表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
社畜魔王とクズ勇者  作者: 新増レン
第四章 「クズ勇者、自信をつける」
59/209

第四章1 『勇者は浮気者の夢を見るか』

【2017年10月22日改稿。読みやすく改良いたしました。】

 


 夢だ。

 そう気づくのは簡単で、僕の意識だけがとある景色を映し出していた。

 そう、目の前で馬鹿みたいにはしゃいでる金髪のチャラ男が、間違いなく以前の――勇者になる前の僕だ。



「ぎゃははは! まじウケる!!」


 こうして端から見ると、やっぱ他のホストよりイケてるよなぁ。


 僕は田舎の出身で、母に育てられた。父はすぐに他界してしまって、ずっと母に育てられた。


 大物になって帰る。


 そう粋がって田舎を飛び出した。幼馴染にも別れを告げず、母を一人残して上京した。


 楽しそうに酒を飲み、女の子と喋る。ただ楽しくて、それだけでいいって思っていた。

 しかし、こう考えてみると、とんだ親不孝者だ。


 大物にもならず、毎日毎日酒と女に溺れる日々……エリカちゃんに口癖のように言われてるけど、本当にクズ野郎だよな。


 大物になりたい願望はあった。

 大物になって故郷に大量の金を持って帰って、みんなが暮らしやすいようにする。それが僕の夢だった。

 でも「なりたい」だけじゃ「なれない」。それに気づくのは、ホスト生活を始めてすぐのころだ。


 すると、思い出したことで、映像がバチバチと音を立てて途切れ始めた。


 バツン――。


 ――!?


 一瞬だけ故障したテレビのように砂嵐が巻き起こったが、途端に光景が変わった。

 そこは街の路地裏で――ゴミ捨て場の近くには、雨の中だというのに膝を抱えて座る男の姿が見えた。


 すぐにわかった。あれは僕だ。


 店長と喧嘩してホストをやめて、馬鹿を続けた男の末路。

 大物になる道は途絶え、借金を背負い、どん底に落ちた僕だった。


 そんな僕に、傘を差し伸べてくれる女の子がやってきた。


「こんなところにいたんだ。風邪引いちゃうぞ」


 ――ヒトミちゃんだ。


 上京した当時、ホストとして働く前に出会った美女。

 彼女は帰りが遅い僕を心配し、迎えに来てくれたのだ。


 ちなみに、彼女は僕を殺した女性。

 いや、こう考えると、僕を殺させてしまった。と言ったほうがいいかもしれないな。


 僕の恋愛観と彼女の恋愛観は交わることがなかった。彼女は一人をとことん愛するのに対し、僕は愛せるものであれば誰であれ愛してしまう。

 しかし、それに気づかされるまで数年――僕は彼女と同棲し、借金も徐々に返していった。


 だけど、悲劇は起きた。



 場面が変わり、とある日の夜。

 バイトから帰ると、ヒトミちゃんは血まみれ包丁を手に持ち、返り血を浴びた顔で振り返ると、光のない瞳で僕を出迎えた。


「おかえり……」

「ヒトミ、ちゃん?」


 僕がバイトに行っている間、他の女の子が、家に遊びに来てしまったらしく、この光景を見ただけであの時の背筋が凍った感覚が蘇る。


 ようやく目の前の駄目な浮気男も、部屋の奥で血まみれになっている存在に気付く。

 ピクリとも動かない。あれはどう見ても死んでる。


 理由を尋ねると、ヒトミちゃんは家にやってきた彼女と話し、自分以外に付き合っている女性がいたことを知ったらしく、淡々とした口調でそれを語っている。


 だからって殺すのはおかしい。

 たとえ数年の間、共に過ごし、彼女に助けられたとしても、そこだけは当時の僕も否定した。


 すると彼女は激昂し、僕はめった刺しにされて死んだ。


 あの後のことは知らないが、僕はこの世界に勇者として生きることとなった。

 それが今……。

 自分の人生に後悔してるかと聞かれれば、していないと言ってしまう。

 ただ、無関係な彼女が殺されたことと、ヒトミちゃんを犯罪者にしてしまったことが、悔やまれた。



 そういや、このまま旅を続けて魔王を倒すんだよな。

 そうなれば、人生をやり直せる。神様がそう言ってた。


 でも、こんな人生、もう一度やり直したいか?

 嫌だね。


 僕は一人を幸せにすることなんてできない。だからまた、どうせ彼女たちを傷つけてしまう。

 それだけは何度やり直そうと同じ。

 だから、もうあんなことは懲り懲りだ。ホストだって嫌だ。小学生の頃の思い出は辛いものしかない。


 それに、人生なんて、やり直すもんじゃないだろ。



 ……あ、いいこと思いついた。

 これなら、最高じゃん。

 妙案を思いつき、僕は段々と覚醒していった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ