第5話 夢と名前
「貴方の名前を教えて」
スリーと少年の初めての出会いから一週間程が過ぎる頃、スリーが少年の名前を尋ねた。
「いいですよ。僕の名前は黒金彩斗と言います」
「黒金?……この国で名家に連なるあの黒金?」
「はい。その黒金です」
「貴方、名家の出身なら私がどんな存在なのかわかっていたはずよね?なのに何故私を助けた?それに何で家や他に連絡していないの?」
スリーは少年、彩斗の名前を聞き、疑問に思っている事を聞いた。
「ええ、貴方の事は聞いています。ちなみに貴方はこの前の戦いで討伐されている事になっていますね。けど、僕は誰かに貴方が生きているとは報告するつもりはありません」
「何故?私は貴方達の敵よ。多くの人間を手に掛けた」
「僕には貴方がそんな残酷な精霊には見えません。もし、そうなら僕は貴方に殺されていますよ」
彩斗はそれにと言い、
「僕は全ての人と全ての精霊が共に共存する世界を望んでいるからです」
「共存?」
「はい。今は人と精霊が世界中で争っていますけど、いつかは共に歩む世界にできないかと思っています」
「ありえない話ね」
スリーは彩斗の話を聞き、不可能だと断じた。
「ええ、でも、僕はそんな世界を作ってみたいと思っています。貴方は何故と思うかも知れませんが僕はこの森で色んな精霊と出会い、共に時間を過ごし、そして知りました。精霊達も人と共に過ごす世界を夢見ていると」
「……」
「だから、そんな世界を作りたい」
「……そう」
スリーは小さい声でそう言った。
「だから、貴方が生きている事は誰にも言いません。僕はそんな事は望んでいないので」
「わかった。貴方を信用しましょう」
「ありがとう。そう言えば、僕も聞いてもいい?スリーと言う名前は本当の名前?」
「……名前はないわスリーと言う名前は序列三位から取っただけよ」
スリーは自分の名前に疑問を思った事がないようだ。
「なら、僕が名前を新しく付けてもいい?」
「うん。そうだね。……サクラはどう?」
「……サクラ?」
「そう!サクラ」
「……サクラ、私はサクラ……」
どうやら、気に入った様だ。スリー改め、サクラ本人は気づいていないが僅かに嬉しそうな顔をしていた。
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