魅了はチャーム言いまんねん
わい、ネーブルはなんや困ってまんねん。
@短編93
たらし言われんねんけど、ちゃうー。
この腕輪、見てみぃや。
チャームっつーねん。
魅了ダダ漏れ、垂れ流しやねん。
これのせいで、誰彼わいにひっついて来んねん。しかも・・男ばっかや!!
なしておなごやのーて、男ばっかやねんな。そや、厄介この上ないのですわー。
この腕輪をつけたのが誰かはわからんねん。
ワイが3歳の時にはあってん。この腕輪、ワイが成長する度に大きゅうなんねん。
だから生活するのには困ったことはあらへんのやけど、この効果には閉口するわー。
「ネーブル・・」
うわ。学園の堅物と言われた生徒会長が、目に・・ハートが!!
こいつまでやられたかぁ!!
わいはそろそろと後退・・
「いやどもー、生徒会ちょー、じゃ!!」
「あ、待ちたまえ!ネーブル!」
待てません待てませんー!魅了瞳になっちゃってまんがな!
こうなってまうと、もうあかん。
わいに溺愛状態になってんですわ〜。
女の子ならまだええねんけど、会ちょー男でっせ!いやじゃあ!!
「待ちたまえ!」
「ひええええ」
スポーツ万能でしたわ、会ちょー!うわああ、捕まる捕まる捕まる・・・
手が伸びて、襟首をガシッと!
「ぐえええええ」
「ふふ、捕まえた」
メガネがキラっ、鬼畜メガネな笑みでわいを見てるわー。いややわー。
抱きしめ、ぐええええ・・絞める力が強いでっしゃろ!
「会ちょー、堪忍やぁ〜〜」
「離せば逃げてしまうだろう?」
「わい男!男やねんからーー!!」
会ちょーの唇が、接近、第一インパクト寸前で、何かの力でわいは解放されてん。
ぽてっと地面に崩れ、よろよろ立ち上がると目の前に人影。視線を下から上に・・・
あ。
会ちょー以上に厄介な、騎士団長子息のサイラス・・やっぱし、魅了瞳やん!
会ちょーは細マッチョだけど、こいつはほんまもんのゴリゴリマッチョやねん!!
抱きしめられたら、きっと死ぬ。わい、もやしとかそうめんとか竹籤言われとんのやで?敵わんわ!
だがわいはこいつよりも俊敏なんや。足の間をシャッとすり抜け、猛ダッシュ!!
女の子はわいに近こう寄って来いへんねん。ホモって思われてしもてん。とほほ・・
他にも有象無象に追いかけられ、わいの学園生活はもうやってられへん〜〜。勘弁してぇや・・
ホンマ、マジ、やってられられまへん〜〜。
もうこの腕輪、なんとかせんと、まずいことになる、いやもうなってまんがな。
ついに15歳の夜。わいは決心した!!
おとんおかんに書き置きを残し、わいは腕輪を外す旅に出たっ!!
そして獣道を歩き続け(人が通る道は面倒が起きると思ったんや)、王都にやってきたわいは、魔道具屋や工房を周り、腕輪を見てもろたんや。
女主人の店をメインにな。だって、おっさんに言い寄られたないやん?
王都はやはりおっきい店がぎょうさんあるでな、女主人の店もあちこちにあってん。
「まあ。魅了特化なのね」
数件目の魔道具屋で、ついに話が分かるおばはん、あ、おねえちゃんの店にたどり着いたんや!
「今おばはん言いましたよね?」
うわっ!怖っ!えげつないオーラが、見えまんがなーー!!
「いや?綺麗なお姉ちゃんや言うてましたやろー」
ふう、あぶないあぶない。
で、おねえちゃんが言うには、この腕輪には強力な魅了の魔石がごっつう仕込まれてるようでしてな。
しかも複雑な術式で、人間の男にモテるようになっているとか。
特定の女の子なら嬉しいアイテムかもしれへんけど、わい男やで?うれしゅうあらへん。
「なあ、おねえちゃん。これ、はずせへん?」
「うーーーん・・・成長して手首が大きくなると、それに合わせて大きくなるんでしょう?凄い仕掛けだわ・・・継ぎ目も無いし。金属切断用の工具でもびくともしないし、酸にも強いから溶かすことも出来ないわね。もっと詳しく調べてみなくちゃ私にもわからないわ。そうだ、知り合いの錬金術師に来てもらいましょう」
「女性でお願いしますっ!!」
「そうだったわね。うーーーん・・・男はやばいのよね?」
「はい!!そうなんや。男だと・・ホント、マジやばい」
「了解〜」
「ほな、頼みまっせ」
わいはその日は女将はんが経営する宿屋に宿泊、翌日昼まで籠っていることにした。
不用意に街を歩くとな・・・おにいちゃんやおっさんたちにナンパされちゃうから。ホンマ、マジ勘弁や。
さて、約束の時間に店に行くと、おや?お客さんでっか?
わいと歳格好が同じくらいの女の子がいてましてん。
「こんにちわー、おねえちゃん。来たでー」
「ああ、ネーブルくん。今接客中だから、そこに掛けて待ってて」
やっぱお客さんやったんか。じゃ、待たせてもらお。
わいは入り口側にあるテーブルセットの椅子に腰掛け待つことにしたんや。
ぼんやりと店内や接客するおねえちゃん達を見ていると・・・女の子がわいの方を見て・・
「ああっ!!あんた、その腕輪!!」
いきなりわいの腕輪を指さして、ずんずんとこっちに近寄って来てん。
「な、なんでっか、いきなり」
「それ!わたしのっ!!」
「はぁ?」
「魅了の腕輪!!わたしのなのよっ!!返してっ!!」
「わいのですがな・・・ちっこい時から腕にはまっててん」
「わたしが填めるはずだったのよっ!!なんであんたが填めてるかは知らないけど・・返してっ!!」
「い、いだだだぁっ!!なにすんねん!!」
女の子・・いや、クソアマは俺の腕から腕輪を強引に抜こうとしやがったけど、そんなん抜けるわけないやん。
今まで散々苦労したのに、すぐ抜けるとかないわ。
「この腕輪はわいの腕にオーダーメイド並にくっ付いてんのや!強引に取れやしません!!」
「・・・手首を切ったらいいじゃん」
「え」
「ひえっ!何言いまんねん!!」
お店のおねえちゃんも呆然。わいはタマヒュンや。
クソアマ、怖い雰囲気になってきましたで・・・本人笑うてるつもりやろが、目がマジ怖い!!
うお?いつの間に手にナイフ持ってんねん?!
「あかん、おねえちゃん危ない!!」
わいはおねえちゃんの腰をかき寄せ、急いで下がった。
ざく、と椅子の生地が裂けた!マジか!!斬りつけよったで!!怖っ!!
ああ、おねえちゃんガタガタ震えてるわ。そら怖いわ。わいも怖くてちびりそうや。
とん。
かしゃん・・
「大丈夫?ミレイさん」
男前な兄ちゃん、登場!
手刀でクソアマの手首をとん、手に持っていたナイフがかしゃんと落ちた。
「あ、ありがとう・・ああ、ネーブルくん、この人が錬金術師のワブルさんよ。腕輪のことを調べてもらう為に呼んだの」
あ!腕輪!!そうや、兄ちゃんはやばい!!
わいが慌てると、兄ちゃんは笑った。
「大丈夫。防御結界を張っているから、すぐには効果はないよ。でもこれは・・・強力だね」
いつの間にか兄ちゃん・・ワブルはんはクソアマを魔法で捕縛、お口もきけなくしてしもてん。
わあ、有能〜〜。にいちゃんハンサムやな〜〜〜。しかもイケメンやん〜〜〜。
惚れてまうやろ!!・・なんちゃって。
ワブルはんは腕輪にいくつかの術を当てて、う〜〜〜んと唸って。
「さて、ちょっと我慢してくれよ」
「え?痛くするん?」
「いや、痛くなるかもしれないからな。どう作用するか・・いくよ」
机の上に魔法陣が広がり、そこにわいの腕を置いて。
「じっとしててくれよ」
「・・・ひゃあ?なんか・・・熱い・・?」
ワブルはんの手には、3センチほどの魔法石が握られとって、それをわいの腕輪に当てとんねん。
「熱いか・・もうちょっとの辛抱だからな・・・」
「わあ、熱いわぁ・・」
「我慢、しててくれな。あともうちょい」
「痛っ!熱い!!」
「あと・・・もうちょい・・・・よし!」
ぴき、という音と共に、わいの腕にあった腕輪にヒビが入ってワブルはんが腕から外してくれてん。
「う、うわああ!外れたわ!」
「よかったな。でも、少し火傷負っちゃったね。ほれ・・回復」
魔法で傷も治してくれるなんて凄いわ〜。
「じゃあ、代金代わりに腕輪もらっていい?研究したいから」
「ええで!ほんま、ありがとう〜」
「よかったわね!ネーブルくん」
3人できゃあきゃあ喜んでたら、あのクソアマ捕縛をいつの間にか外してて、テーブルの腕輪をパクってん。
「あ!こらなにパクってんねん!」
「だからこれは元々あたしのものだったんだって!それがどういうわけか、あんたのところにいっちゃってただけだから!返してもらうわよ!」
そしてさっと自分の腕に嵌めようとして・・
「その腕輪はもう君を認識しないよ」
ワブルさんがクソアマの腕を掴んで、それを止めた。
「もう十年以上他人の腕にはまっていたんだ。魔効果も君の腕では発動しない。諦めるんだな、聖女殿」
「せ、聖女、殿ぉ〜〜?」
わい、思わず間抜けな声を出してしまったわ。
こんな聖女要らんわぁ〜〜。しかも魅了の腕輪やで?何に使うねん。
「あ、もしかして信者勧誘に使うん?」
「何言ってんのよ、このあほんだら・・・」
えー。あほんだらって言うん?
聖女ってこんな下品なん?イメージ壊れたわぁ。
「もっと上品な女性だと思ってたわ・・聖女って」
「あら〜、お姉ちゃんもそう思うん?わいもや〜」
「神殿ではちゃんとしてたんだけどなぁ。今までよく猫を被っていたな、褒めてやる」
わい等でぶーぶーイチャモン付けてたら、クソアマ聖女が般若の形相で食って掛かってきってびっくりした〜。
「うっさいわねっ!『ホーリーエンジェル・チャーム』ではそれを填めて生まれてくるはずだったのよっ!だから聖女に覚醒するのも遅れて・・悪役令嬢のエトワールに攻略対象のミヒャエルは取られちゃうし、聖女の仕事も初めから転けっぱなしだし、護衛騎士のランドもどこぞの令嬢とすでに良い仲だし、天才科学者のイーノも留学に行っちゃってるし、魔族のジャックもちっとも攻めいて来ないし、隣国の宰相の息子フランクも結局留学して来ないし、わたしの攻略計画が全部おじゃんなんだから!」
え・・・・?
わい等は・・・ぽかーーーんですわー。
このクソアマ聖女が何を言っているのかがさっぱり分からんかってん。
なにその『ホーリーなんちゃら』って。
あらら、ワブルさん、手ェ震えてますわ〜。怒りを押し殺してるって感じですのん?
「エトワール・ビィガン公爵令嬢を悪役とか・・王太子様を名前呼び・・ランド・デライト侯爵、イーノ・ナライア伯爵、隣国の宰相様の御子息であるパットリオ・オージー公爵を敬称無し、名前呼ばわり・・・さらに、魔族?なんと・・なんと!」
錬金術師で一代子爵のワブルさん、呆然としてます〜。マジ不敬罪ですわ。
しかも魔族の名前を出してまっせ!拙いですまないんちゃう?
その後はクソアマ聖女は再びワブルさんに捕縛され、警備兵に連れてかれましてん。
さて、その後やねんけど・・
わいは学校に戻って、平穏な日々を送っていまっせ〜。
あれほどくっ付いてきた男どもは、申し訳なさそうにしてるけど、そこはわいは心が広いもんで!
許してやってますわ〜。
あんな凶悪な腕輪じゃしゃーないって事で!
さてあのクソアマ聖女ですが、結局腕輪は使えなかったそうで、聖女の力も期待ほどなかったから解雇やそうで。
王太子様達への不敬罪もあって、どこかの修道院に連れてかれたそうですわ。
なんでも、影で王太子様の婚約者であるエトワール嬢を虐めていたこともバレたんだそうですわ〜。
あんな聖女要らんわ、全く。ナイフ振るう聖女とか。ないわ〜。
まだはまってる感覚が抜けない左手首やけど、わいの話はこれで終いや。ほな。
関西弁久しぶり。3歳までしかおらんかったから?色々変だが許してちょ。
次は名古屋弁で行こか。
短編だけでも90ある。笑う。