第六章4 『失踪したサキ』
魔界舞踏会の準備が進められていた魔王城。
しかし舞踏会を一週間後に控えた日に、魔王の秘書サキュバスが行方不明となった。
ここは俺の自室。今は俺とセイレちゃんしかいない。
「……」
「魔王様、大丈夫、です。雪女さん達が捜しています」
セイレちゃんが励ましてくれるが、俺は唇をかみしめるだけだった。
無力。
またしてもそれを痛感させられる。
本物だったら、こんな失態はしないはずだ。
雪女さん達はずっと捜索しているが、誰も彼女を見た者はいなかった。
サキさんが行方をくらましたことが発覚したのは、昨日だった――。
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昨日――。
執務室でサキさんに資料を届けてもらった俺は、それを読み込んでいた。
直前の会話もあり、少しだけ調子を取り戻し、出来ることをやろうと前向きになっていた。
それから数十分ほど経った頃だろう。
大慌てで、雪女さんが執務室を訪ねてきた。
「魔王様!!」
「ど、どうしたんですか、雪女さん」
セイレちゃんも急な来客に驚き、寝起きでボーッとしていた目をパチクリさせている。
「ぶ、無事ですの?」
「無事、だけど……何かあったの?」
尋常ではない様子で、詳細を恐る恐る訊ねる。
雪女さんが言うには、コロボックルからの報告があり、他の領域から侵入の形跡があるとのことだった。
その報告を受けた護衛衆の面々は、大急ぎで魔王城と周辺の安全確認を急いでいるらしく、雪女さんは俺の安全確認をしに来たとのことだ。
「ここは結界の中ですから、安心ですわね」
魔王の結界、サキさんにも以前教えてもらった。
結界は魔王城の中にある絶対安全な空間で、むやみに出ないよう注意されていたから、執務室にこもっていた。それが功を奏したらしい。
確か結界は、護衛衆全員の命と引き換えに作られており、ここに侵入するには護衛衆を倒す必要があるとのことだ。
「でも、侵入って――」
「コロボックルの報告ですから、少し前になりますの。……そういえば、サキュバス様はどうしてますの? 彼女にも報告しておかなければ」
「サキさんなら、ついさっき部屋を出て行ったから、部屋にいるんじゃないかな?」
部屋というのは、彼女の自室のことだ。
入ったことはないけれど、俺の部屋や執務室、護衛衆各自の部屋と同じ階層、三階にある。三階は結界のある場所で、直近の魔物しか侵入できない。
「そうですのね。訪ねてみますわ。セイレーン様、魔王様のことをお願いしますわね」
「は、はい」
雪女さんは落ち着きを取り戻し、フワフワと部屋を出ていく。
しかし、部屋にサキさんは見当たらず、更には侵入者すら見当たらなかった。
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――そして現在に至る。
こうして待つことしかできず、不甲斐ない。
「セイレちゃん、今回の侵入ってどういうことなのかな?」
「そう、ですね。攪乱、もしくはサキュバス様を狙ったもの、かもしれません」
「やっぱり、そうか……こういうこと、前からあるの?」
「……えっと」
「教えて、ほしいんだ」
「わ、わかり、ました。自分の知る限り、一度も、ありません」
やっぱり、そうだよな。
魔界は不安定になっている。
それはきっと、俺が来る前よりもひどい状況なのかもしれない。
「くそっ……!」
「魔王様……」
今はただ、またしても自分を責めることしかできなかった。
大嫌いな、自分を。




