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龍、討伐


 町の中心。そこでは男の獣人達が集まり、上空にいるドラゴンに剣や槍などを向け騒ぎ倒していた。

 恐らくドラゴンの注意を自分たちに向け、その隙に他の住人達を避難させる算段なのだろう。……あまり、効果が出ているように見えないが。

 そんな場所に、俺は一人、歩み出す。


『おやおや、ワシは魔王様に獣人の国を適当に一つ潰してこいと言われたはずだが……』


 突如現れた人間の俺に、ドラゴンは当然のように反応を示した。


「……」


『何故人間なぞがおるのだ?』


 そんなドラゴンの問いかけを無視し、更に歩みを進める。

 少しでも、あいつに近づくために。


「……」


「何してんだ人間の兄ちゃん! ここは俺たちに任せて早く避難するんだ!」


 そうしていると、背後から誰かに肩を掴まれた。


「……」


「お、おい!」


 それを無言で払い除け、更に、進む。


『クハハハハ! 誰かは知らんが、随分怖いもの知らずな奴がいたものだ!』


「……れ」


 ドラゴンは耳障りな声で、機嫌良さげに笑っている。……うるさい。


『ワシが、魔王軍十二使龍が一柱だと知って近づいておるのか?』


 十二使龍……確か四天王に従って働いている十二体のドラゴンのことだ。要するに四天王以下の雑魚、と断じて良い。


「……まれ」


 ドラゴンの真下にまでやってきて、俺はようやく足を止めた。


『ん? なんだ。今更恐怖で震えてしまったのか? クハハハハ!』


 それを恐怖で止まったと勘違いしたのか、先ほどよりも更に大声で笑い出す。

 近づいたせいで、その声はより大きく聞くに堪えないものとなる。


「黙れって言ってるんだよクソトカゲ。頭上からピーピー喚くのがテメェの力なのか?」


『なっ!?』


 俺の挑発に、ドラゴンは面食らったような声をあげた。


「おい! 何無駄に挑発してるんだ! お前は何をしているのか……」


 先ほど俺を制止しようとした声が、再度聞こえる。振り返るとそこには、若い獣人の男が一人、立っていた。


「……巻き込まれたくなかったら、離れていろ」


 そいつを睨み、警告をする。ここに居ては、どんな巻き添えを食うか分からない。


「あ、ああ」


 それだけを呟き、男は俺から離れて行った。



 ドラゴンは、生物の中でも最上位の存在と言っても過言ではない。事実、魔王に敗北をし支配されるまでは、奴らが世界の頂点だったはずだ。

 そんな、最強の種であるため傲慢な性格をしている奴らには一つ、弱点がある。


『貴様ぁ……貴様はぁ! 楽に死ねると思うなよ!』


 煽り耐性が、極端に低い事だ。


『その身が焼け焦がれ、死の瞬間まで自身の愚かな発言を悔い続けろ! 炎の吐息フレイムブレス!』


 ドラゴンの口へと魔力が集まり、高火力の炎が真下にいる俺へと襲う。

 先程まで調子良く吐きまくっていた炎とは、明らかに火力が違う。


「……もし、このスキルを直前に手に入れてなかったら、俺は死んでいただろうな」


 眼前へと迫る膨大な大きさの炎に、それでもなお、俺は不敵に笑ってみせた。


「ミオンを傷つけたお前に対し、復讐を誓いながらも逃げるしかなかっただろう」


 しかし、今の俺は違う。こいつを倒す手段を、持っている。


「【鉄壁】……そして【絶対防壁】」


 そう、どれだけ体力が減ろうと、防御を突破されなければ意味がない。スキルの効果により、自身の肉体がより一層強固になった事を実感する。

 そして。


「死ぬのは、お前だ赤龍! ――【反撃】!」


 十二使龍が一匹、炎を司る赤龍。そいつが吐く、世界でも最高位と言ってもいい炎を【反撃】により、真正面から跳ね返す! 


『!?』


 自身の攻撃が突如そのまま跳ね返り、明らかに動揺を見せる赤龍に、俺は言葉を返す。


「自身の炎にその身を焼かれ、燃え尽きる瞬間まで後悔し続けろ……自分の愚かさにな」


 動揺しながらも、赤龍は再び炎を吐き【反撃】を掻き消そうとする。

 しかし、最初の攻撃で魔力を消費した反動だろう。明らかに威力が弱い。


『な、なんだ!? なんだ貴様は!』


「今から死ぬ奴に、名乗る必要があるのか?」


 俺の発言に、奴は赤龍の名に相応しく、顔を赤く染めた。


『グッ……ナ、ナメルナァァァァァァ!!!』


 しかし、どれだけ怒ろうと、力もうと、吐く炎の威力は上がらない。


『な、なんだこれは!? 反射しただけの攻撃が、何故ワシの炎を上回る威力を!?』


 徐々に、押されていく赤龍。跳ね返した攻撃は、もう奴の眼前にまで迫っていた。


「……お前が、雑魚だっただけの話だろ?」


『ガ、ガ……』


 とうとう炎は、奴の顔をジワジワと飲み込み。


『グアアアアアアアアアアア!?』


 一瞬の内に全身を飲み込み、赤龍は自身の炎によって灰となった。


「やかましい奴は、死ぬ時までやかましいんだな」


 燃え尽きる瞬間まで後悔しろと言ったが、あれでは時間が短すぎたな。


「……ふん」


 目障りなモノが居なくなり、すっかり綺麗になった空を眺め、俺は一人、鼻を鳴らした。




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