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空白から世界  作者: ぺんかわ きなこ
第一章 異世界軟禁
1/4

エピローグ 『掻き毟る音』



「――――」


悲鳴、悲鳴。悲鳴が聞こえる。

声にならない音が聞こえる。

絶叫。怒り。嘆き。

すべてを合わせ持った世界。

これを『地獄』と言わずになんといえよう。


「た……すけ、、!」


「ひっ…………!」


最早「人」と呼べるものではない、そんな生命体が、自分の脚をつかむ。

べっとりとした、液体の感触。

――――『血』。


「う、…あ!」


無意識的にその手らしきものを振り払う。



――――もう、嫌だ!どこだよ、ここは!!


絶叫したい気持ちを必死に、抑え、何かの建物を見つけた。


―――もしかしたらここに人が。



ほんのわずかな希望を握りしめて、一歩。ぐしゃり。何かを踏んだ。液体と固体の半ばのような…

あ。


「ぁぁああああああああぁああぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


死体。そうとしか言いようがなかった。如何やら先ほど踏んだそれは人の肉らしい。

――だが、叫んだのはそれだけが原因ではない。

広い、広い、体育館のようなこの部屋に。


死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体、死。


無数の肉塊が散らばっていた。そして、半ば無意識に振り返った。ずっと、ずっと無視していた、何かを掻き毟る音。貪る音。死体を。それを、積みに積み上げた『死体の山』の頂上から一人の少女が自分を見下ろしていた。血染めの瞳と交錯する。


「ぁ」


人は、見つめられただけで死ぬ時がある。

血で染められたような髪の紅い少女、否、重要なのはそこではない。

少女の口元は紅で彩られており、そこから意味するものとは…


「――――!」


本能が逃げることを選択する。恐怖という感情が肺腑を満たす。気持ち悪い。気持チ悪イ!それなのに、それなのに……!


――――動け!動けよ脚!!


恐怖故足が動かない。動くことを許さないのだ。

動けない自分と自分を見つめる怪物(しょうじょ)。怪物がとった選択は。


その瞬間、少女は距離を殺した。眼下には少女、否、怪物が。

不気味ににたりと笑っている。


手にはいつの間にか巨大な鎌を握っている。


――あ、死ぬわ俺。


『死』とはこうもあっさりと迎えてしまうのか…

その巨大すぎる刃はゆっくりと否、迅速にそして、滑らかに。

自分の首元に触れた……のだろうか。


――――あぁ、眠い。


微睡の中。俺――(たくみ) 翔太(しょうた)の意識はぶつりと音を立てて消えた。

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