第三章12 『大変な事後処理』
【2017年10月22日改稿。読みやすく改良いたしました。】
ビーストとの会談は終わった。
結果的にビーストは今回の独断専行により、魔王の名誉を汚したとされ、ビーストの長ケンタウロスの承諾のもと、事実上の解体となったわけだが、そのあとが大変なことになっていた。
「……疲れた」
翌日。魔王城に戻り一夜が開け、緊張から解放された。しかし、待っていたのは事務仕事地獄だった。
ビーストの解体といっても簡単な事ではなく、まずは他の四天王を含めた魔界全土に対する説明が必要となる。そのための書類をまとめるのが大変だった。
ギギィィ。
「魔王様……こちらの書類も――魔王様?!」
サキさんが部屋にやって来ると、大量の書類を手に持っていたが、こちらを見るなり放り投げて駆け寄ってくる。
「だ、大丈夫だよ。少し休んでただけ……こんなの社畜生活に比べれば」
「で、ですが……やはり魔王様は休んで」
「これは魔王の仕事でしょ? なら、俺だけがサボるわけにはいかない。みんなも大変だからね」
そう、他のみんなも仕事している。
魔王の直轄もそうだが、魔王の配下が働いている。
そんな状況で休むなんて、俺には出来ない。
「ビーストがいなくなって、魔界はどうなるのかな?」
「このままでは、均衡が揺らいでしまいます……ですが――」
「それなら、やっぱり休めないよ。それが、上に立つってことだからね」
「魔王様……」
「じゃあ、まずは書類を拾わないと」
「……はい」
サキさんが届けてくれた書類に目を通していると、彼女は紅茶をカップに注いでくれた。
「魔王様、どうぞ」
「ありがとう。サキさんも飲んだら?」
「い、いえ。私は遠慮しておきます」
「そう?……あ、そういえば、勇者の件はどうなったかな?」
「報告ですと、計画通りのようです」
「そっか……」
――となれば、明日か明後日くらいかな。
しかし、この間も奴は美女とイチャイチャしてるのだろうか。
まったく、うらやま――いや違う。魔王の最大の敵となる勇者のくせに、自覚が無さすぎる。
その方が俺としては助かるが、腑に落ちない。
魔王の恐怖を知らしめてやらないとな。
コンコンコン。
「? 魔王様、私が出ます」
「あ、うん」
「どなたですか?」
「あ、護衛衆の一人、ミノタウロスです」
「……入りなさい」
「失礼します」
扉越しの確認を終えてサキさんが扉を開くと、ミノ子さんが入ってくる。
「ミノ子さん、もしかしてビーストの報告?」
「それもありますが、実は魔王様に報告があって……サキュバス様にも話しておきたかったので」
「私にも?」
「はい。実は先日の会談で、わたしがつかまっていた際、監視していたラミアから、気になることを聞いて……」
そう切り出すと、ミノ子さんは話を続けた。
内容はこうだ。
魔王が記憶喪失という噂を流したのは、魔王の仲間である。
「それをラミアが言ったのね?」
「はい……お耳に入れておいた方が良いと思いまして」
ミノ子さんはそう言って不安そうな顔をする。
「ありがとうミノ子さん。頭に入れておくよ」
「はい。あ、それとビーストの報告ですが――」
ミノ子さんの報告が終わり、俺とサキさんだけとなった。
「さっきの話が本当だとしたら、どういう意味かな」
「こちら側に、意図的に噂を流した者がいるということになります」
やっぱ、そうだよな。
この噂がなければ、ビーストは無謀な賭けに出なかったかもしれない。
一体、何のために……。
「とりあえず、怪しい魔物は私のメイド部隊で調査しておきます。魔王様は、開催を決定した臨時会議は明日ですし、これまで以上に身辺にお気をつけください」
「うん、わかった」
「……あの、寝るときに心細ければ、私が付き添いますけど、いかがですか?」
「あ、うん。嬉しいけど、今はいいかな。ほら、今は護衛がデュラハンさんだし、頼りになるから」
「そ、そうですか。必要になったら呼んでくださいね」
少し残念そうだけど、さすがにこれは恥ずかしくて頷けないよな。……俺が意気地無しなのか?
「で、では、何かあれば呼んでください。私は仕事が残ってますので、秘書室にいますから」
「わ、わかった」
変な空気のまま、サキさんが出ていって少し疲れた。
「……やるか」
視界の端に映った書類の山をみて、仕事を再開した。




