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第7話 『ビブラビ』

 街長が話を切り出す。

「大蛇ビブラビの弱点は光と寒さじゃ、洞窟の中は湿気が多くジメジメとして暗闇、そんな場所を好んでおる」


「光と寒さか……ミーナなにかいい方法あるか?」

 なんにも策が思い浮かばないので聞いてみる。


「洞窟ごと凍らせればいいんじゃない?」

 人差し指を自分の顔前に差し出しミーナはこたえた。


「どうやって?」


「分からないわ」


「テキトーかよ!いい案がないなら答えるなよ!」


「ユウキが聞いたんでしょ、だから答えてあげたのよ」

 ミーナは頬を膨らましている。


「あーそうかよ、ミルコはなんかないのか?」


「私の案は光だな、光らせればいい!」

 これもまた人差し指を顔前に出して言うミルコ。


「なにを光らす?」


「自信を持って…分からない!」自信満々の口調だ。


「あーミルコお前もか!わからないなら口を開くなー!」

「お前が聞いたから答えてやったのに」

 こいつも頬を膨らましている、どいつもこいつも何の案も浮かばない奴らばかりだ、俺もそのひとりだがな。



 ずっとやりとりを見守っていた街長が口を開いた。

「以前洞窟を冷やそうとした若者達がいてな、山の上から万年雪を運んで来たことがある、じゃが氷が途中で溶けてしまい失敗に終わったんじゃ、光も試しおった、鏡を使って洞窟奥まで光らせようとしたが届かんかった」


「じゃあ洞窟に太陽光に似たものを光らせればいいんじゃないか?俺に任しとけ!」ひとつ思いついたふりをしてやった。


 ロクな案を出せなかったミーナは

「さすがユウキ、私が見込んだだけあるわ!でどうやって?」

「明日分かるさ、朝日が昇ったら、洞窟へ向かうぞ、あとはそれからだ」




 次の日俺は、ミーナ、ミルコ、アルペジオと洞窟へ向かうもちろんうるりんも一緒だ。


 山は麓からうっそうと木々が茂り、人々の侵入を拒んでいるかのよう、洞窟の入口に着くと、中からは暑い空気と臭い獣臭が漂う。

「くっさ!私無理だわ、ムリムリ!」

 ミーナが鼻を摘まむ……。


 ミルコは平気そうな顔、俺は農業学校で馬の世話をしていたせいか、不思議と鼻につく匂いには感じなかった。


「ミルコお前もか?アルペジオの臭いで慣れてるんだな」


「どちらかというといい臭いだ田舎の香水てとこだな」


「ミルコは田舎者じゃないだろ」


「違うがいい臭いだ」


「ミーナお前はここで見張りをしててくれ」


「いやよ、ひとりにしないでよ、鼻をつまんでついて行くわ、この暗いのはどうにかならないの?」


 俺はポケットに入っているライターの存在を思い出した。

「これで明るくなるぞ」

 シュボッ!と火をつけ、落ちている木の枝に火をつけた。


「その道具は何?」


「ライターて言うんだ、魔法なんて使わなくても簡単に火を付けられる、俺の国では100円で売っている、まさかこれが着火の能力か!レベルアップするとどうなる!」


「ひゃくえん?価値は分からないけど、この国ではそうとう役にたつわね」


 ユウキ達は暗くて松明の周囲だけ明るい道を進む。

 道中コウモリやムカデのような人間の体と同じくらいの大きな生き物がところどころにいる、ミルコがそれを槍で突きながら退治している。

「とりゃー!とりゃー!これくらいは朝飯前だ」


 ゆっくり進んでいく、かなり奥まで来たところで、道がふたつにわかれている。

「アルペジオどっちだ?」


 するとアルペジオが右の穴の方へとミルコの持っている手綱を引っ張る。

「アルペジオがこっちと言っているぞ、役に立つじゃないか」

 そっちに向かうことにする。

 200メートルくらい進んだところで行き止まり……


「アルペジオはやっぱりただのロバだな」

 ユウキはアルペジオに向かって言う。


「ロバではない!馬だ!」


「はいはい」

 ミルコが反論するが俺はスルーし引き返した。



 俺達と1頭は元来た道を引き返す、その間ずっとミルコは大きな虫を退治している。ミーナはというとずっと鼻を摘まんでいる。そして分かれ道に戻りもう一つの道へ、しばらくすると大きな空間に出た、その向こうにはかすかに見える3メートルはある大きな扉。


「あれだ!ダンジョンのボスの扉!とにかく扉を開けなければ」


「開けるぞ」

 俺は扉に手をかける、身構えるミーナとミルコとアルペジオ、ゆっくり扉が開かれる……中は蒸し暑い、そして暗く手で持っている松明の周辺だけが明るいだけで奥まで見えない、じわじわと奥に進んでいく、ズルズルと引くずるような何かがうごめく音がする。


「何?何?イヤよ、近寄らないで、何か触ったわ!」

 ミーナは完全にビビって目をつぶっている、アルペジオがミーナのお尻に顔をこすりつけている事に気づいていない、ビビらしといてやる、俺は黙っておくことにするつもりだったが、おまけにこう言ってやる。


「ミーナ!触ってるのはデカい蛇だ!」


「イヤー!イヤーーーー!」

 顔をこすりつけているアルペジオをおもいっきり蹴飛ばした。アルペジオが怒った、前足で地面をひっかいて興奮している、すると頭の角が白く光り出した、周囲が光で見えてきた、光に反応しミーナは目を開く。

「アルペジオ!?蛇なんてどこにも……」

 蛇は大きすぎて気付かない。


「おそらくビブラビは大きすぎて気づいてないだけだ、周りの壁が大蛇だ!」


「これだ使える!ミーナ、もっとアルペジオを怒らせるんだ!角を光らせろ!」


「怒こると角が光るのね、お手のものねアルペジオを蹴飛ばすわ、うぉーりゃー!!!」

 ミーナは渾身の力を振り絞り蹴り飛ばす。


「私の馬に手を出すな!」

 ミルコが止めに入るも時すでに遅し、アルペジオは憤怒の形相、宥める時も一瞬だったが怒らすのも一瞬だ、するとアルペジオの角が白い太陽のように辺り全てを照らし出す、すると胴体だけでも人の背丈ほどの太さの大蛇が見えたトグロを巻いて

「シャー!」と舌をペロペロと出しながら、牙だけで人間ほどの大きさもある口を開いてこっちを見ている、しかもぐるりと一行の周りを囲っているではないか……


「こいつがビブラビか!」


 その奥の岩壁に斜めに刺さった剣、その柄は黒く鷲をかたどった彫刻、地面からシルバーの剣身が見える。 

 ミーナは大蛇に驚き腰を抜かし座り込む。

「あの剣だ!アルペジオの怒りが収まる前に、剣は俺が引き抜く、ミルコ援護を頼む、ビブラビを惹きつけろ!」


「わかったぞ」


「ミーナはしばらくアルペジオを怒らせるんだ!この光でビブラビは弱っているぞ」

 ミーナはいまだに動けず。


 ビブラビが俺に噛みつこうと襲いかかってきた、ひらりとよけるが背後からビブラビの尻尾が俺を叩く、その瞬間吹っ飛んだ

「うぐ!」

 壁に叩きつけられた。 


「ミーナ俺に回復呪文をかけてくれ!」


「竪琴なんて持ってきてないわ」


「なんでだよ、この役立たずが!」


「だって重いし……」


 すかさずミルコは槍でビブラビを惹きつける。

「ビブラビこっちだ、こっちを見ろ私が相手をしてやる」

 はじめての実践なのに自信満々だ。




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