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社畜魔王とクズ勇者  作者: 新増レン
第三章 「社畜魔王、会談する」
56/209

第三章13 『疑う者』

【2017年10月22日改稿。読みやすく改良いたしました。】

 


 ビーストが解体となり、領域の問題や勢力の問題等々、解決すべき議案に溢れていた。

 そんな中、社畜魔王にとって二度目となる会議、臨時会議が開催されることになった。



 いつぞやの会議室。

 摩訶不思議なそこにやってくると、魔王の領域内に暮らしている重臣――幹部たちが集結していた。


 オーガ族の席は空席となっていたが、ハーピー族の族長は怪我も回復し、会議に参加していた。どうやら全員が揃ったらしい。


 サキさんが見渡してから、こちらに合図を送ってくる。


「ではこれより、臨時会議をはじめます」


 俺が頷くとサキさんの言葉で会議が始まり、ビーストの問題について議論が次々に交わされていった。

 様々な意見が飛び交い、数時間後、会議は着地点を見出だし、終了した。



「お疲れ様です、魔王様。私は幹部の数名と話がありますので、先に戻っていてもらえますか? デュラハンに護衛を頼んでありますので」


「うん。頑張ってね、サキさん」


「……! は、はい!」


 サキさんは気合いを入れて他の種族の元へと向かう。それを見届けてから、俺はデュラハンさんと共に会議室を出た。


「本日も見事でした、魔王様」

「そうかな?」


「ええ。日に日に成長しています」


 デュラハンさんにベタ褒めされながら廊下を歩いていると、後ろから羽音が聞こえてきた。


「魔王様!!」


 呼びかけてきた声に振り返ると、ハーピー族の族長が自身の翼で羽ばたきながら廊下を移動してきた。


「お下がりください、魔王様。何の用だ? すでに会議は終わったはず。それでも質問があるのであれば、会議室にいる秘書に訊くがいい」


 デュラハンさんが前に出て、ハーピーとの間に入る。

 すると、ハーピーは着地し、デュラハンの前で膝を折る。


「どうしても……魔王様に先日の感謝を述べたくて」


 ハーピーの言葉にデュラハンさんは俺を見てくる。とは言っても首はないけど。


「どういたしますか?」


 ハーピーの感謝。思い当たるのはオーガの件だ。

 彼女はオーガの不穏な動きに気付き、即座に族長へと問い詰めたが重傷を負った。

 その際の感謝だろう。


「少し話すよ」

「そうですか。では、話すがよい、ハーピー」


 デュラハンさんが促すが、ハーピーはもじもじと翼を交差し、話そうとしなかった。


「あ、あの、できれば魔王様と二人きりで……」


「……いくら貴様でも、それは許せん。貴様は護衛衆でも秘書でもないだろう」


 その言葉に、ハーピーは一瞬だけ顔を強張らせた気がするが、再び恥ずかしそうにしていた。

 これじゃあ、埒が明かないか。


「デュラハンさん。ハーピーもこう言ってるから、二人で話したいんだけど」


「なりませぬ!!」


「……お願い」


 そう言うと、デュラハンさんは迷いつつ、苦渋の末に「わかりました」と言って折れてくれた。


「ハーピー、魔王様に何かあってみろ。貴様の首をはねるぞ」

「あ、ありがとうございます!」


 ハーピーはハツラツとした礼を述べる。

 ……ハーピーって、こんな人だったか?


「では、魔王様。後程」

「ああ」


 デュラハンさんを見送り、ハーピーの要望通り二人きりとなった。


「――それで、なにかな?」


「あの、場所を変えませんか? 行きたい場所があるので」


「別にいいけど……どこ?」

「あの場所が見える位置ですよ」



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 ハーピーに連れられてやってきたのは、城でも人通りのない廊下だった。


「こちらから、見えますね」


 ハーピーはそう言って窓の外を眺めている。

 確かに、外には城下にある庭園のようなものが見えた。


「昔、よく遊びましたよね」


 その問いに、ドキリとした。

 わからないが、とりあえず頷いてみる。


「そ、そうだな」

「……!」


 視線を向けると、ハーピーは怯えるように目を逸らした。


「えっと……」


 もしや、マズイ受け答えだったのかもしれない。ハーピーは少し青ざめたようにも見える。

 そして一呼吸おいてから、ジッとこちらを見つめてきた。


「一つ、質問していいですか?」


「いいけど……」


 断った方が良かった気がするけど、無理だよな。

 彼女の真剣な表情からは、逃げられそうにない。

 そんなことを考えていて、不意の質問だった。



「あなたは、誰?」



「え……」


 俺は魔王。

 そんな自己暗示にも似た認識は、ハーピーの一言で歪んでしまった。




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