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王都最後のダンジョン


「時間を無駄にしたな」


 勇者達のせいで、浪費をしてしまったが、逆に、あいつらのお陰で希望も見えた。


「この街に残る宝は一つ」


 それは三つある宝の中で、俺が最も欲しいと願っていたものだ。


「あれは、戦えない俺ではどうしようもないかと諦めていたんだが」


 ここの最奥に待つのは、魔獣型【自動人形オートマタ】。通称ゴーレムと呼ばれるモンスターだ。

 こいつは、攻撃力が低く防御、体力が高いという、タンクには千日手になってしまう最悪の敵。

だが。


「【反撃カウンター】があれば話は別だ」


 このスキルなら、攻撃力が低い相手は、どれだけレベルやその他ステータスが高くても関係ない。


「これがあれば、ゴーレムも倒す事ができる」


 拳を握りしめ、目的の宝が眠る、とある屋敷へと歩を進める。


「行くぞ!」



「こ、これは……思った以上に凄いな」


 今俺の前では、凄まじい光景が広がっている。

 骨が丸出しのコウモリのような魔獣、スカルバット。迷宮でも見たマウスラット。その他細々とした雑魚モンスターが、勝手に飛び散っていくその光景。


「初期スキルの【鉄壁】で防御をあげて【挑発】で強制ターゲット」


 そうするとモンスター達は、目の色を変えてこちらへ襲いかかってくる。


「そこから【反撃カウンター】で返り討ち」


 また一匹、スカルバットが弾け飛んだ。


「何もしなくても勝手に魔物が死んでいく」


 元々雑魚モンスターだ、どれだけ倒しても、そこまで経験値にはなってないだろう。

 それでも、目の前の光景は……なんかこう、哀しくあるものがある。


「前回の俺の苦労はなんだったんだ……」


 あの時の世界で、【反撃】を手に入れていたら、もっと楽が出来ていたに違いない。

 そう考えて、前回の自分の境遇に軽く眩暈がする。


「お、早速審美眼の効果が出たぞ」


 そうやって屋敷内を散策していると、とある壁で、左目につけていたモノクルが反応した。


「これは、隠し通路だな」


 ただ歩いていたのでは決して見つからないであろう、ただの壁。

 しかし、モノクルはそんな壁にレンズを赤く色づける事で反応している。

 壁を押し込むと、ズ……ズズ……。と奥へ引っ込んでいった。


「下に続いている……」


 そこには、人一人がやっと通れるかであろうスペースに、地下へと続く階段があった。


「ここより下の空間なんか知らないが」


 そもそもここは三階建ての豪邸だ。今は魔獣の住処となり、誰も住んではいないが。


「前回では見つけられなかったアイテムがあるかも知れない」


 そのために、審美眼をわざわざ手に入れたのだ。ここで行かない手はない。


「下りてみよう……」


 暗く、足元すらおぼつかない階段を、俺は慎重に降りて行った。



「ここは、倉庫か?」


 階段を降りた先には、様々な機械や道具が、雑多に置かれている。

 倉庫というよりは物置とでも言った方が良いかもしれない。


「これは……」


 その中で、一際目を引く物体があった。


 椅子に座り込み、首をカクンと、落としている女の子。

 その体からは、いくつものケーブルが天井へと繋がっている。


「まさか、人型【自動人形オートマタ】?」


 聞いたことがある。ゴーレムなどより遥かに作成は難しく、かつて様々な錬金術師が作成を試み、匙を投げた高難度の【自動人形オートマタ


「こんなのが街の中のダンジョンにあるなんて……」


 そもそも作り上げていた人物がいることにも驚きだ。


「どうやってスイッチを入れるんだろう」


 動くのか、壊れているのかわからないが、それでも興味が勝り、オートマタを調べていく。


「ここか?」


 首筋に、小さなボタンのようなものが見えた。

「お、動いた」


 それを押すと、オートマタから、良く聞き慣れたパソコンの起動音のような響きが起きる。

 その起動音が収まると、オートマタはゆっくりと、顔を上げた。



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