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14歳(1)



14歳の誕生日は、いつもとは違ったものになった。


「セシリア様、お誕生日おめでとうございます。

今日はこちらのドレスにしてはいかがですか?」


クレアが選んでくれたのは淡いラベンダー色のドレスだった。

そうだ、誕生日なら…と、わたしは昨年の誕生日にカイルから貰った

リボンを引き出しから取り出した。


「これも着けたいんですが、合うでしょうか?」

「素敵なリボンですね、ドレスにも合いますし、

セシリア様にお似合いだと思います、後でお着け致します」


わたしは何故だか気恥ずかしくなり、

「お願いします」と俯きつつリボンを渡した。



「セシリア様、これは私から、お誕生日のプレゼントです」


朝食が終わった処で、クレアから包みを差し出された。


「わ、わたしにですか!?い、頂いて、良いのでしょうか!?」

「はい」


カイル以外の人からプレゼントを貰うとは思ってもみなかったわたしは、

クレアと包みを何度も見てしまった。

わたしは恐々それを受け取り、包みを開く。

出て来たのは、小花柄の布で出来た、うさぎの人形だった。


赤いボタンの目、刺繍糸で縫われた鼻と口、だけど、表情が見えてくる様だ。


「か、かわいい!!」


わたしは玩具や人形と呼べるものは一つも持っていなかった。

この世界は子供の自立が早いので、

そんな物は無いのだろうと思っていたけど…

まさか、こんな可愛い人形が存在したなんて!!


「僭越ながら、私が作らせて頂きました」

「クレアが!?」


天才ですか!??と叫びそうになったのは、なんとか飲み込んだ。


「うれしいです!!大事にします!!クレア、ありがとうございます!!」

「気に入って頂けて良かったです」

「こんな素敵なお人形が作れるなんて…クレアは凄いです!」

「今度、お教えしましょうか?」

「いいんですか!??是非お願いします!!」


わたしは半泣きでクレアの手を両手で握ったのだった。

人形を眺め、抱きしめる…何度も繰り返すわたしを、

クレアは優しく微笑んでいた。



使用人が代わってからというもの、

昼食は食堂でカイルと二人で取るのが習慣になっていた。

食堂で会うと、カイルはわたしの装いにさっと目を通し、

「姉さん、良く似合っていますよ」と褒めてくれた。

相変わらずカイルは卒が無くスマートだ。


勿論普段はそんな事は言わない、

誕生日の特別な装いだと分かったからだろう。

カイルから貰ったリボンを着けるのは去年の誕生日以来でもある。


「ありがとうございます」

「もっと着けてくれたらいいのに」


カイルが指先でリボンを揺らした。

カイルは余程リボンを気に入っているのか、その目は優しいというか、甘い?

気恥ずかしさを覚え、わたしはさっと席に向かった。


「そ、それは、勿体ないので!特別な日だけなのです…」

「勿体ないですか?」

「色褪せたりですね、するのです…」


話しつつも、カイルの引いてくれた椅子に座る。

こういう事に怯まなくなってきているのが不思議だ。

前世の記憶は自分の内にまだあるが、

段々とこの世界の人間になってきている気がする。



「今日はセシリア様のお誕生日ですので、お好きなものを用意しております」


配膳をするメイドに告げられ、わたしは驚いた。

自分の為に、こんな事をして貰うのは初めてだ。

自分が頼んだ分けでは無いが、何か申し訳ない気分になってしまう。


「あ、ありがとうございます…こ、こんな事までして頂いて、

その、大変恐縮です…」


あたふたとお礼らしき事を述べていると、隣でカイルが小さく噴いた。


カイル~~~

笑ってないで助けて欲しいですぅ~~



「姉さん、お誕生日おめでとうございます、僕からはこれを」


カイルは綺麗に包まれた小さな箱を、わたしに差し出した。

「ありがとう」と受け取り、包みを開く。

箱を開けると、小さな石のピアスが現れた。

キラリと光るそれは、光の加減で青にも緑色にも見える…

不思議だけど、懐かしい気がした。


「綺麗…カイルの瞳みたい…」


だから、懐かしく思うんだろうか?


「…気に入って貰えたでしょうか?」

「はい!とっても素敵です!カイル、ありがとうございます!」


これなら普段着けられそう!と思っていたら、その場でカイルが着けてくれた。

前世でもピアスはした事が無く、穴を開けるのを想像しビクビクしていたけど、

チクリともせず、それはわたしの耳に収まった。

自分では見えないけど、カイルが満足そうにしていたので、

この場は良し!としておいた。



その後、わたしはカイルを部屋に誘い、クレアから貰った人形を披露した。


「どうですか!?この可愛い子はクレアが作ってくれたのです!

この愛らしい目がなんともキュンキュンします!!ああ~~~可愛い!!」


うさぎの人形を抱いてはしゃぐわたしを見たカイルは、

緩い目で零したのだった。


「姉さんには、ピアスはまだ早かった様ですね」




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