第二章4 『石工の町テスタラ』
【2018年1月20日改稿。内容に変更はありません。見やすくしました。】
あれからどれだけ歩いたか。
近くに見えた町には目もくれず、エリカちゃんと共に歩くこと半日。ようやくテスタラの町についた頃には夕刻だった。
「つ、ついたぁ……」
「だらしないわね。とりあえず、宿を確保しておくわよ」
「賛成! 出来れば同室で!」
「却下」
一蹴された。
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テスタラは建物が石で造られている小さな町。
活気は無く、通りの店は軒並み閉店していた。
「店閉まるの早いなぁ……。これじゃあ夜にフィーバーできないじゃん」
「この町、あんたみたいな奴は少ないようね。安心したわ」
いちいち棘のある言い方だなぁ。
「お、あそこじゃね?」
宿と書かれた看板を見つける。
そういえば、どうして「あれ」を読めるんだ?
あれはそもそも、文字なのか?
不思議な感覚だった。見たことのない模様を文字として読んでいる。
考えてみれば、この世界に来てから異世界文字みたいなやつを普通に読んできた。
覚えた記憶ないんだけどなぁ。僕、勉強嫌いだし。
「なにしてんのよ。行くわよ」
「あ、うん」
けどまぁ、勇者だからかもなぁ。勇者って結局のところ無敵だし? 天才的なやつっしょ。五輪狙える的な?
うん。そういうことにしとくか。
僕は気にせずエリカちゃんの後を追った。
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「おお、旅の方とは珍しいな」
宿は二階建ての小さな建物だった。ここも石造りだ。
「一人部屋、二つあるかしら?」
「もちろん。がら空きですから、部屋は余ってますぜ」
ちっ。
僕は心の中で舌打ちした。一つしか部屋がなくてやむなく二人で使用し、あわよくばチョメチョメ展開を期待するのは男のサガ!
「……もしもーし」
「――! な、なに?」
チャリン。
「鍵。あんたの部屋よ」
まるで施しのように、僕はそれを見つめた。
こうして借金が増えていくのだろうと、鍵を見つめながら悟った。実際こうなるとマジで情けないんですけど。
そして、部屋を確保しても「まだ休まない」とエリカちゃんが言い出す。
「エリカちゃん、人間は休み休み行動してこそ、真の力を――」
「あんた勇者でしょ? さ、聞き込みするわよ」
過酷だ。
もしや、これからずっとこれか?
ご冗談を。ブラック企業も真っ青じゃね? よく知らんけど。
エリカちゃんに連れられ、僕は町の広場へと向かうこととなった。
自由がない。そう考え、一つの案が浮かぶ。
「ふ、二人で一緒に聞き込みしても、効率悪いしさ、ここは手分けしよう! そうしよう! 名案! そいじゃ!」
「は? ちょっ――!?」
返答も聞かず、僕はダッシュした。
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テスタラ、どうやらここは石工が盛んな町のようだった。
あちらこちらで石造りの建造物を見かける。
そしてなにより、なにより……。
「どうしてっ、女の子がいないんだあああ!」
いや、いることはいるよ?
でも高齢化進みすぎなんだよ!
スタイル抜群のグラマラスなワガママガールとか、知的でクールな美人とか、頭のネジがとんだちょっぴりバカな女の子がいないんだよ!
いるのは猫背で杖をついた女性なんだよ!
さすがに遠慮するよ!
僕はまだ二十代だし、孫だよ! 孫の年齢だよ!
そんでもって、男も女も高齢化進みすぎだよ!
みんな老いてるよ?! どうなってるんだよテスタラ!
「そいでね? じいさんの代から続く石工の文化なんだけども、継承者がおらんでね、王国に取り合っても、話をきいてくれないんです」
「あ、あはは。そうですか」
駄目だ。
道行くオールドレディに話しかけたが、話が進まない上に、魔法使いのことなんて聞けたもんじゃない。
それに、もう夜だった。宿に帰りてぇ。
「あ、あの、そろそろ……」
「あぁ、すまないねぇ。旅人さんなんて、久しぶりでねぇ」
……?
そういや、宿屋のマッチョもそんなこと言ってたな。
「久しぶりって、一ヶ月とか?」
「いんや。ここ数年、ラスベスが出来てからは人も来なくなってねぇ」
そりゃあ、石工よりは娯楽だよな~~。わかるわぁ。
石を見てもスピリットとか感じないし。あ、僕そういうの信じてないので。
ここが高齢化したのも、そのせいってことか。
魔法使いなんてのも、しょせん噂っしょ?
明日からでもラスベスに行けるし……ここはエリカちゃんを説得するためにも、確かな情報をいただいておこう。
「おばあちゃん、最後にいいかな?」
「なんだい?」
「僕達、魔法使いを探しに来たんですけど――」
――カッ!
「ひっ?!」
魔法使いと言ったとたん、おばあちゃんの優しげな糸目が見開かれ、眼光鋭く睨まれる。
「知らないね。出ていきな」
あれぇぇぇぇ?!
「ふんっ。ペッ」
おばあちゃんは杖をつくことなく、背筋を伸ばし、唾を吐き捨ててからスタスタと歩いていった。
「……」
なんなの、この町。




