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社畜魔王とクズ勇者  作者: 新増レン
第四章 「クズ勇者、自信をつける」
72/209

第四章11 『捜さないでと言われても』

【2017年12月2日改稿。読みやすくしました。内容の変更はありません。】

 


 ウィズダム古城でキマイラを倒し、勇者一行はシュテム王国で催された祝宴に参加した。

 そこで国王に通行手形と勇者の遺品をもらい、ついでに長い人たちを必要な時に呼び出してもよいとの許可をいただいた。

 こうして祝宴は終わったが、その最中――シュネーが行方をくらます。

 彼女を捜してエリカは宴席の場を途中で抜け出したが、果たして見つかったのか。




 翌朝――。


「おはよ~~あふああぁぁ」


「勇者様、おはようです。相変わらずの大欠伸、さすがですよ」


「相変わらずの謎贔屓、あんがと。……えぇと」


 朝起きて宿のロビーにやってくると、そこには昨日のパーティスタイルとは打って変わり、動きやすさ重視の白装束モルちゃんと、鎧に身を包むエリカちゃんの姿があった。


 二人とも、既に旅立つ準備ができている様子だ。


「……エリカちゃん、もしかしてなんだけど」


「まだ旅立つつもりはないわよ。食料も補給してないし、この間の戦いでまだ傷も癒えきってないから」


 よ、よかったぁ……。

 そりゃそうだよな。エリカちゃんはかなり傷負ってたし。


「そしたら、どうしてそんな恰好?」


「急用ができたの。三人で霧の湖畔へ向かうわよ」


「霧の湖畔? たしかそこって、古城作戦の時に義勇兵団が駐屯してた場所じゃん。どったの? 忘れ物?」


「……」


「……勇者様」

「え?」


 クイクイッといつものように服の袖を引っ張ってくるのはモルちゃんだ。


「あまり刺激しない方がいいですよ」


「……あ、もしかして」


 そう言えばシュネーさんがいない。つまり、そういうことだろう。


「事情、聴いてもいいでしょ?」


 そう訊くとエリカちゃんは頷き、朝食を兼ねて食堂へと向かった。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「とりあえず、これを見て」


 エリカちゃんは朝食の合間、チーズを挟んだパンをかじりながら、一通の手紙を取り出す。


「これ、シュネーさんの字じゃん」

「勇者様、なんでわかるです? ストーカーです?」


「いやいや。僕は女の子の筆跡なら、すぐに覚えちゃうのさ。こないだ宿をとるときに横からこっそりとね」


「ゾッとしたです。ちなみに、わたくしの字は?」


「モルちゃんは個性的だからすぐわかるよ」


「こ、これは恐怖を通り越して感動です。すぐにでも籍を――」



「早く読みなさい!!!」


 ガシャン!



 テーブルを勢いよく叩いたエリカちゃんの怒号が食堂内に響いた。

 声と皿の音が気持ちいいくらいに響き、他の客の視線が痛い。


「あ、あの、お客様……」

「なにか?」


「いえ、なんでも!! ごごごごゆっくりどうぞ!」


 猫耳のウェイトレスさんが全力で逃げていく。

 ものすごく可哀想だった……。

 とりあえず、読まなきゃ怖いし、読んでみるか。



『皆様、捜さないでください。わたくしは裏切り者です。短い間でしたが、一緒に旅ができてうれしかったです。くれぐれも、霧の湖畔には来ないでください』



 なにこれ。


「捜さないでって書いてあるよ?」


「きっと何かあるのよ。誘拐かもしれないわ」


 そんな馬鹿な……融解だとしても要求がないし。

 それにこの手紙、なぁんか嫌な予感がするなぁ。


「どう思うです?」


 モルちゃんは隣の席から小声で訊ねてくる。


「どうもなにも、嫌な予感しかしないよ」

「同感です。ですが、あれですよ」


 そう、問題なのはエリカちゃんがこうなってしまえば意味がないということだ。


 以前、モルちゃんとエリカちゃんは似た場面で言い争ったケースがある。

 モルちゃんは全体を見るタイプだけど、エリカちゃんは重点的に見てしまうタイプ。意見が食い違うことは当然。

 止めることはできない。ことシュネーさんの問題とあれば尚更だろう。


「行こうか……でもさ、これ食べてからにしようよ。宿代もったいないし」


「……そ、そうね」


 エリカちゃんの性格は、一筋縄じゃ解決できそうにないなぁ。

 ま、そんなこと言える立場じゃないんだけどね。


 こうして、僕たちはシュネーさんを捜すために霧の湖畔へと向かうことになった。

 だけどさすがに、あんなことになるとは思わなかった。







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