第11話 『夢想天龍』
「ユウキ様は私が守ります」
そう言い放ったうるりん。
ミルコとムーランが睨み合ってその視線には火花がちる、その中にミルコの顔より少し小さいくらいのうるりんが戦いに加わった、うるりんはミルコの肩まで駆け上がると、電光石火の如くムーランに襲いかかった、まさかもう一人相手が居るとは想わなかったムーランは、思わずミルコと対峙している剣を引きうるりんを剣で交わそうとする、動きはうるりんの方が早かった。
「秘技夢想天龍!ムーランさん覚悟したください」
うるりんの剣が龍の形に紅青く輝きムーランの剣もろとも切り裂いた、その場に膝から崩れ落ちるムーラン、その時ミーナが回復した俺に言った。
「ユウキ、鞘に剣を収めるためにその剣でトドメを刺すのよ」
意識が朦朧としているなか俺は無意識に動いていた。
「ムーランこれまでの悪行と魔王魔に売った魂を後悔するがいい」
俺は剣を突き刺しトドメをさす、ムーランは黒い霧となって消え去った。
「おっそろし~なんだよ今の奴は……震えた、死ぬかと思ったぜ」
「死ぬ寸前まで行ってたけどね~吟遊詩人の私に感謝しなさいよ」
俺はホッとした様子で剣を持つ手をだらっとぶら下げる、ミーナは力無い声で言った。
「ユウキ、ダインスレイブを鞘に戻して、もう二度と抜かないでよ」
「あーそうだな」
俺はダインスレイブを鞘に戻そうとすると何事も無かったかのように剣は素直に鞘に収まった。
うるりんはちょこんと俺の肩に飛び乗る。
「ユウキ様お怪我は大丈夫ですか?」
「あーありがとう、ミーナのおかげでこの通りピンピンしてる、でもうるりんはどうして動き出したのだ?」
治癒蘇生魔法をつかったことで脱力しその場に座り込むミーナ。
「おそらく治癒蘇生魔法で魂を宿されたのね、私はヘトヘトよ……これでわかったわ、ユウキのオーラはあなたのオーラではなく、うるりんのオーラだったのよ」
「おいおい街長が言ってたのに、俺には何の力も無いのかよ」
「そのようね、カンチガイよ」
俺は正直がっかりした、ひとりの学生がそんな能力なんて無いよな……
「ここは怖いから、街を出ようぜ」
うるりんが仲間に加わった、そしてまた馬車で湖の街を出て俺達はたわいもない話をしながら、北に向かうことにした。
ミーナは馬車の鞭で軽くお尻を叩く。
「アルペジオの角は灯り代わりになるのよ」
「ミーナにしてはいいアイデアじゃないか」
「あなたよりは頭はキレるわよ!」
「なんだ、この役にたたない吟遊詩人が!」
俺の肩に座るうるりんが不思議な事を言ってきた。
「ユウキ様、私が見る限り、このロバはロバのようでロバでは無いようですよ」
「おいおいうるりん、ご主人様てのやめてくれよ、ずっと一緒にいた仲じゃないかよ」
「そうですね、ではお兄ちゃんてのはどうですか?」
「ちょっと照れるけど、それがいいな」
「はい、ご主人……いやお兄ちゃん」
2人はニコニコ笑う。
「ロバじゃないってどういう事だ?」
「はい、角が生えているのと光ること、おそらくもっと怒らせると覚醒すると思います、でも覚醒すると我を見失う可能性があります、必要な時にしか覚醒させてはいけません」
アルペジオの光る角を見ながら俺は街長が言っていたことを思い出した…手放してはいけないというとこだ。
「我を忘れるということは、俺達にも危害を加える可能性があるということか?我を忘れる寸前だったのか…これで飼い主のミルコを襲っていたのも納得いくな」
ミルコは少し知っているようで、この話しに口を挟んできた。
「ひとつ言っておくぞ、まずロバではない、こいつは馬の化身だということしか分からんが、手が付けられないほど暴れることがたまにある」
「一度戦いの時に試してみるしかないな」
「何をだ?」
「ロバの能力を知るためにも、思いっきり怒らすんだよ、そして最後はミーナがなだめる」
「また私が宥めるの、そんな役ばかりね」
「ミーナにはそれしかないだろ」
拗ねてぷくーっと頬を膨らすミーナが少しかわいかった、そんなたわいもない話をしていると、街の灯りが見えてきた事にミーナが気づいた。
「見て!たくさんの明かりが見えるわよ、泊まれるんじゃない?」
街に到着したうるりんを含めた俺達は宿を探すことにした。
「どうやらこの街は安心できそうだな、一晩泊まっていくか」
宿はすぐに見つかり入店する。
「いらっしゃいませ、何名様ですか?」
うるりんを人数にいれないというずるい事を考えた俺は、無理やりポケットにうるりんをそっとしまった。
「ちょっとお兄ちゃん……」
「そこでじっとしとくんだ」
そしてどもりながら答えてしまう。
「よ、よ、よに、いや、さ、3人です、ロバも宿前につなぎたいのですが」
「わかりました、今日はもう遅いので、晩御飯はつきませんが、料金は、ひとり50ルイスです」
悪いと思ったがこれからの資金の事も考えて節約する事にした、まー詐欺なんだが……




