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ダンジョンを目指そう


「急ごう」


 王宮を出た俺は、走りながらとある場所を目指していた。


「まずは、装飾品集めないと」


 レベルもスキルも全て初期に戻ってしまっている。

 そのまま、奴らと居ては、過去の二の舞になるだけだ。


 しかし、俺には知識がある。

 かつての世界で、ダンジョンを巡ってきた、知識という名の力がある。

 これで、奴らに復讐を果たす。だが。


「タンクはまともに武器が使えない、特殊効果を持つ装飾品でそこら辺をカバーしないとなにも出来ないからな」


 そう、この与えられた職業は、その職業の特色が色濃く出過ぎてしまう。

 前回の世界で俺は、武器一本まともに振るうことが出来なかった。


「まず行くのは……都市の地下迷宮。そこの最奥にある経泉の指輪」


 あそこなら、今の俺でも踏破できるはず。

 それに、そこで手に入る指輪はとても重要だ。


「あの時点ではすでに必要ない物だったが、今の状態なら喉から手が出るほど欲しい」


 かつて迷宮に入った時は、既にレベルが六十を超えていたのでその指輪を使う奴はいなかった。

その指輪の効力。それは。


「一歩毎に一の経験値。低レベルだと歩いているだけでもレベルが上がるチートアイテムだ」


 経泉、早い話が経験値が湧く泉、とでも言いたいのだろう。


「まあ、三十を超える頃には必要なくなるだろうが」


 レベルは、上がっていくにつれ必要な経験値も増加していくのだ。

 それでもやはり、序盤のブーストには必要。


「ここだ、地下迷宮」


 街の隅、大きく塀に囲まれた王都の中にあって、最早辺境と言っても過言ではない場所にその入り口はあった。

 こんな場所にあるせいで、前回見つけたのは終盤も終盤。しかも偶然の産物と言ってもいい。


「ここの魔物はほとんどが低レベルだった。タンクの俺じゃあ倒せないが【鉄壁】」


 そう言って、タンクの初期スキル【鉄壁】を発動する。

 全ての職業は、最初の段階でスキルを三つ、所持している。タンクである俺は【鉄壁】【挑発】【援護】の三つだ。


「これで攻撃を喰らうこともない。先に進もう」


 その中で【鉄壁】は、自身の速度を落とす代わりに、防御を二十%増加するスキルだが、その副産物として、弱い攻撃を無効化する。という能力も持っている。

 速度が落ちるせいで時間はかかるだろうが、ダメージさえ受けなければ問題ない。



「まいったな、ターゲットが集まって全員ついてくる」


 少しづつ迷宮を進んでいっているのだが、ダメージはないが、魔物が倒されもしない。と言った問題が発生していた。


「マウスラット」


 そう呼称されている、いわばデカイネズミだ。


「頭痛が痛いと同じ臭いがするよな」


 そんな呟きをしつつ、背後には百匹以上のマウスラットが行列よろしくついてくる。

 ちょくちょく噛み付いてきたり体当たりをかましてくるので、鬱陶しいことこの上ない。


「お、ちょうどいい。ここにトラップがあったはずだ」


 中間ほどまで来たところで、かつてここで油断して、落とし穴に落ちかけた馬鹿勇者のことを思い出す。

 見覚えのある壁を、ガコン、と押すと。


「うん、静かになった。先を急ごう」


 背後にいたネズミたちは、綺麗さっぱり消え去っていた。



「ここだな」


 その後、軽く一時間ほど歩き続けて、ようやく最奥にたどり着いた。


「あれだ、経泉の指輪」


 そこには小さな空間と、中心に指輪が、祀るように置かれている。


「急ごう。この都市にはまだ二つ、宝が眠ってるはずだ」


 余韻なんて何もない。ひったくるようにして指輪を取ると、すかさず自身の右手の人差し指へとはめる。

 そうして、早く迷宮を出ようとした時、頭の中に、電気が走ったような感覚が起きた。

 これは。


「あれ?レベルが上がった」


 懐かしい。十レベル到達ごとにある、スキル獲得の感覚だ。

 レベルは本来、王城で見た水晶でしか調べることは出来ない。しかし本人にだけ、確実に、このレベルだ。とわかる瞬間がある。


 それが、十レベル毎に起きるスキルの獲得。

 しかし、いくらなんでも早すぎる。まだ指輪をはめて数歩も歩いていない。


「もしかして、あの時のネズミ達の分も入ってるのか」


 百匹以上を一網打尽にしたのだ、その可能性はある。

 その分の経験値と、今はめた指輪の効果でちょうどレベルが上がったのだろう。


「だとしたらありがたい」


 そう考えて、目を瞑り自身の中に眠るスキルを確認する。



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