第三章13 『疑う者』
【2017年10月22日改稿。読みやすく改良いたしました。】
ビーストが解体となり、領域の問題や勢力の問題等々、解決すべき議案に溢れていた。
そんな中、社畜魔王にとって二度目となる会議、臨時会議が開催されることになった。
いつぞやの会議室。
摩訶不思議なそこにやってくると、魔王の領域内に暮らしている重臣――幹部たちが集結していた。
オーガ族の席は空席となっていたが、ハーピー族の族長は怪我も回復し、会議に参加していた。どうやら全員が揃ったらしい。
サキさんが見渡してから、こちらに合図を送ってくる。
「ではこれより、臨時会議をはじめます」
俺が頷くとサキさんの言葉で会議が始まり、ビーストの問題について議論が次々に交わされていった。
様々な意見が飛び交い、数時間後、会議は着地点を見出だし、終了した。
「お疲れ様です、魔王様。私は幹部の数名と話がありますので、先に戻っていてもらえますか? デュラハンに護衛を頼んでありますので」
「うん。頑張ってね、サキさん」
「……! は、はい!」
サキさんは気合いを入れて他の種族の元へと向かう。それを見届けてから、俺はデュラハンさんと共に会議室を出た。
「本日も見事でした、魔王様」
「そうかな?」
「ええ。日に日に成長しています」
デュラハンさんにベタ褒めされながら廊下を歩いていると、後ろから羽音が聞こえてきた。
「魔王様!!」
呼びかけてきた声に振り返ると、ハーピー族の族長が自身の翼で羽ばたきながら廊下を移動してきた。
「お下がりください、魔王様。何の用だ? すでに会議は終わったはず。それでも質問があるのであれば、会議室にいる秘書に訊くがいい」
デュラハンさんが前に出て、ハーピーとの間に入る。
すると、ハーピーは着地し、デュラハンの前で膝を折る。
「どうしても……魔王様に先日の感謝を述べたくて」
ハーピーの言葉にデュラハンさんは俺を見てくる。とは言っても首はないけど。
「どういたしますか?」
ハーピーの感謝。思い当たるのはオーガの件だ。
彼女はオーガの不穏な動きに気付き、即座に族長へと問い詰めたが重傷を負った。
その際の感謝だろう。
「少し話すよ」
「そうですか。では、話すがよい、ハーピー」
デュラハンさんが促すが、ハーピーはもじもじと翼を交差し、話そうとしなかった。
「あ、あの、できれば魔王様と二人きりで……」
「……いくら貴様でも、それは許せん。貴様は護衛衆でも秘書でもないだろう」
その言葉に、ハーピーは一瞬だけ顔を強張らせた気がするが、再び恥ずかしそうにしていた。
これじゃあ、埒が明かないか。
「デュラハンさん。ハーピーもこう言ってるから、二人で話したいんだけど」
「なりませぬ!!」
「……お願い」
そう言うと、デュラハンさんは迷いつつ、苦渋の末に「わかりました」と言って折れてくれた。
「ハーピー、魔王様に何かあってみろ。貴様の首をはねるぞ」
「あ、ありがとうございます!」
ハーピーはハツラツとした礼を述べる。
……ハーピーって、こんな人だったか?
「では、魔王様。後程」
「ああ」
デュラハンさんを見送り、ハーピーの要望通り二人きりとなった。
「――それで、なにかな?」
「あの、場所を変えませんか? 行きたい場所があるので」
「別にいいけど……どこ?」
「あの場所が見える位置ですよ」
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ハーピーに連れられてやってきたのは、城でも人通りのない廊下だった。
「こちらから、見えますね」
ハーピーはそう言って窓の外を眺めている。
確かに、外には城下にある庭園のようなものが見えた。
「昔、よく遊びましたよね」
その問いに、ドキリとした。
わからないが、とりあえず頷いてみる。
「そ、そうだな」
「……!」
視線を向けると、ハーピーは怯えるように目を逸らした。
「えっと……」
もしや、マズイ受け答えだったのかもしれない。ハーピーは少し青ざめたようにも見える。
そして一呼吸おいてから、ジッとこちらを見つめてきた。
「一つ、質問していいですか?」
「いいけど……」
断った方が良かった気がするけど、無理だよな。
彼女の真剣な表情からは、逃げられそうにない。
そんなことを考えていて、不意の質問だった。
「あなたは、誰?」
「え……」
俺は魔王。
そんな自己暗示にも似た認識は、ハーピーの一言で歪んでしまった。




