血の匂い
ひとり。
斬った。血の匂い。べっとりと、ぬめる。
「綺麗」
日本語。振り向く。女性が立っている。肌の露出が多い。寒いこの地で。
「珍しいな」
「あら、ごめんなさい。日本刀なら日本人だと思って」
「違う。こんなに寒い中、そこまで露出するとは」
女性。顔が赤くなる。
「露出狂か」
今度は、耳が赤くなった。寒いのだろう。
風。
「ファッション」
目の前。女性。襟首を掴まれた。刀を横に薙ぐ。余裕を持って、かわされる。
「ファッション、です」
なぜ、言い直した。
「露出狂とかじゃないです。信じてください」
今の動き。目で捉えられなかった。どれだけの速さをもって、間合いを詰めたのか。見ていたのに、気付けない。そんなことが、あるだろうか。
「それより、なんで殺したんですか、それ」
今度は、目で捉えられる動きで、ゆっくりと、死体に近付く。死体を見て動揺しないのだから、それなりの心得はあるのだろう。
「さあな」
刀を収め、歩き出す。女性。付いてくる。