第二章Ex3 『セイレーンについて』
【2018年1月20日改稿。内容に変更はありません。見やすくしました。】
魔王城の中庭。散歩の途中でセイレーンさんと出会い、話し込んでいた。
そしてなぜか秘密を共有することとなった。
彼女は秘密を教えると言ってきて、俺は一つの案が浮かんだ。
「そ、それじゃあ、セイレーンさんが護衛衆にいる理由、とか?」
「……!」
「あ、やっぱり駄目かな。少し気になってたんだけど……」
セイレーンさんは目を丸くしたから悪い意味に解釈していたが、彼女は首を横に振る。
「そ、そのようなことで、いいのですか?」
「い、いいの?」
「もちろん、です。……あの、その前に魔王様」
セイレーンさんは少しモジモジとしながら、顔を赤らめている。
何を言おうとしてるのか、こちらも緊張してきた。
「どうしたの?」
「呼び方、変えて、ほしいです」
「え……」
虚を衝かれた。
しかしそう言われてみると、少し他人行儀だったかもしれない。
でも、セイレーンさん以外となると……。
「どんなふうに、呼んだらいいかな?」
「ま、魔王様の、好きなように、で」
好きなようにと言われてもなぁ……。
セイレーンさんは見た目で言えば年下だろうけど、魔物の年齢基準が人間と同じとは思えない。
でも今は魔王だし……まあ、いいよな。
「じゃあ、"セイレちゃん"って呼ぶかな」
「――! そ、それでいいです! そうして、ほしい、です!」
コクコクと激しく首を縦に振る様子を見ると、気に入ってもらえたようだ。
それにしても、女の子を「ちゃん」付けで呼んだのなんて小学校以来で気恥ずかしいな。
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「――では、話を、戻しましょうか……え、えっと、何から話そうかな」
セイレちゃんは最初に出会った時よりも距離が近く感じた。
上機嫌で俺の横をフワフワと浮かんでいる。
「あ、そうだ。魔王様は、その、種族のことは詳しいですか?」
「種族のこと? そういえば、あまり知らないかな」
「じ、自分は人魚族の族長なんです」
「族長!? す、すごい……」
「い、いえ。デュラハンさんとかに、比べたら……。それに護衛衆はみんな、族長ですし……」
族長っていうと、あの会議に集まっていた者たちのことだろう。
サキさんに教えてもらったけど、あそこに集まった連中が魔王の支配下にある種族の族長ということだった。
「えっと、話を戻しますね。人魚族は元から魔王様の直属として仕えてきていて、その、自分の祖先にも同じく護衛衆を務めていた方も、います」
「へぇ……」
「護衛衆は、魔王様の支配下にある種族の中から選ばれるので、自分はそれで、護衛衆なんです」
「え、そうだったの?」
「はい」
護衛衆って、前の魔王が選んでいたのか。
だからあんなにも信頼が強いんだな。
「理由は、そんなところです」
「そっか……」
「でも、今は理由が増えました」
「え……?」
「今の魔王様を、護りたいから、です」
そう言ってセイレちゃんは笑う。
考えてみれば、こうしてちゃんと話したのはセイレちゃんが初めてだったかもしれない。
他の護衛衆のみんなは、どう思ってるのかな。
ふと浮かんだのは、他の護衛衆や秘書のサキさんだ。
彼らとも、話す機会がほしいな。
「セイレちゃん、ありがとう」
「え……?」
今度は、俺が彼女の虚を衝けたみたいだ。
「それと、これからもよろしくね」
「――! は、はい!」
差し出した手を、セイレちゃんが握ってくれた。
そんな絆が深まる演出の最中、予期せぬ事態が起こる。
「ま、魔王様! ここでしたか! って、何してるんですか!」
「ひっ、あ、あの、これは……すみませんっ!」
秘書でサキュバスのサキさんが突如やってきたかと思うと、セイレちゃんはいつものセイレちゃんに戻ってしまい、驚いて手を放すと、俺の後ろに隠れる。
「セイレーン? あなた何やって――」
「サキさん、急にどうしたの?」
「あ、ええと――」
話が逸れそうだったのを防ぎ、要件を確認すると、サキさんは息を整え、落ち着いてから口を開く。
「緊急会議です。魔界によからぬ動きがありました」
この言葉で、一気に緊張が走った。




