第四章7 『ウィズダム古城跡』
【2017年12月2日改稿。読みやすくしました。内容の変更はありません。】
勇者一行はウィズダム古城の魔物と戦うべく、シュテム王国の義勇兵団と合流し、彼らと共に討伐へと動き出す。
作戦会議において、勇者はシュネーの意見を採用し、兵団に即アタックを提案。
その案は受け入れられ、勇者の作戦通り、義勇兵団はウィズダム古城手前に向けた進軍を開始する。
勇者一行も同行する予定だったが、突然、長い団長に先陣を任され、クズ勇者は生まれて初めての戦場で先陣を全うすることとなった。
ウィズダム古城への進軍を開始することとなり、シュネーさんは駐屯地に残った。
彼女も同行すると言っていたが、エリカちゃんが許可しなかった。
僕もその時、シュネーさんを守ると言って挙手したが、エリカちゃんの鉄拳をくらい、今では軍団の先頭を歩いていた。
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そして歩くこと数十分。
森の奥深くに、廃れた城が見えてきた。
「あれね。ウィズダム古城跡……」
緑に囲まれ、壁が今にも崩れそうな苔まみれの古城跡。周囲には数体の魔物の姿も確認できる。
「はぁ、一生見えてこなきゃいいのに」
「勇者様、さっそくの弱気です。さすがですよ」
先頭を歩く三人組が止まり、後方も足を止める。
「では、我々も配置に着く。大砲部隊を頼みます」
「はいよ」
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義勇兵団は草木を分けるようにして散っていく。ここからは四つの部隊に分かれるらしい。
馬を走らせることのできない林の中。ウィズダム古城を攻めるのは人の足だ。
そこで長い人の作戦通り、部隊を四つに分けて古城を取り囲むように責めることが決まった。
そして僕たちの部隊、作戦を考えたのは僕だけど、詳細はこの道中にエリカちゃんが考えた。
「勇者、作戦は頭に入ってるでしょうね?」
「大丈夫だよ。エリカちゃんの考えた最悪の作戦、覚えてるよ」
「あ?」
「なんでもないです」
僕たちの正面突破部隊は、大砲と魔法による奇襲から始まる。
まずはウィズダム古城の正門に一発、大砲を打ち込む。
そこから見張りが出てきた所を目掛けて、六門用意した大砲と、モルちゃんの魔法を一斉に放ち、ウィズダム古城をブッ飛ばす。
そして混乱に乗じて僕たちが古城に潜入し、暴れまくる。
――以上がエリカちゃんの考えた作戦。
「あのさ、モルちゃん」
「なんです?」
大砲の用意に余念がないエリカちゃんには聞こえないように、僕は一応訊ねておくことにした。
「これ、勇者の作戦かな?」
「……テスタラの町でも思ったです。勇者というよりは魔王に近いですよ」
さすが、魔王の血を少しでも引いてるエリカちゃんだ。
血の気を引かしていると、モルちゃんは何かに気付いたようで、眉根を上げた。
「……どうやら、準備が整ったみたいです。こちらも魔法陣と大砲の用意を」
「あ、うん。エリカちゃん!」
「わかったわ。大砲部隊、用意して!」
「魔法陣、完了ですよ」
足元に模様が浮かび、杖の先端が光ると、魔法陣から風が溢れだし、モルちゃんのツインテールもなびいている。
「よし、いくわよ。全員耳をふさいで!大砲!!」
「はっ!」
ズドオオオオオオンン!!
エリカちゃんの掛け声で大砲が地面を揺らすような轟音と共に正門に放たれた。
当然ながら見張りの魔物たちは音に驚いていたが、既に時遅く、正門が勢いよく破裂する。
「追撃!!」
鬼だ。
飛び散る瓦礫に混乱する獣のような魔物たち。
それに構わず、エリカちゃんは指示を飛ばした。
「モルちゃん!」
「光の剣よ……天高くから、大地に突き刺され!!」
キュイイイインッッ!!
ズダダダダダダダダダダ!!!
モルちゃんが叫ぶと、古城の上に巨大な魔法陣が浮かび上がり、そこから勢いよく光る剣が無数に出てくると、雨のように古城を突き刺していく。
『ど、どういうことだ!!』
『まさか、人間の襲撃か!?』
いまだに魔物たちは状況を把握していない。しかし、だからと言って追撃の手を止めるエリカちゃんではない。
「大砲部隊……うてえええええ!!」
ダダダダダダダダ!!
ズダアアアアアアン!
無数に落ちてくる光の剣と古城を破壊しつくす大砲の雨。
魔物たちは必死に逃げ出すが、光の剣や大砲の爆風、崩れて舞う古城の瓦礫によって命を散らしていく。
「……」
地獄絵図だった。
そして更に、奇襲に成功したのを見るや否や、各方面から鎧に身を包んだ兵士たちが一斉に飛び出し、残党を狩っていく。
「よし……。大砲部隊は戻りなさい。勇者、私達も行くわよ」
「え、あ、うん」
「勇者様、大丈夫です?」
「……ま、まあね!」
「それなら、いい、です」
「ほら、早くしなさい!!」
先走っていくエリカちゃんを追いかけるように、僕とモルちゃんは彼女についていく。
僕たちは半壊した城を目指して一直線に駆けた。
ウィズダム古城の周囲は既に戦闘の渦中。
兵団が奇襲で押していたが、中から増援がやってきて互角の戦いになっている。
「エリカちゃん!!」
「わかってる! たあああ!!」
襲い来る必死の魔物たちを切り抜けながら、どうにか僕たちは今にも崩れそうな城の手前までやってきた。
「げほっ、ごほっ、くせぇ……」
放置されていたことと、魔物が潜んでいたこと。それに大砲の火薬の臭いが重なり、気分が悪くなるような空気が漂っている。
「行くわよ。連中の指導者を倒せば、こっちの勝ちね」
「……うぅ、腹いてぇ」
「勇者様、大丈夫です。何があっても、わたくしが護るですよ」
「モルちゃん、それ死亡フラグじゃね?」
「一度言ってみたかったです」
「行くわよ!!」
「「……はい」」
魔物の軍勢に奇襲を加え、戦況は優勢。そんな中、僕たちは古城の内部に足を踏み入れる。
目指すは敵の指導者。これを倒せば勝てる。
だが、その意気込みは奴に出会ったとたんに消え失せることとなった。




