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社畜魔王とクズ勇者  作者: 新増レン
第三章 「社畜魔王、会談する」
54/209

第三章12 『大変な事後処理』

【2017年10月22日改稿。読みやすく改良いたしました。】

 


 ビーストとの会談は終わった。

 結果的にビーストは今回の独断専行により、魔王の名誉を汚したとされ、ビーストの長ケンタウロスの承諾のもと、事実上の解体となったわけだが、そのあとが大変なことになっていた。



「……疲れた」


 翌日。魔王城に戻り一夜が開け、緊張から解放された。しかし、待っていたのは事務仕事地獄だった。


 ビーストの解体といっても簡単な事ではなく、まずは他の四天王を含めた魔界全土に対する説明が必要となる。そのための書類をまとめるのが大変だった。


 ギギィィ。


「魔王様……こちらの書類も――魔王様?!」


 サキさんが部屋にやって来ると、大量の書類を手に持っていたが、こちらを見るなり放り投げて駆け寄ってくる。


「だ、大丈夫だよ。少し休んでただけ……こんなの社畜生活に比べれば」


「で、ですが……やはり魔王様は休んで」


「これは魔王の仕事でしょ? なら、俺だけがサボるわけにはいかない。みんなも大変だからね」


 そう、他のみんなも仕事している。

 魔王の直轄もそうだが、魔王の配下が働いている。

 そんな状況で休むなんて、俺には出来ない。


「ビーストがいなくなって、魔界はどうなるのかな?」


「このままでは、均衡が揺らいでしまいます……ですが――」


「それなら、やっぱり休めないよ。それが、上に立つってことだからね」

「魔王様……」


「じゃあ、まずは書類を拾わないと」

「……はい」



 サキさんが届けてくれた書類に目を通していると、彼女は紅茶をカップに注いでくれた。


「魔王様、どうぞ」

「ありがとう。サキさんも飲んだら?」

「い、いえ。私は遠慮しておきます」


「そう?……あ、そういえば、勇者の件はどうなったかな?」


「報告ですと、計画通りのようです」

「そっか……」


 ――となれば、明日か明後日くらいかな。


 しかし、この間も奴は美女とイチャイチャしてるのだろうか。

 まったく、うらやま――いや違う。魔王の最大の敵となる勇者のくせに、自覚が無さすぎる。

 その方が俺としては助かるが、腑に落ちない。

 魔王の恐怖を知らしめてやらないとな。


 コンコンコン。


「? 魔王様、私が出ます」

「あ、うん」


「どなたですか?」


「あ、護衛衆の一人、ミノタウロスです」


「……入りなさい」

「失礼します」


 扉越しの確認を終えてサキさんが扉を開くと、ミノ子さんが入ってくる。


「ミノ子さん、もしかしてビーストの報告?」


「それもありますが、実は魔王様に報告があって……サキュバス様にも話しておきたかったので」


「私にも?」


「はい。実は先日の会談で、わたしがつかまっていた際、監視していたラミアから、気になることを聞いて……」


 そう切り出すと、ミノ子さんは話を続けた。

 内容はこうだ。


 魔王が記憶喪失という噂を流したのは、魔王の仲間である。


「それをラミアが言ったのね?」


「はい……お耳に入れておいた方が良いと思いまして」


 ミノ子さんはそう言って不安そうな顔をする。


「ありがとうミノ子さん。頭に入れておくよ」


「はい。あ、それとビーストの報告ですが――」



 ミノ子さんの報告が終わり、俺とサキさんだけとなった。


「さっきの話が本当だとしたら、どういう意味かな」


「こちら側に、意図的に噂を流した者がいるということになります」


 やっぱ、そうだよな。

 この噂がなければ、ビーストは無謀な賭けに出なかったかもしれない。

 一体、何のために……。


「とりあえず、怪しい魔物は私のメイド部隊で調査しておきます。魔王様は、開催を決定した臨時会議は明日ですし、これまで以上に身辺にお気をつけください」


「うん、わかった」


「……あの、寝るときに心細ければ、私が付き添いますけど、いかがですか?」


「あ、うん。嬉しいけど、今はいいかな。ほら、今は護衛がデュラハンさんだし、頼りになるから」


「そ、そうですか。必要になったら呼んでくださいね」


 少し残念そうだけど、さすがにこれは恥ずかしくて頷けないよな。……俺が意気地無しなのか?


「で、では、何かあれば呼んでください。私は仕事が残ってますので、秘書室にいますから」


「わ、わかった」


 変な空気のまま、サキさんが出ていって少し疲れた。


「……やるか」


 視界の端に映った書類の山をみて、仕事を再開した。




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