな・・・

 「・・・昔・・・」

 自分でつぶやいて汗が出た。昔・・・

 「・・・いまって、平成何年くらい?」

 「へいせい?」

 「・・・じゃあ西暦は」

 「・・・昭和20年。西暦だと・・・1945年だ」

 「・・・」

 あぜん・・・今から60年前だと?・・・ありえねえ・・・

 頭を抑えた。

 なんだっけ・・・こういうマンガがあった気がする。タイムなんとかってやつ

 「・・・うそだろ・・・」

 なんで俺がそんな目にあわねえとならないんだ・・・夢・・・ありえる

ものすごいリアルな夢。早く目を覚まさなきゃ。

 「お前は・・・どこからきたんか?」

 「・・・」

 未来、とか?

 ・・・あほか

 そんなことがありえるわけない。ああ、三流マンガだか小説だかの

世界みたいに、過去にタイムスリップ・・・っていうんだっけ。そうして

・・・でももし俺がマンガみたいに・・・ハッピーエンドに元の世界に

戻れるってわけじゃなくて、逆に『戻れなかった』らどうなるんだ・・・!?

・・・ずっと60年も過去の世界で一人で生きろっていうのか!?

 「・・・古閑くん?」

 「・・・」

 どうしよう。どうしたらいいんだ?

 こんなとき誰に相談しろっていうんだ?

 「顔色が悪いぞ・・・」

 「・・・おっちゃん」

 例えば俺が今から60年後の世界の人間、だといっても信じられるのだろうか。

逆にこのおっちゃんが今から60年後の俺のいたところにきて俺と会っても

俺は絶対このおっちゃんの言うことなんて信じないと思う。

 頭のイカれたおっちゃん、としか思わないだろう・・・

 それより

 ・・・過去、って一体、どういう世界なんだ・・・?


 「おっちゃん」

 「な、なんだ」

 「俺やったら俺の今の状況を誰に話しても誰にも信じてもらえんと思うんやけどさ。

・・・とにかく俺は俺のおったとこに戻りたいけん、どーにかして協力してもらえん?」

 「お前のいた場所?・・・どこだ?外国とか?」

 「外国じゃないっちゃ。・・・60年後の世界」

 「60年?何を寝ぼけたこと言っとるんか」

 「・・・だよな」

 当たり前だ。信じてもらえるえわけがない。俺が信じたくないのだ。

・・・誰かに信じてもらおうってほうが無理だ。こんな話。

頭がイカれた子供、としか思われないだろう・・・

 「外国・・・外国といっても行けるんは満州か・・・ヨーロッパのほうならロシアか

ら昔は行けたかもだが」

 「・・・ヨーロッパに行きたいわけじゃないっちゃ・・・満州・・・ってどこ」

 「満州を知らんのか?」

 「・・・どこのこと」

 日本の地名か?と首をかしげていたら、おっちゃんは地図を持ってきた。

 日本地図。

 「・・・は?何コレ・・・」

 韓国とか北朝鮮っていうのがなかった。『満州国』となっている。

 「・・・ここは?」

 「満州だ」

 「・・・韓国は?」

 「韓国?・・・朝鮮のことか?前の戦争で日本が占領したから朝鮮という国は

今はもうない」

 「ウッソだろー!?何それ。聞いたことねえよ」

 ほかにも、どこだ・・・フィリピン?・・・グアム?そのあたりの国は赤い線で塗ら

れていた。

 「じゃあこれも日本?」

 「そうだ。数馬が行ったのはここだ。ラバウル」

 「・・・」

 信じられない・・・

 この頃の日本ってこんなに土地持ってたのかよ。

 「それでお前はどこに行きたいんか?」

 「・・・俺は」

 未来

 60年後の世界

 ・・・でも何を言っても信じてもらえない気がする。俺自身が何もかも

 信じられないからだ。・・・『過去の世界』なんて。

 「満州のことも知らない、なんて。ほんとにどこから来たんだ」

 「・・・」

 地図を閉じておっちゃんは

 「・・・数馬は。社会科の教師だった」

 「・・・辰ちゃんと同じ?」

 「・・・戦争がなければ、教師として長崎の赴任が決まっていた。・・・それなの

に」

 「・・・」

 でも・・・驚くほど辰ちゃんと、死んだ数馬って人の共通点は多い。

 ・・・なんでだろう?

 「おっちゃん・・・俺の話、聞いてもらえる?」

駄目もとで話したらなんとかなるだろうか・・・たぶん、この人は辰ちゃんの『なん

か』だ

 話せばわかってもらえるかも・・・しれない。


 「俺は2005年。平成17年からきたんだ」

 「・・・は?」

 何だそれは、という顔をしておっちゃんは顔をしかめた。

 そして俺の長い話は始まった。

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