第二章13 『和服美人との遭遇』
【2018年1月21日改稿。内容に変更はありません。見やすくしました。】
「「ふわぁ~あ」」
「だらしないわね。行くわよ、二人とも」
朝食を終え、いつもながらシャキッとしているエリカちゃんの掛け声と共に、僕らは宿を出た。
本日は少しでも進みたいとのことで、あまり寄り道せずに王国の首都を目指すことになっている。
シュテム王国。国境を越えたということで以前とは違う国らしいけど、歩いていても平原が続くだけ。
全然、別の国のようには感じない。
「あのさぁ、この国って前の国と似てね?」
「この辺りは同じね。けど植生が豊かで森が多くあるのよ」
しょくせい? なんのこっちゃ。
けどまぁ、森があるってことはわかったぞ。うん。
「モルちゃんは、こっちの国に来たことあるの?」
「ないですよ。わたくしはテスタラ生まれのテスタラ育ちです」
「わお、シティ生まれのシティ勤務みたいなカッコよさ」
「??? なんです? それ」
「こっちゃの話だよ」
二人でだべりながら歩いていると、前方を歩くエリカちゃんが足を止める。
「止まって」
「どったの?」
平原続きかと思えば、そこかしこに茂みが増えてきている。
しかし、ここで足を止める理由がわからない。
「エリカさん、どうしたのです?」
「あの茂み、今動いた気がするのよ」
「どれどれ?」
注目した直後、本当にガサガサと音を立て始めた。
「うわっ!」
「……! 何か出てくるわ!」
エリカちゃんの予想通り、影が茂みから出てくる。
「「「―――!?」」」」
しかしその正体は、血まみれの女性だった――。
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「どうしたの?! ひどい怪我……!」
エリカちゃんが血相を変えて駆け寄る。
茂みの中から出てきたのは血だらけの女性だった。彼女は力なく倒れてしまっている。
「魔物に、やられて……」
「魔物?! エリカちゃん、魔物は出ないんじゃ……」
「こっちのシュテム王国からは魔物の群生地や拠点もあるのよ。魔物が出てもおかしくないわ」
聞いてないよそんなの!
ヤバいじゃん! 魔物ってこんなに強いの!?
「ねぇ、エリカちゃん。引き返した方が――」
「うるさい! とりあえずモル、魔法で治せる?」
あ、完全に無視のやつね。
「無理ですよ~~。わたくし、治癒系統はからっきし。出来ていれば町の方々の腰痛も治せましたですよ。しかし、これもナハト母様の由縁ですよ。ま、母様の闇魔法と違って、わたくしは光――」
「治癒術は無理か……」
モルちゃんがまだ説明を続けている中、エリカちゃんは構わず女性に話しかける。
「それじゃあ、近くの町に行きましょう。立てる?」
「え、ええ……」
驚いたな。エリカちゃんの意外な一面を見た。
「おぉ、勇者様、貴重な光景ですよ」
「うん。これは貴重だ」
「ほら、ぼさっとしないで手伝いなさいよ!」
「ほいさー」「らじゃ」
「もう安心よ。必ず助かるわ」
「あ、ありがとう……あの、さっき勇者って」
「私達、こう見えて勇者一行なの。だから安心して」
すっごく詐欺っぽい台詞だよね、これって。
「勇者様、だったんですか……噂には聞いていましたけど、本当に……」
「そう。だから大丈夫よ。とりあえず私はエリカ。あなたは?」
「あたくしは、『シュネー』といいます」
「シュネーさんね、近くの町へ行きましょ」
「そ、それなら近くにイルハットという町があります。あたくしの家もそこに」
「イルハット……そうね。そこに行きましょう」
「あ、ありがとうございます」
シュネーさんか。こりゃ美人だ。
すげぇな。今まで見た中で群を抜いて美人だ。
白く透き通った肌と、目鼻立ちが整った美顔。流れるような真白の髪がまた美しい。
それに、和服姿ってのがまた……そそるな。
「勇者様、浮気です?」
「ち、違います違います! って、モルちゃんか。ビックリさせないでよ」
「その"浮気"という言葉に対する過剰反応、トラウマです?」
ニヤニヤしてモルちゃんが見上げてくる。
「詮索禁止。さ、エリカちゃんはもう行っちゃったし、行くよ」
見れば、肩を貸してすでに歩き始めている。
「……?」
それを追いかけようとして、一度茂みが目に入った。
茂みは血に染まっていたが、ところどころ濡れているようにも見える。まるで、そこだけ雨が降ったかのようだ。
「……まいっか」
違和感を覚えたが、気にせず彼女たちの後を追った。




