表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/15

第8話 『名剣の秘密』

 槍の先端にアルペジオの光を反射させてビブラビと対峙するミルコ、光で目が眩んだのか動けないビブラビ、その隙にユウキはビブラビの胴体を駆け上がる。


「うぉりゃ~!」


 壁に刺さった剣まで飛び移りぶら下がり壁に足をついた。

「これを抜いてやる」

 渾身の力を振り絞ったが剣はビクともしない、やっぱりオタクの力はここまでか、抜けないのか、もっと勉強も運動もしてくればよかったな……。


 それを見ていたミーナが俺をバカにし始めた。

「やっぱりユウキにはその剣は似合わないのよ、剣があなたを選ばないのよ、あきらめなさい、このへっぴり腰の腰抜けオタク!」


 思えば今までなんにもしてこなかった、しなかった、平和な日本で暮らし何を目指すでもない高校生活をおくってきた、友達すらいない……この世界に生まれ変わったのも、この出会いも世界も何かの運命だ、ふさぎ込まない諦めないそれが俺のいいところだ!


「誰が腰抜けだ!俺は男になるんだ!ぎゅあ~!」

 さらに力を振り絞り剣を抜こうとする、少しずつ剣が動き始めた。


「うぉー!この剣はもらった!」

 ミシミシと壁から音がする、じわりじわりと剣が抜けていく。

 ミルコとビブラビのにらみ合いは続いている。

 剣は抜けた!


 俺は高く剣をかざしそのまま落ちていく、エメラルド色に光を放つ剣は血に餓えている様にも見えた。


「ビブラビ覚悟!」

 ビブラビの顔を向かって落ちていく、脳天を目掛け剣を突き刺し、胴体を真っ二つにした、剣はそのまま地面に突き刺さる、ビブラビはバタバタとのたうち回る、すると地面が揺れはじめ洞窟の天井からゴロゴロと岩が落下し始めた、危険を感じたミーナ。


「ここ崩れるんじゃない?」


 はっ!と俺はミーナの言葉に促された、地面に刺さった剣を引き抜いた。

「みんな逃げるぞ、ミーナ、アルペジオを宥めて連れてこい!」

「はいはい、アルペジオちゃ~ん帰るわよ~」

 アルペジオはすんなり大人しくなる。


「やっぱりアルペジオはミーナ、お前のロバだな、みんな扉へ向かえ!」


「違~う!ロバじゃない!」ミルコは怒って言い争う。


「この場で突っ込むのそこかよ!ミルコのロバだろ」


「そうだ、私のロ、馬だ」


「今ロバって言いかけただろ!」


「やっぱりロバだ」


「違う!馬だ!」


 のたうち回るビブラビの上に岩石が降り積もる。

 呆れたミーナが間に入る。

「どっちでもいいでしょ、ロバでも馬でもミルコの相棒よ、早く逃げるわよ」


 俺は剣を担いで、ミーナはアルペジオの手綱を引きながら、ミルコはその後ろを走る。

 3人が扉へと走り抜けた瞬間、ビブラビもろとも部屋は埋もれた。


 息を切らし肩を上下に揺らす俺達、アルペジオは大人しくなっている。

「ミーナ、ミルコ大丈夫か?」


「はーい!ミーナは元気でーす!」

 お調子者のミーナは答える。


「私とアルペジオはこの通りだ」

 ミルコとアルペジオはホコリまみれだが落ち着いていた。


「あっけなかったな、そういえば、あの蛇話さなかったな」


「下級魔物は話せないのよ、魔法を使えない魔物は下級の下級、魔物の親分は魔王族のトップ、魔王魔がいて、その下に魔王族幹部がいるのよ」


「魔王族も縦社会なんだな、今度話せる魔物に会ったら聞いてみるとするか」


「何を?」


「どうやったら魔王族に入れるのかをな」


「入るの?」


「そうそう幹部になろうかな!ってばーか、何故魔王族に入ったのかを含めて聞くんだよ魔物の気持ちも知っとかないとな」


「それもそうね、魔物にもそれぞれ心があるものね」


「あーそうだ、とりあえず帰ろう」


 剣のことを詳しく聞きたかったので、俺は家に帰る前に街長の家に寄ることにした。

「街長、この剣のことを詳しく聞きたいんです」


「なるほど、剣に纏わる話を聞きたいと」


「はい、教えてください」


 ミルコは相変わらずアルペジオにニンジンを与えている。

 ミーナは引き抜いてきた剣を触り、鞘から剣を抜こうとしている。

「ミーナさん、待ちたまえ、この剣は伝説のダインスレイブと言って、今は鞘に収まっておるが、ひとたび抜くと誰かの命を絶たなければ、鞘には戻ってくれぬだから抜くときは切りたい相手を見つけてからにすることです」


「えーー恐ろしい!ミーナ今抜こうとしたな!こんな恐い剣持てねーよ」


 それを聞いていたミーナは剣を手から放し机に置いた。

「私には使いきれないわね剣術も知らないし」


「ユウキさん、隣街に腕のいい鍛冶職人がいるからそこでお金に代えるといい、ダインスレイブよりいい剣があるかは分からないですがね、かなりの価値はありますよ」


「そうします売ります、絶対そうします、隣街にはなにがあるんですか?」

 俺は明らかに怖がっている、あれだけの力を出して抜いたというのに……呪いがかった剣を持っているより、普通の剣の方が初心者にはありがたい……


「このダビデの街よりも発展していて、武器も防具ももっと充実しておるよ」


「ミーナの竪琴もそこで買うといい」


「そうします、この前の5000ルイスもあることだし、竪琴と新しい剣を手に入れて旅に出よう、とその前に基本の剣術だけ習わせていただけますか?」


「明日、この街いちばんの剣士を紹介しますよ」

 3人はミーナの家に戻ることにする。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ