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第一回マスター会議


「話をまとめよう」


 あの後、しばらくは騒ぎが続きようやく静かになった。


「……はい」

「ふむ」

「はーい」

「はぁい」


 各者各様な返事を聞きながら俺は一番の問題となる議題を持ち出す。


「ラミアは、本当についてくるのか?」


 問題は、これ。騒動の原因でもあるラミアの事。


「勿論ですよう。私の旦那様なんですから」


「違います。私のマスターです」


「落ち着いてくれミオン……」


 このままではさっきの二の舞。話が進まない。


「……はい」


 しょぼんと元気なく返すミオン。悪いことをしてしまった気になる。


「しかしあれだのう。急に変わりすぎて洗脳みたいで、我はあまり好かんぞ」


 それは、俺も感じている事だ。

 あまりにも激変しすぎて戸惑っている。


「違うわぁ。マスター権限はあくまで、裏切ってはいけないと言う意識を植え付けるだけだもの。この好意は私の純粋な気持ちよぅ」


 そう言って、ラミアは俺の頬を撫でる。こそばゆいので止めて欲しい。


「魔王に対して好意はなかったみたいだから……それは分かるが」


「そうねぇ。支配が解けた今となっては、どちらかと言えば憎い部類に入るかも知れないわねぇ」


 声からは憎しみなど微塵も感じないが……。ラミアの年長者としての余裕が、そう見せているのかも知れない。


「そんなものなのか」


「そうよぉ」


 それよりも、一つ彼女らにお願いしたい事がある。


「あの……」


「なぁに?」


「お前達、離れてくれないか?」


「「「……」」」


 今俺の四方は、頭上にラミア、左腕をリーラ、右腕をミオン。そして、膝の上にロロ、と完全に包囲されている。

 今までも周りを囲まれてると感じることが多かったが……これぞ完成形と言っても過言ではなさそうだ。


「あらぁ?」


「この人が離れるまで、嫌です」


 ミオンはラミアを指差し、そんな事を言い。


「我はまあ、ノリという奴だ」


 リーラの真意は読めないが、ノリなら離れて欲しい。


「ここはロロのものだよ?」


 うん、そうだね。俺の膝はロロの所有物だ。


「……」


 とまあ、こんな感じ。


「話が進まない……」


 先程から、この状態でずっと固定されている。


「とにかく、私は反対です」


「どぉして?」


 ミオンは不思議と、ラミアを敵対視している節がある。

 姉妹なのだから、仲良くして欲しいものだが。


「それですよ、それ」


「? これぇ?」


 指さす先は、蛇となっている下半身。


「そんな足で、どうやって街を歩くんですか」


「まあ、確かにそれでは魔物のようにしか見えんのう」


 リーラも加わり、ラミアの形勢不利かと思ったが。


「大丈夫よう?」


 そう言って、蛇の部分が割れ、足が現れる。

 蛇だった場所は短くまとまり、蛇柄のチャイナドレスのような服に変わってしまった。


「人型になれるのか……」


 ミオンと言い便利だな、オートマタ。


「あっちの姿の方が強いんだけどねぇ。私の武器は速度だから」


 尾を使った跳躍は、確かに脅威だった。


「もしかして、ミオンも何か動物の姿になれるのか?」


 ふと聞になって問いかけるが。


「なりません」


 食い気味に否定される。なんか不機嫌。


「あ……そうですか」


 つい、敬語で返してしまった。最近ミオンに頭が上がらない気がする。


「旦那様をイジメちゃダメよぅ?」


 上から、ラミアの手が頭を撫でてきた。

 みんなを撫でることは多いが……撫でられるのは新鮮な気分――。


「痛い! ミオン痛い!」


 俺の腕をつねるのは止めてくれ!


「デレデレし過ぎです」


 むすっとしているミオンは可愛いと言える。俺の腕をつねりさえしなければ。


「そう思うならもう少し優しく……」


「私はいつも優しいですよ?」


 いつもっていつだろうか。夢の中かな?


「ソウデスネ」


「なんですか?」


「いや……」


「旦那様も苦労性ねぇ」


 俺たちのやり取りを、微笑ましそうにラミアは見ている。


「癒されたかったら、いつでも相手するわよぉ?」


 あ、相手って……。

 想像し顔を赤くしかける俺に。


「マスターには必要ありません」


「主には不要だな」


「ご主人さまはロロのものなのー」


 三人はすっぱりと切り捨てた。


「……お前たちもしかして打ち合わせとかしてるの?」


 なんでこんな時だけ息が合うのか不思議でならない。


「とにかく、これで私が行くことに問題はないわよねぇ?」


 人型になったラミアが、三人を見つめ同意を求める。


「……」


「我は構わないぞ。目の届く場所にいた方が、安心だからな」


「ロロもー」


 ロロは何も考えていない様だが、リーラは恐らく、まだラミアを信用して居ないのだろう。

 だから、監視の意味も込めて同行を許しているのだ。


 返答がないのは、ミオンだけ。


「ミオン……」


「別に、良いですよ」


 俺の瞳を見つめるミオンは、湿っている様な気がする。


「ただ……」


 そして、締め付ける様な力ではなく、寄り添うようにくっつき。


「マスターと、一番最初に出会ったのは……私です」


 頬を染めながら、そんなことを言った。

 ……全く。いつもこれだけ素直なら、可愛いのにな。


「あらあらぁ♪」


 それを見ていたラミアが、ようやく俺から離れたかと思うとそのままミオンに近づく。


「え、え?」


「可愛いわねぇ」


 戸惑うミオンを意にも返さず、抱きしめるラミア。


「は、離れてください!」


「旦那様も良いけど、可愛い子も私は好きよぅ?」


 何故か、唐突な百合が目の前で展開されている。


「お前たちは姉妹じゃないのか」


「可愛いは正義って言葉、知らないのぅ?」


 ミオンに頬擦りをしながら、うっとりと語るラミアに。


「この世界にもあるんだな……そのセリフ」


 そんな事を思った。


「話はまとまったか?とりあえずここを出ようぞ、主よ」


「そうだな」


 いつまでも、ここで喋り続ける訳にはいかない。一度出てから、再度話合いを――。


「……」


 立ち上がろうとするが、両腕は相変わらずミオンとリーラに掴まれている。


「いや、だから」


 膝にも、未だロロの姿。


「離れてくれ!」


 リーラに関しては、帰宅を提案した本人なのだから率先して離れるべきじゃないのか?


 ……それから、俺が立ち上がることが出来たのはおよそ三十分後の事だった。



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