第1話 『図々しい異世界の少女』
突如とうじょ空中3メートル辺りに現れた六芒星の魔法陣、そこから俺は落ちてきたらしい。
吹雪のようだった暗黒の世界に一点の光、三途の川の向こう側からか俺を呼び戻す声、何も見えない、やがてその声が俺を徐々によびもどす…そして滝壺に落とされた。寒かったのにまだ水のお見舞い……
「溺れるわ!なんで水?ここは……うるりん無事なのか」
一瞬で目が覚めた、頭の先から自分を確かめる、大好きなフィギュアを抱きかかえている。
「よかった生きてる」
死んだと思ったこの体が動いている…生きてる事に安堵し胸をなで下ろす。
目を覚ますと徐々に白黒の世界から色が戻っつつある。
一番に目に入ったのは青い空だ、少し右へ視線を動かすと白い顎髭、白髪交じりの頭、ぼろ布の服装姿、けして裕福ではなさそうな老人がそこに写り込む。
覚醒したのはその老人にバケツ満杯の水を掛けられ起こされた瞬間だ、馬のいない馬小屋らしき前のベンチ、そこで寝かされていた俺はまるで遅刻寸前に目覚めた時のように、ばちっ!と目を覚ました、当たりを見渡すと俺のようにブレザーの学生服を着ている若者はいない、まーちょっとした異世界てとこだ!?異世界!?
「何すんだよ!ここはどこだ?」
突然の洪水のことで少し起こり気味に叫んでしまった。
「冷めてーびしょびしょだよ」
「すまんな~そんな変な人形を抱いて、気を失っていたようだからな、起こさせてもらったよ、ここはダビデの街じゃよ」
俺は日本地図を思い出す、どこかにこんな街あったのか…田美出?駄尾手?聞いたこともない地方の街名を耳にした、ダビデ…地理でも習ったことのないちっぽけな街なのか……
「ダビデ街…俺はどうしてここに?」
俺に水をぶっかけた老人は、なにげに俺の後ろに目をやり指差す、その先にはひとりの少女が……
「村はずれにおぬしが倒れていた、それを孫娘が見つけて連れ帰ってきたのじゃ」
「まご・むすめ?」
振り返るとそこには救ってくれた少女、命の恩人か天使、薄紫髪を団子に束ね、こめかみに少し垂れた髪が愛らしい、紫瞳と薄紫でひらりとしたミニスカートに膝まではあろうブーツ……おじーと娘を見返した、全くの不釣り合いだ、このおじーの孫娘には全く見えない…しかもつるぺただ……
「見たところあなたは旅人ね、この服、センスがなさすぎ」
ブレザーの裾を掴む、ずうずうしくも初対面の俺にあたかもそうでないかのような振る舞い。
「こんにちは私の名前はミーナよ、よろしく、おじいちゃんがここまであなたを運んできたの、あなたの名前は『うるりん』なの?大きな声で叫んでたわよ、うるりんって、変な名前ね」
その生意気そうなミーナは妖精の如くかわいく見えた、どことなく眺めていたフィギュアにも共通する、女子に対しての耐性のない俺は戸惑う。
「どうしてここに居るのかもわからね~けど、俺はうるりんではない、名前はユウキだ、よろしくな」
「ユウキねよろしく」
見たこともない人々、金髪や銀髪、服装は鎧の者から小汚い麻袋を被っただけの者、これは貧富の差か、これが普段着の世界なのか、さらには腰に剣をぶら下げたリザードマン、はたまたデミヒューマンまで闊歩している始末、カラフルな世界を行き交う人々も顔こそは人間が多く見られるが異様な光景、知らない街だ、夢でも見てるのか、おじいのせいで服はびしょびしょ冷たい、感覚はあるな、夢じゃなさそうだ、しかもRPGやアニメで見たような光景と街並み、何世紀も前の中世の街並みを見ているようで幻想的、中世異世界てなかんじだ。
「え?お約束の中世異世界!?」