新しい仲間
あの後、落ち込む二人に何度も説明を繰り返し、ようやく落ち着きを取り戻してくれた。
……未だジト目でこちら見つめるミオンを見るに、信用はまだ勝ち取れていないような気がするが。
「……それで、なんでお前がこんなところにいるんだ?」
しかしこれでようやく、紫龍の事を聞くことができる。
「何を異なことを」
そんな紫龍は、変な事を聞くな。と言う表情をしていた。
「お主は昨日、我と契約を交わしたではないか」
「契約って言うか……まあ約束したな」
お互いに裏切らない。だったか。それと何が関係するのか。
「うむ」
頷き、説明終了。とばかりに言葉が止まる。
いやいや。
「……で?」
それでは何の説明にもなっていない。
「で? とは?」
「いや契約したら、何で朝からお前が待っているんだ?」
契約内容に、人間の姿になった紫龍に会える。何て一言も聞いていないぞ。
「お前と共に行くからに決まっておろう」
「……何の話だ?」
また、知らない話が出てきた。
「我は昨日の報告を放棄した。その時点で裏切りは露見しておる。探されることは無いであろうが、念の為四天
王から雲隠れする必要があるのだ」
……うん。
「まあ、それはわかる」
万が一見つかっては、計画は意味をなさず、下手をすると俺にも危険が及ぶ可能性があるだろう。
そう言う意味で、隠れると言うのならまだ理解できるが……。
「龍の姿では目立つのでな。こうやって人の姿をとることにしたのだ。これなら魔力も抑えられて一石二鳥なのでな」
その場でくるりと回り、今の自分の姿を見せつけるようにポーズをとる。
「なるほどな」
「だから、お主達について行く」
だから何故そうなるんだ。
「そこが分からないんだよ……」
大人しく隠れている方が、一番安全では無いのか?
「ふむ? バラバラに行動するよりは、事情を知っている者同士が一緒にいた方が都合が良いではないか」
隠れていては、どちらかに危険が及んだ時、気づくことがなく、万が一気づけても助けが間に合わ無い、か。
「……確かにな」
紫龍の発言は、一理ある。
「異論はなかろう?」
これにはもちろん、デメリットもある。
俺はこれから多くのダンジョンを周る為、行動範囲が広がることになる。動き回れば、その分紫龍が見つかる可能性も上がるだろう。
だが。
「……仕方ないな」
お互いが監視下であれば、フォローもしやすい、か。
「ふはははは! では行こうか、盟友よ!」
了承を得たのがそんなに嬉しいのか、一気に上機嫌になる紫龍。
それにしても。
「その呼び方はどうにかならないか?」
行く先々で、固有名詞が盟友盟友では注目されるだろう。ただでさえ紫龍は顔が良いのだし。
「ふむ、盟友は嫌か」
「嫌って言うか、目立つだろ」
この世界に来て大分経つが、他人を盟友と呼ぶ者に会ったことはない。
「なるほどな」
紫龍は腕を組み、思案する。
そして、背後に控えていたミオンに目線を移す。
「お主、先程あの自動人形にマスターと呼ばれていたな」
「? ああそうだな」
それを確認すると、彼女はニヤっと口角をあげ。
「では我は、主と呼ぶことにしよう」
そんな突飛なことを言い出した。
「……理由を聞いてもいいか?」
「主のような男が、見目麗しい美少女三人も侍らせるのだ。従者と称してこちらで呼ぶ方が自然であろう?」
……今、自分で美少女と言い切ったな。
「自然かも知れないが、変に悪目立ちしそうなんだが……」
女性を何人も連れ歩き、主やマスターなんて呼ばせている。……誤解の果てに後ろ指を刺されるのは勘弁なんだが。
「では何か、代案があるのか?」
そう問われるが。
「……」
良い案は浮かんでくれない。
「うむ。では、主で決定だな!」
何故か楽しそうに宣言するを紫龍。
「プライドの高いドラゴンとして、それでいいのか?」
昨日は魔王の元についてるのが気に食わない。と言っていた気がするが。他者を主と呼ぶのには抵抗がないのか?
「別に問題はないぞ。我は主を気に入っているからな!」
あっさりと認めた。こいつの判断基準はどうなっているんだ。
「ああ、そう」
こいつがそれで良い。と言うのなら、俺にはもう何も言えない。
「マスター。そろそろ移動しないと、町人達が起き出してしまいます」
紫龍の登場で、出発が大分遅れてしまっている。幸い、誰もまだ起きてはこないが、このままではいつか見つかってしまうだろう。
「……そうだな」
急ぎ町の出口に向けて歩き出す。
「とりあえず、話は道中でしよう。急いで出るぞ」
「はい」「はーい」「うむ」
三者三様、元気な返事で結構なことだ。
「随分……大所帯になったな……」
何でこんなことになってしまったのか。
自分の胸に聞いてみるが、心当たりは一向に思い付かない。
「……そう言えば、お前のことはなんと呼べば良いんだ?」
隣を歩く紫龍に問う。まさかこれから先、紫龍とそのまま呼び続ける訳にも行かない。
「ふむ、主が決めてくれて良いぞ。それが我の名前となろう」
「……そうか、じゃあーー」
思考を巡らせる。紫龍、紫……。
「……リーラ。それで良いか?」
俺の提案した名前に。
「リーラ、か。リーラ」
呟きながら何度も小さく反芻する紫龍。
「うむ! 気に入った! 我はこれからリーラを名乗ろう。存分に呼ぶがいい」
どうやら、お気に召してくれたようだ。それはいいが。
「何で無駄に偉そうなんだ」
「ははは!」
何がそんなに楽しいのか、リーラはしばらく笑い続けていた。




